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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

えがお

作者: 猫田五郎丸

 あるところにすごく元気な少年がいました。その子は何があっても負けません。たとえ大怪我をしても「死ななかったから大丈夫」と笑うような子でした。

 そんなある日、お母さんの代わりに掃除機をかけているといきなり掃除機から変な音がなりました。なにか詰まったのかな、と覗くとなんと少年は掃除機に吸われてしまったのです。

 気がつくとそこは見たことのないところでした。街ゆく人は角が着いていたり、耳が尖っていました。

 異世界転移とかってやつか、と瞬時に理解した少年は満面の笑みで街ゆく人々に話しかけます。しかし人々は目を合わさずに去っていきます。

 しかし少年はめげずに話しかけます。

「あのー、お話いいですか?」

「……さっきからさ、アンタなに? ナンパなら平和な時にやりな!」

 女性は怒っていました。ですが少年は笑顔で答えます。

「はじめまして。やっと話をしてくれる人が出来て嬉しいです! ちなみにここ、治安悪いんですか?」

「素っ頓狂なことを言う子だね、当たり前じゃないか。魔王が放った魔物が街の外で蔓延ってるんだからね」

「詳しくいいですか?」

 その後、主人公はこの世界の事を知りました。突然あらわれた魔王が魔物を引連れて侵略して来た事、太刀打ち出来ず砦でどうにか生き長らえていること、そして最近になって魔物の活動が活発になっていること。

 それを聞いた少年はこう言いました。

「逃げる逃げない、倒す倒さないじゃなくて今を生きてたら笑って生きれるよ! みんな、さあ笑って!」

 しかし街の人たちは笑いません。

「ボクはね、お父さんが目の前で食べられたんだよ。君にわかる? バキバキと音を立ててお父さんが肉になることの辛さが」

 泣きそうな子供が言い放ちました。しかし少年の笑顔は絶えません。

「大丈夫だよ、お父さんの分もお母さんを幸せにしてあげることが出来るよ?」

 その言葉を受けて少年は少し考えて去っていきました。

 しかし次々と辛い事を言い放ちます。

恋人が帰ってこないまま3年が経った人、お嫁さんが自分の好きな料理の買い出しに行って亡くした人、襲われて下半身不随になった人。

 しかし少年はいつも通り笑顔でいいます。

「みんな大丈夫だよ、絶対いい事なんだから!」

 その後、少年はみんなの不安や悩みを聞いて生活をするようになりました。

 明るい少年に人々は救われ街全体が明るい雰囲気になって行きました。

 田畑を熱心に耕し作物を育て、行き渡っていなかった子供たちの教育を充実させ、建物を立てて路上暮らしの人々を救いました。人々は少年のこと

をこう呼びます。笑顔の神様だ、と。


 そんな充実した日々が長く続き皆が前向きになりつつあったある日、それは起こりました。魔物が大群で攻めてきたのです。

「迎え撃てー!」

「何としても守れー!」

 皆が砦の上から矢を放ちます。しかしすぐ弓が壊れました。田畑の管理をしていた為に、弓のメンテナンスが出来ていなかったのです。

「負傷者をこちらへ!」

 臨時の救護室として学校に運びます。しかし薬があっても使い方が分かりません。そうです、学校には簡単な怪我を治す先生しか居なかったのです。

 しばらくして地響きがしました。皆がその方向を見ると砦の壁が崩れ落ちています。そうです、建物を建てるために材料を回していたせいで砦が脆くなっていたのです。

 そんな大混乱な中一人だけ笑顔の人間がいました。少年です。少年は笑顔のまま泣いている子供たちの頭を撫でます。そんな姿に皆が怒声を浴びせます。

「こんな時に何やってんだ! 手伝え!」

「戦って守ってよ!」

「壁が崩壊してるんだぞ! もうやられちまう!」

 それに対して満面の笑みでこう言いました。

「みんな聞いて、死ぬ事は悪い事でも怖い事でも無いんだよ。自然の摂理さ」


 その後、甚大な被害のなかどうにか生き長らえた人々の提案で少年は処刑される事になりました。

 大勢の中一歩一歩処刑台に登った少年に執行人が問います。

「言い残したことなどありますか?」

 それに笑顔で答えます。

「処刑台なんて初めてです。最期にいい経験が出来ます!」

 そうして少年の頭は地面に転がりました。

 湧き上がる歓声、拍手喝采。

 そして後に街の人達は少年をこう呼びました。笑顔の悪魔だ、と。

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