閑話︰とある冒険者の幸不幸
「は?おに・・ユイちゃんそれ魔消鉄鋼の檻だって!って腕力でどうにもならな・・・壊したのね・・・」
クルディオ《小人族》の女の子とモニエ《猿人族》の男性が捕まってた私達を助けてくれた。
私は王都プティ・クリンチのFランク(六級)魔法使い(メイジ)。
他三人と共に王都南のゴブリン狩りに出掛けたんですが、ゴブリンの巣周辺に居るはずもないゴブリンソルジャーとゴブリンメイジが群れの中に居て囲まれました。このままだと殺られると思い、一点突破を試みて守護戦士が特攻し戦士がゴブリンの排除、私と魔剣士がその後を追いもう少しで包囲網を突破出来ると思ったのが甘かった・・・。そう!ゴブリンメイジが闇魔法で私達を眠らされたのです。今思うとゴブリン達は私達を包囲する必要なんてないんですよね。私達を殺してから武器と装備を剥ぎ取れば良いのにそれをしなかった。何らかの利用価値があると判断されたのでしょうか。しかし・・・ゴブリンの上位種でも頭が切れる種族ではないはず。よく分からない。
続々と冒険者が牢屋へ入って来る中、一人の《アンジン》犬人族の男性が牢屋へ入る前に意識が戻り暴れだしました。
「俺達をどうする気だ!」
数匹は拳闘士である彼が素手でゴブリンを倒したのですが、多勢に無勢・・為す術なく殺されました。
あれから十数日、少しの食料でなんとか死なずに生き残れましたが、捕まった全員二十三名の食料は既に三日前から無くなり、このまま餓死するのかと思いました。
当然檻を壊して逃げる手段も考え行動しましたが、魔消鉄鋼の檻・・・魔法は消され腕力でも無理。
「ギョウェー!ウギャー!」
檻の外ではゴブリン達が次々と殺され、私達が苦戦してたホブゴブリンやゴブリンメイジを瞬殺し、檻の目の前まで来た二人組のパーティー。クルディオ《小人族》の女の子がゴブリン達を一掃する中、モニエ《猿人族》の男性・・・上から下までグレー一色、髪までグレーで目を負傷してるのか分からないけど目隠しをして、背中には大きい金庫?を背負ってる。クルディオ《小人族》の女の子の戦闘を見ることもなく、ただ考え事してるのかボーッとしてるのか指示待ちなのか分からない。こちらに話しかける事もなく・・・。私はモニエ《猿人族》に忌諱する事はありませんが初めて見ました。本当に左手の甲に《猿》と書いてあるんですね・・・私達は右手の甲なのに。
周辺のゴブリンを一掃したクルディオ《小人族》の女の子が私達を助けてくれようとしたんですが、魔消鉄鋼の檻は開けられず。
「おに・・ユイちゃん!ユイちゃん聞いてる?この檻開けて!」
確かモニエ《猿人族》は手先が器用だと聞いた事がありましたが、まさか親指と人差し指だけで檻の扉を破壊・・・。信じられない出来事を見てしまうと、驚きを通り越して素になるものなのですね・・・。だからクルディオ《小人族》の女の子はモニエ《猿人族》の男性の名前の前に『鬼』と言ってしまうのが良く理解出来ました。《猿人族》だけど《猿(鬼)人族》だと考えました。
その後はもう私の頭が理解を超えて追いつきません。彼女が食事を要求したらテーブルに椅子、更に見たことがない料理が並んで、私達の目の前にまで見たことがない料理が皿に盛り付けされていました。当然目を開いて見てたから分かるはず、意識はしっかりしてるし眠気もない・・・いや、何かの魔法でしょうか?幻術か催眠か・・・全く分からない。
考えてもお腹は正直に目の前の料理を欲しているので頂きました。が、とんでもなく美味しかったです。転生しても前世でもこれ程の料理は初めて食べた気がします。今私が分かるのは、食べると体力と魔力が即補給されてる事と、通常の料理より材料の魔力値が高く良質である事、味付け最高〜!
冒険者の中には食べ足りない子が「おかわり!」と言った瞬間に同じ料理が盛り付けされて、お皿を落としそうになったり、私ももう少し食べたいなと思ってたら調度良い量がお皿に盛り付けされてました。
「おかわりー!グレートホーンボア・・・猪っぽいやつってそれそれ!皆焼肉で良いかな?分かったーんじゃ焼肉(ドンッ!)でー!いただきまーす」
クルディオ《小人族》の女の子は更に食べ物を要求・・・って食べ過ぎじゃないの?私達全員が食べた量より多くない?それよりもグレートホーンボアですって?あの魔獣はEランクだったかしら、群れだとDランクだったはず!それは良いのですが・・いや良くはないんですけど、モニエ《猿人族》の男性が背負ってた金庫からグレートホーンボアの解体前が出され・・・気が付けば焼肉用にカットされ味付けされ盛り付けされてるし、前世でいうバーベキューコンロが七つほどが目の前で炭に火が入ってる状態・・・。ありえない・・・でもお肉は美味しく頂きました。
もうお腹いっぱいで考えたくないのですが、バーベキューコンロやお皿等が一瞬で消え、私達全員の服・下着・防具・靴やリュックが支給されたというか・・・着せられたんです。ってかいつの間に採寸されたの?下着から防具まで、着心地良く違和感がないし、今まで着ていたのよりも凄く良い。しかも職業毎に防具が違うのです。私の場合、魔法使い(メイジ)なので魔女が着てる様な服と言った方が分かるかしら。しかし着せられたのは蒼地のワンピースで裾には可愛いフリルが付けられて可愛く、胸元には直径五cm位の大きな魔石が縫ってあり、風属性である緑色・・・私の属性と同じ。下はストッキングが主流ですがワイドパンツを履かされています。同じ魔法使いでもワンピースのカラーが違い、その人の主属性である魔石が縫われてるみたいです。また、ガーディアンだと軽くて丈夫な鎧と兜なのです。
も・・もう驚きません・・・驚き疲れました。
その後コタゴリラの街までアスカ親衛隊が護衛してくれて無事帰還出来たんです。とりあえず宿屋でパーティーメンバー三人と合流して話をする事にしました。
「もう助からないって思ってたからさ〜無事帰って来れたんだからなんとかなるだろ?防具はあるんだし剣と盾を買えば一緒に冒険出来るぜ!」
「私も戦士として剣を買って、このメンバーで冒険したいです」
「俺はパーティーを抜ける・・・あんなチビと猿ごときに助けられたと知られたら恥だからな。こんな安物防具とか売って、新しい防具と魔法剣を買ってメンバーを探す。じゃーな!」
三人になってしまいました。が、私は残った二人にある提案をしました。
「先ずこの服と防具ですが、信用出来る鑑定士に鑑定をお願いしましょう。その後同じ救出された子で、この防具を身に付けてる人をメンバーに加えるというのはどうでしょう」
何故鑑定をしてもらおうと考えたのは、一見安物風に見えるけど何の素材かが分からないのです。この素材自体見たことがないので、本当に防具として耐えられるのかの確認をしたい事と、同じく救出されて貰った防具を着てる人であれば一緒に冒険が出来るんじゃないかなと思ったのです。他の二人も納得してくれました。
数日後、新たに三人の仲間が加わり冒険者として頑張ってます。当然彼彼女らは着せられた防具を纏ってます。結局鑑定の結果、AやSランクで着るような高級防具だったのです。その防具は軽くて耐物理ダメージ・耐魔法ダメージが軽減し破れず丈夫で、洗っても縮まないしシワも付かない。寒暖差も自動調節出来て体力と魔力の回復が早い代物だった事と、売れば贅沢さえしなければですが一生働かないで暮らせる位のお金が手に入ったのです。でも私達は売らずに冒険者を続ける事にしました。こんな優れた防具を売ったら魔獣魔物に殺されるのが目に見えるからです。
あのクルディオ《小人族》の女の子とモニエ《猿人族》の男性・・ユイさんは、私達を救ってくれた天使様かな。次に会った時はお礼を言おうと全員が思ってます。
ちなみに、救出された他のメンバーは・・・。
防具を信用ない所で売って、少ないお金を手しにたのが十一人。私達と同じく防具を売らずに冒険者をしてるのが六人。この六人が同じパーティーを結成した私達のライバル。
風の噂で聞いたんですが、私達のメンバーだった魔剣士の子は王都プティ・クリンチまで行く途中で魔獣に襲われ帰らぬ人になったらしいです。
更にちなみにですが、救出された他の冒険者が売った防具を全て買い戻して、ライバルパーティーとで折半しました。




