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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
死者の国《ヘルヘイム》編
99/126

#99〜イエリアの書〜

ヘラから聞いた話では母さんはヨトゥンヘイムの巫女。

つまりヨトゥンヘイムは母さんの故郷って事になるのか?それと気になる事がもう一つ、それは眠りに付く前の僕はヨトゥンヘイムの民と何かしらの交流や関係があったのかという事だ。



「ヨトゥンヘイムの民って…」


「勘の良いお兄様なら既に察していると思いますが、ヨトゥンヘイムは私達のお母様の故郷です。」



やはりヨトゥンヘイムは母さんの故郷だったようだ。



「じゃあヨトゥンヘイムは僕達の故郷でもあるって事か。でもどうして眠りに付く前の僕はヨトゥンヘイムの民から導きを?僕がオーディンの立場なら、父さんや母さんと関わりがある人物とは接点を持たせたくないと思うけど…。」


「私もオーディンの立場ならお兄様と同じ考えに至ると思います。ですが、オーディンとトールは違ったのです…。多次元大厄災マルチディメンショナル・ウォーが起きる以前から、ヨトゥンヘイムの民とオーディンが治めるアスガルドは対立的な関係にありました。しかし第二次多次元大厄災セカンド・マルチディメンショナル・ウォーが終局した後、この世界はヴァラマ帝国を中心に神、天使、そして数多の種族と人間ホムンクルスとの間で”ヴァラマ条約”が結ばれました。」


「ヴァラマ条約?」


「ヴァラマ条約とは、この条約に承諾した国や種族はその条約の規定に従いいかなる理由があろうとも互いに争う事を禁止するというものです。更にこの条約を承諾すればヴァラマ帝国と友好関係を結んだ事となり、物資や食料、その他の支援を受ける事ができるだけでなく、更に条約を結んだ国や種族に何らかの危機が迫った場合、ヴァラマ帝国からの軍事支援を受ける事ができるというものでした。」


「ただでさえヴァラマ帝国は神柱最高神のオーディンが建国し、その帝国には神、天使、そして英雄王がいる上に受けれる恩恵も大きい…。何か問題が起きればヴァラマ帝国の後ろ盾もあるとなれば、その条約を受け入れないという選択肢は考えられない。むしろ条約を承諾しない事の方がデメリットが大きい…。」


「お兄様の仰る通りです。そしてヴァラマ帝国はその条約を武器に勢力を拡大していき、今やこの世界を動かせる程の大帝国になった…というわけです。」



なるほど…。

これまでヘラが僕に説明した事を踏まえると、この先ヘラが僕に何を言おうとしているのか大体の予想が付いた。それは多分、ヨトゥンヘイムの民達がヴァラマ条約を拒んだという事だろう。


そしてヨトゥンヘイムの民がその条約を拒んだ事によって、ヴァラマ帝国と条約を結んだ国や種族から目を付けられた上に敵視され何かしらの制裁が行われた…。といった流れだろうか?

もしその予想が当たっているとすれば、ヴァラマ帝国は平和の象徴というよりも力を行使する独裁国家だ…。



「でもその条約に元々敵対関係にあったヨトゥンヘイムの民は承諾しなかった…。」


「その通りです。ヨトゥンヘイムの民はヴァラマ帝国からその条約を持ちかけられた時、こう言ったそうです。『これは神と天使、そして英雄の力を行使した独裁政権だ』と…。そしてその事がオーディンの耳に入り怒りを買ってしまったのです。」



やはり僕の予想は当たっていたようだ。



「そしてオーディンは、ヨトゥンヘイムの民達に条約を結ぶ最終勧告通達者にお兄様を任命しました。」


「オーディンが僕を!?」


「はい。これはあくまでお兄様からその時の話を聞いた上での私の予想ですが、オーディンはおそらく、自分の里の巫女であるお母様が産んだ息子であるお兄様を差し向けば、心が揺らぎ条約を承諾すると思ったのでしょう…。」



何て卑怯な事を…これが神柱最高神がする事なのか?

僕は心の底からオーディンに対して怒りが込み上げ、気付くと拳を強く握りしめていた。



「ですがオーディンには大きな誤算がありました。」


「大きな誤算?」


「それは、私達のお母様がヨトゥンヘイムの巫女であり孤高の魔女であると同時に、”ギヌンガの巨人の血を受け継ぐ末裔”だったという事です。」



ヘラの話では母さんはヨトゥンヘイム巫女で孤高の魔女であり、”ギヌンガの巨人の血を受け継ぐ末裔”。

そして巨人という意味はその昔、”巨大な力を持つ者”という意味があったらしい。オーディンの誤算というのはそこに何か関係があるのだろうか?



「ギヌンガの巨人はヨトゥンヘイムの民の始祖にあたる存在になります。そしてギヌンガの巨人の血を引くヨトゥンヘイムの巫女には幾つか特別な力を有しており、その特別な力は末裔であるヨトゥンヘイムの民の中でも限られたごく一部の者しか知りません。」


「特別な力?」


「その特別な力の一つが、巫女の力を受け継ぐ儀式の際に記される”イエリアの書”です。ヨトゥンヘイムには古来より存在する聖域”ヨトゥンハイメン”という聖域があり、その聖域には始祖の巫女から歴代の巫女に関する書物が存在し、私たちはその書物を”イエリアの書”と呼んでいます。」


「イエリアの…書……。」


「イエリアの書には始祖の巫女から歴代の巫女に関する生涯が記されており、イエリアの書は巫女の力を継承し新たな巫女が誕生すると同時に、ヨトゥンハイメンの祭壇に突如現れると言われています。そして巫女の力を継承する際、巫女の生涯がイエリアの書に記されるとは別にある特別な力を書に秘める事ができます。」



その特別な力がオーディンの誤算という事か。



「じゃあヘラがさっき言ったオーディンの誤算っていうのが、そのイエリアの書に秘められた特別な力って事?」


「その通りですお兄様。そしてイエリアの書に秘められたもう一つ別の力…、それは巫女の力を継承する際に自身の生命力を糧にする事によって前継承者の望みを一つだけ叶える事ができるというものです。そしてヨトゥンヘイムの巫女が持つ能力の一つに、”ヴィジョン”という次の後継者の未来を視る事ができる力があります。」



継承する際に自身の生命力を糧に望みを一つ叶える事ができる上に”ヴィジョン”という能力を使って次の後継者の未来の姿を透視する事ができ、まだ巫女としての能力も他に持ち合わせてるときた。それがどんな能力かは気になるが、一つだけ言える事は僕の妹は最強だという事だ。



「お母様はお父様との儀式の最中、次のヨトゥンヘイムの巫女である私の未来を”ヴィジョン”の能力を使用して見た結果、そこで見たのはヨトゥンヘイムを訪れたお兄様が条約を承諾しなかったヨトゥンヘイムの民を滅ぼす姿。そして死者の国(ヘルヘイム)で生涯一人孤独に過ごす私の元へ訪れ、私は実の兄であるお兄様にその命を奪われるというものでした…。」


「そっ…そんな!!僕が母さんの故郷を!?それに…ヘラの命を奪うなんて……。」


「それがこの世界における私達兄妹の本来の道筋なのです。」



まさか本来の道筋通りに事が運んでいたとしたら僕は母さんの故郷を滅ぼし、実の妹のをこの手にかけてしまっていただなんて…。そう考えると僕の心はギュッと胸が締め付けられ苦しくなった。



「ですがその未来を見たお母様はその悲惨な未来を阻止すべく、巫女の力を継承する際に自身の生命力を糧に叶える事ができる願いを一つ決めました。それはお兄様がヨトゥンヘイムを訪れた際、お母様の生涯が記されたイエリアの書に触れる事により、お兄様にお母様がヴィジョンの能力で見た未来、そして自分が何者なのか、そして私という妹がオーディンによって死者の国(ヘルヘイム)に幽閉されている事を知らせるというものでした。」


「じゃあ僕は実際にヨトゥンヘイムを訪れて、母さんの生涯が記載されたイエリアの書に触れた事によって僕達の未来が変わった…?」


「はい。そして私たち兄妹は悲惨な未来を退け、可能性に満ちた新たな分岐点を歩む事になったのです。」

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