第四話 討伐と焼肉
「そこの猿!止まれ!俺達兄弟のパーティーに手を出してタダで済むと思うなよ!」
「弟よ、あの猿は何故通り過ぎようとしてる?」
「さっきはやってくれたなぁチビスケ!超スピードで切り刻んでやるから覚悟しろ!っておいっ!聞けよ!」
「んっしゃいわねー!(うっさいわねー!)」
コタゴリラの街を出てしばらく進んだ所で、待ち構えていたのがワンコとニャンコだったらしい。だったらしいってのは、俺が全く気にしてなかったというか考え事してたからな。ミキ、帰りにまだワンニャンコが転がってたら、俺の作った水薬《赤チン》か《ヨウチン》ぶっかけておけよ?
それよりもだ、アテにしてた冒険者組合に情報提供を求めた結果が断られた。が、唯一【家紋】の情報提供はして貰えるようにはなったけど、出て来ないだろうな・・・。
「ミキちゃんカッター!(連射)」
俺達兄妹の背中には【家紋】が彫ってある。俺と二つ下の長女は、父方【マキバ】と母方【ソウマ】の【家紋】があり、俺の十下の次女は【ソウマ】が彫ってある。
「【マキバ】流初伝、カマイタチ!」
が、これは前世での事だし、この世界でも継承されているかってのは分からない。だが・・・俺の背中には前世と同じく両肩甲骨に大きく彫ってある。
「エアーシールド!エアーアロー!エアースピア!」
こっちの世界でも【家紋】を背負うとは思わなかったし、妹を探す手がかりが名前と【家紋】だけだからな。あとは情報を何処でどう得るかを考えないといけないが・・・。
「すーぱーでんじスピーッン!」
こっちの世界では塩や調味料が極端に少ないし、料理は薄味なのは分かるけど、あれだと食べる楽しみがないよな。お店によっては凄く不味いし値段が高かったりだから、俺が作った方が美味しいし栄養満点・・・お店出すか?
「魔石回収しなきゃ!」
お店出すって事は冒険者が出来ないだろうし、任せられる人材を探そうにも簡単に見つけられる訳でもない・・・。それに食材の確保がな。組合から卸される食材は当然ピンハネされて高くなるし、使いたい調味料は今現在俺かミキが採取若しくは討伐しなきゃいけない。
「お宝げっちゅー!」
そうなると原価が高くなって利益が出ない。お食事処の出店は出来ないな。鍛冶屋も同じか・・・。材料の入手が一番問題だし、水薬売るのも同じ・・・。
「高級ポーションがあるから大丈夫よ。他に怪我や病気の人居る?」
そうだった!お金があるんだった。例えばこっちの世界には無い銀行を作るとかは?いやいや、貸し倒れが多いだろうし強盗や窃盗が出るだろうし却下だな。
「みんな、ここで休憩するよ。出入口から一番遠い場所で休んでね。今食事出すからね!」
「おに・・ユイちゃん・・・お腹空いた!」
ん?もうそんな時間か?コタゴリラの街を出てまだ四半刻(三十分)くらいじゃないのか?最近お腹減るの早くないか?まだまだ食材と調味料はあるから余裕だけど、何処かで狩りしないとな。
俺とミキの分だから、牛の名前なんだっけ?まぁ良いや牛ぽい香草丸焼きと、各野菜を細切りにした盛合せに胡麻と醤油のタレで味付け・・・最後にマヨネーズ。更に根野菜と豚?のバラ肉の豚汁ぽいのと・・・鶏肉?腿をカリカリに焼いて、辛いトマトっぽいのを主にしたタレを最後に掛けて完成かな?あー全ての料理に臭くないニンニクぽいのを入れちゃったな!まぁ良いやニンニク好きだし。あとは飲み物・・・ほうじ茶っぽいので良いか!
いつの間にか人が沢山いるけど?ってかここ何処?
「考え事しながらは駄目!ってもうお料理作ったの?とりあえず私めっちゃ頑張ったんだからね!ここは東南二十キロにあるゴブリンの巣の中で、討伐しつつ捕まってた冒険者を救出しつつお宝げっちゅーして東南東に穴が続いてるけど、お腹空いたので休憩。いつもよりお料理作るの早くない?刹那の時間だわ」
状況としては、俺が考え事してる間にコタゴリラの街から巣周辺のゴブリンを討伐して、近くに居た猪っぽいのを群れで狩ってゴブリンの巣へ突入し討伐しまくって今に至るらしい。
「おかわりー!グレートホーンボア・・・猪っぽいやつってそれそれ!皆焼肉で良いかな?分かったーんじゃ焼肉(ドンッ!)でー!いただきまーす」
明けましておめでとうございます。本年から宜しくお願い致します。