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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

一人

作者: 焼鮭

春。この言葉を聞いて、皆さんは何を思うだろうか。受験?仕事?それとも新しい学校生活?それもいいが、

私にとっての春は、希望だった。

高校の2年間、やりたいことも夢も何もなかった私は、突然受験というレースに参加させられた。私の高校はいわゆる"自称進学校"というやつで、自由な時間は無いに等しかった。休みは全て勉強に消え、放課後はやりたくもない部活。うんざりだった。そして、家に帰っても地獄が待っていた。母は過保護で、父は暴力を振るう。おまけに自分の部屋もない。私は、一人の時間がなかった。作りたくもない友人を作り、笑顔を作り、気を遣う。何が望みなんだよ。この地獄の果てに私が思ったことは、"一人暮らしをする行くのをこと"だった。この目標が、最初で最後の、一度もやめようとしたことのない目標だった。それに、この一人暮らしという目標には、もう一つの目標も含まれていた。片思いの同級生と会うことだ。この同級生(以降Aと呼ぶ)と、初めて会ったのは部活だった。話すうちに、共通点が見つかり、一方的に好きになっていった。Aは、自分の悪いところも悪いと言いながらも肯定してくれた。良くも悪くも生きる希望になっていった。そして、受験で県外の遠い高校へ行った。私の親は県外へ行くのを認めなかった。殺したくなった。こういうこともあり、一人暮らしへの欲求はさらに深まっていった。だが、7月、両親が事故で死んだ。実際、嬉しかった。やっとあの地獄から抜け出せたと思った。だがやはり現実はそうもいかないみたいだった。私は叔母に引き取られ、また一人の時間を取られた。この頃から、死にたいという思いが強まり、自傷行為へ走った。リスカ、爪噛み、首吊り未遂(見つかってはいない)、色々やった。だが皮肉にも、勉強は進んだ。そこに、私をさらにどん底へ落とすような報告があった。AとはLINEで繋がっているのだが、そのAから、彼氏が出来たと報告があった。泣いた。12時だったので、声を殺してだが。朝起き、小さい勉強スペースの壁を見る。「ただいま受験勉強中」の文字。あらかたの準備を済ませ、家を出る。そのときにはもう、学校へは行こうと思わなかった。仮病の電話を自分で入れ、電車で最寄りの海岸へ行く。海が自分を癒やしてくれるという保証もないのに。結局、海へ行ったのは無駄足だった。なにかすることもなく、ただ生ぬるい気持ちの悪い潮風が自分に吹き付けるだけだった。帰り際、もう受験する必要がなくなったと思い、また死にたくなった。そこからは、皆さんの思う通り、転落生活が始まった。部屋に響いていたシャーペンの音はコントローラーを操作する音に変わり、広げられたままの参考書には埃が被っていた。そして、冬。今頃、高校の同級生は勉強中だろう。そう思いながら人が蚊柱のようにごった返す神社の鳥居をくぐった。鐘のような鈴みたいなものを鳴らし、どうか死ねますように、と願う。もうここまで来ると流石に自分から見ても滑稽だった。腕にはリスカの跡、首には何度もした首絞めの跡がくっきりと残っている。最近、嬉しいことが一つだけあった。叔母は私に興味がないようだ。まぁ、今知っても何も利益が無いが。

…ここまで、私の遺書を見てくれてありがとう。今私は、学校をサボったときに行った海でこれを書いている。ここで、入水自殺をしようと思う。案外文を書いたり考えたりするのは楽しいな。多分文はめちゃくちゃだろうが。…夕日が見える。人間とは違って美しいな。地球のこんな風景だけは好きだ。

…なぜこんな人生になったんだろうな。熱中できる何かがあれば、クラスの皆が言う推しとやらがあれば、こんなにならなかったのだろうか…もう手遅れか(笑)ちなみに、自責の念はきちんとある。人並み以上に。というか、無ければこんなことはしていない。なにはともあれ、これから私はこのクソ溜まりのような美しい世界から消える。次の人生ではなるべく上手く振る舞うつもりだ。

自分をこんなにした人間に、不幸あれ!

地球の自然に栄光あれ!

自分に、一人の時間を!

さよなら!!!!

                  〇〇〇〇



「この気持ちは一人になれば収まるのかなぁ…」そんなことを思いながら、冬の海に足を入れる。流石に痛い。そして海が全身を包み、沈んでいく。眼の前には、何もない、暗闇だけ。寒さと酸素不足で薄れゆく意識の中で、思う。「救いはないのかよ」


海はそんなこともお構いなく、どんどん下の闇へ私を引き込んでいった。

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