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ネル 進み始めた僕の物語  作者: カップ
2/3

僕の天稟は②

1話お読みいただきありがとうございました。

2話目もよろしくお願いします。


 「ほんとっっっうにあなた何も覚えてないのね。分かった。あなたのこと教えてあげるわ。その前に私の名前からだけど。」


 女性は僕に色々質問した後そう言った。質問は多岐に渡り、二人の共通のことから、社会全体の一般常識まで幅広かったが、僕は本当に基本的な知識しか答えられなかった。それ以外は何もわからなかった。


 「私の名前は()()()()よ。フィエラってそのまま呼んでくれればいいわ。改めてよろしく!」


 「よろしくお願いします。」


 女性、改め、フィエラは明るめに少しだけ笑顔で自分の名前を言った。僕たちが進んでいる森は雨が降っていて、空が暗く雰囲気がどんやりしているけど、その中で明るく自己紹介をしてくれたフィエラの周りだけは少しだけ本当に明るくなった気がした。


 「で、あなたの名前は()()ね。あ、あと、()()()()()()()()()()()っていうのもあなたの名前。」

 「なんで名前が二つあるんですか??」

 「なんか後者の方は偽名として使ってたみたいね。私たちの学園に潜入してた時もその名前だったわ。」

「僕はスパイか何かだったんですか??」


 僕は自分に対して、疑問しか湧かなかった。もしかしたら自分は自分の想像以上に厄介なやつなのかもしれない。


 「スパイねぇ。確かにスパイとしての役割もあったかも。情報収集はしてたみたいだし。でも、それはあくまでおまけ。本当の目的は力を操ること何かもう一つあったみたい。」

 「力・・・」

 「そう、力。記憶のある時のネルって本当に強かったの。私も本気は見たことないけど、学園ではそれでもトップクラスだった。」


 僕は実感がわかなかった。今森の中を進んでいて、そんな特別な力を自分の中に感じないし、僕が感じようとして感じれるのは体の痛みと無力さだけだ。


 「その力が使えれば、今僕は、フィエラさんの力になれますか?」


 僕の中でフィエラの力になりたいという気持ちがある証拠であり、そこから出てきた言葉だった。フィエラは一瞬きょとんとすると、すぐにクスッと笑いながら答える

 

 「ええ、なれるわ。だけど、記憶の無いあなたに扱いきれるほど些末なものじゃない。それに心配しないで! 今は追手からも離れてるし、大丈夫よ!」


 フィエラにそう言われて、僕は少しだけ安心できた。最初のような爆撃音も聞こえないのも僕の心を落ち着かせた原因の一つだ。






 少しでも僕を支えてくれたフィエラの力になりたいという願いからの質問ははかなく散った。記憶の無い、僕を励まし、支えてくれたフィエラの力になることができなかったショックは顔色にあからさまに出ていたのだろう。フィエラは僕の落ち込んだ顔を見ると慌て始めた。


 「ネル、大丈夫だから、元気出して!! ええとね、ネルはね、あ、これは記憶を失う前のネルね! 強かったし、落ち着いていたけど、ものすごおぉぉぉくぶっきらぼうで誰にでもそうで、よく反感を買って喧嘩してたし、友達も少なかったの。だけど、今のネルは強くもないし、落ち着いてもないかもしれない・・・けれど、その時とは違って、態度も柔和(にゅうわ)だし、その、絶対モテるわ! だから、大丈夫!! 未来は照らされている!!」


 フィエラは最初から勢いよく話始め、最後には身振りまで加えながら、体全体を使ってなんとか僕を元気づけようとしてくれた。その気遣いに僕も思わず顔が緩み、表情が自然と明るくなった。記憶の無い中で一番最初に出会った人がフィエラで本当に良かった。心の底から改めてそう思った。彼女も僕の表情を見てか、安堵したような表情を浮かべるが、またすぐに切り替えた。


 「それで、話を戻すわ! 力の使い方を学んだあとは、何か儀式をするみたいだったの。その儀式が何なのかは本当に知らない。だけど、その最中に侵入してたのがバレて追放されたの。そして、今追手が差し迫ってきている。だから、今逃げてる感じよ! 理解できたかしら?」


 僕は先ほどのことが抜けきっておらず、表情も若干緩いが、追手が差し迫ってきているということを知り、無理やり切り替え、頭に話をぶち込み整理した。そして、いくつかの疑問をぶつけることにした。


 「いくつか質問いいですか?」

 「どぞ。」

 「ありがとうございます。まず、今追ってきている敵は、その学園の追手ってことですか?」


「今一番私たちに差し迫っている追手はそうね、元クラスメイト達よ。みんなの方が先に動き出したと思う。勿論、国の兵士も追いかけてきているけどね。あ、私も元クラスメイト! まぁ、私は君の味方で一緒に逃げてるんだけどね。」


 そういうフィエラはまたしても少しだけ笑っていた。それは愛想笑いで意味のない笑顔かもしれないけど、また少しだけ明るくなった気がした。そんなことはないのに。彼女の笑顔は僕に少しだけ今のこの状況を忘れさせてくれる。


 「わかりました。次に僕たちは今どこか目指して逃げてるんですか??」

 「ええ、()()()の元まで逃げてるわ。目的地がこの森のもう少し先なの。協力者と会うことができれば絶対にもう一安心よ。」


協力者、そして、明らかになったゴールに僕はまたもや安堵する。先ほどから、いいことしか起きていない。これは記憶を失った、僕を運命が、神様が、助けてくれているのかもしれない。すべてうまくいくかもしれない。そう思った。しかし、僕はこの時、こう思うべきだったのだ。神様や運命はみな平等であり、いいことが100あったら、辛いことも100あるのだと。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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