表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
死者の国《ヘルヘイム》編
88/126

#88〜女王の間〜

城の中に入ると門番のモーズグズ同様に腰まである白髪の長髪に白眼の瞳を有し、黒と赤を基調としたメイド服に身を包んだ美しい女性が複数のメイド達を従えながら白騎士達を出迎えた。



「お帰りなさいませ、白騎士様、コルア様、教団の皆様、お待ちしておりました。」


「出迎えご苦労”ガングレト”」


「久しぶりね”ガングレト”、見ない間にまた一段とその美貌に磨きが掛かったんじゃない?」


「お褒めの言葉ありがとうございますコルア様、そう言って頂けると、メイドとして日々精進したかいがございます。」



ガングレトはそう言うとコルアに深く礼をし感謝の気持ちを伝えた。



「出迎えて早々に頼み事をして申し訳ないのだが、一つ頼まれてくれないか?」


「もちろんでございます。」



そう言うとメイドのガングレトは両手を勢いよく叩くき、それと同時に従えていたメイド達が回収したエレナの元へ向かうと教団のメンバー達からエレナを受け取りそのまま別室へと連れて行った。



「白騎士様達が回収されたハイブリットエルフは、”あの計画”が実行されるまで私達が責任を持って管理させて頂きますのでご安心下さい。」


「頼んだぞ、ガングレトよ。」



それからガングレットは『彼の方”が”女王の間”にてお二人をお待ちです』と二人に伝えると、白騎士とコルアを”彼の方”が待つ場所”女王の間”へと案内した。


白く輝く巨大な城”エリューズニル”の館内はとても広い作り神秘的な装飾が施されており、まるで別の世界に迷い込んでしまったのかと錯覚する程の作りになっていた。

そんな神秘的な館内を白騎士とコルアはメイドのガンドレトの後を着いて行き、気付けば”彼の方”が待つ”女王の間”へと続く巨大な扉の前へとたどり着いていた。


ガングレトは女王の間へと続く巨大な扉に数回ノックをし、商業都市イスタリアムから帰還した白騎士とコルアを連れて来た事を”彼の方”へ伝えると、目の前にあるその巨大な扉は静かに開き白騎士、コルア、ガングレトを”女王の間”へと招いた。


ガングレトを先頭に三人は女王の間へと入った。

女王の間はこの城の外観同様、白を基調とした作りになっており中の装飾品は館内と同じく神秘的な装飾品が施されており、女王の間の中にはこの城の主でもある”彼の方”を護衛すべく、白い鎧を身に纏った兵士数名が扉から玉座へと続く道中に配属されていた。


そして女王の間の奥には玉座が設けられていた。その玉座には黒いドレスに身を包み素顔を白の仮面で覆った一人の少女の姿があり、自分の元へ向かって歩いてくる三人の姿を玉座の間に深く腰を下ろして見ていた。



「主人様、商業都市から帰還されました白騎士様とコルア様をお連れしました。」



玉座の前へと着いた白騎士、コルア、ガングレトの三人は、ガングレトのその言葉と共に腰を下ろし地面へと膝をついた。



「二人の出迎えと案内、ご苦労だったガングレトよ。」


「いえ、これもメイドとして当然の務めを果たしたまででございます。」


「ガングレトはまさにメイドの鏡だな。そして、白騎士、コルアよ、今回の任務ご苦労だった。それにコルアに関しては、こうやって顔を見るのも随分と久しぶりだが…元気であったか?見た目は少し変わったように私の目には映るが…?」



コルアは”彼の方”に今の自分の見た目の事を聞かれ少し身体をビクッとさせるも、気持ちを落ち着かせて今の自分がなぜ触手を纏うようになってしまった経緯を”彼の方”へ簡単へ説明した。



「ーーーっという事があり、このような醜い姿になってしまいました…。それに正しい記憶を呼び起こし、力を覚醒しつつあったロロも邪魔が入り回収出来ず…申し訳ありません…。」



コルアは自分の失敗を偽る事なく、ロロを回収する事が出来なかった事を”彼の方”へ謝罪した。



「コルアが謝る事は無い。むしろ今回は、転生者ハルトの仲間の中に幻獣持ちが居たという情報を知り得なかった私の落ち度…。そのせいでコルアの美しい身体を傷付ける事となってしまった事をどうか許してほしい。」


「いっ!いえ!!そんな謝らないで下さいい!!!私が不甲斐ないばかりにこのような結果になってしまったのは事実です…。どんな罰も受ける覚悟でございます……。」



コルアの『罰を受ける』というその言葉に”彼の方”はしばらく考え込んだ。

そしてしばらく考えた後、コルアに与える罰を思い付いた”彼の方”はその罰の内容をコルアへと伝えた。



「ではコルアへの罰はその不自由になってしまった身体を癒し回復した後、”あの計画”を実現すべくもう一度その力を私に貸す…。というのでどうだ?」


「かっ…寛大な罰をありがとうございます!!この身体が回復しましたら、”あの計画の”実現の為にお力になれるよう誠心誠意努めて参ります!!!」


「期待しているよコルア。」


「はい!!」



コルアは”彼の方”の寛大な配慮、そして自身の身体を癒す時間を貰えた事に心を打たれたのか瞳が少し潤んでいた。そしてコルアは改めて寛、大な心を持ち自分の事を気にかけてくれた”彼の方”の為に誠心誠意力を尽くそうと心に決めたのだった。



「次に白騎士、私に何か報告する事はあるかい?」


「はい。まず初めに百年ぶりに弟に再会しました。」


「ほぅ…。それで弟に会った感想はどうだった?感動の再会…にはなったのか?」


「そうですね…。感動というよりは、弟に対する復讐心の方が強く百年分の復讐心を弟へとぶつけて参りました。」


「そうか、まぁ少しばかし大きな兄弟喧嘩と言ったところだな。」


「はい。それとこれを…。」



白騎士は下ろしていた腰を上げると、背中に背負っていた七色に輝く大剣”ミストルティン”を手に取ると”彼の方”へと差し出した。



「七色に輝く大剣…。神殺しの剣”ミストルティン”か?」


「はい、弟の黒騎士が所有していたのを奪って参りました。これで強大な力を有している神でさえも殺す事が可能でございます。」


「これは思わぬ収穫だな。だが白騎士よ、これはお前が持っておくといい。お前も自分で仇を打ちたいであろう?」


「それはそうですが…。よろしいのですか?」


「うむ。その代わり私の計画に力を貸してくれるな?」


「もちろんでございます!!白騎士の名に恥じぬよう誠心誠意、忠義を尽くします。」


「期待しているぞ、白騎士。」



”彼の方”はそう言うと、受け取った七色に輝く大剣”ミストルティン”を白騎士へと返しそれを託した。そして白騎士が元の場所へと戻るのを確認すると、”彼の方”は今後の事についてガングレト含む白騎士とコルアの三人に話した。



「さて、先に帰還したマインの報告では影乃魔刃が回収した転生者ハルトの仲間であるエルフとの戦闘の末に戦死したそうだ…。」


「影乃魔刃が…。」


「刃も転生者で強力な力を持っていたのは事実。幻獣持ちを含め転生者ハルトの仲間の中には、刃以上の実力の持ち主が多数存在している事になる。それに今頃は彼の仲間が必死になって転生者ハルトやハイブリットエルフの事を探しているはずだ。」


「確かに私の弟である黒騎士なら今頃救出に向けて探している事でしょう。それに弟にはかつての仲間もいます…。もし私が弟の立場なら二人の救出に向けて必ず協力を求めに行くかと。」


「あの魔術師の事か…。」


「はい。厄介な相手でございます。もし弟が二人の救出の為にこの場所を訪れた際には、この私が全力で阻止してみせます。」


「頼もしいな白騎士。その気持ちは非常に嬉しいが、もし黒騎士と対峙して最悪の結果になる事だけはどうしても避けねばならん…。白騎士の実力が黒騎士に劣っているという事では無く、私と”あの計画”を成功する為にはお前の力が必要なのだ。」


「ですが!!弟である黒騎士はーーーーー」



”彼の方”は片手を差し出し白騎士の言葉を遮ると、自身の考えとこれからの事について話し始めた。



「白騎士、お前が弟である黒騎士との決着をその手で決着を付けたいという事は重々承知している。私もできるだけその思いに応えてやりたいと思っている。だがそれは今では無い。先も言ったが、今回の計画には白騎士の力がどうしても必要だ。だから黒騎士が転生者ハルトとハイブリットエルフを救出しに来た際には、他の者を刺客として送り込む事にする。だが勘違いしてほしく無いのは、これはあくまで”あの計画”が遂行されるまでの間の時間稼ぎだ。刺客として送り込む者にも殺さぬよう伝えておく。そして”あの計画”が成し遂げられた際には、黒騎士との決着の場は必ず設けるとこの私が約束しよう。」



白騎士は”彼の方”の言葉を信じ深く頷きその事を了承すると、自分の感情に流され熱くなってしまった事を”彼の方”へと謝罪し、”彼の方”も白騎士の謝罪を受け入れ、自分の考えに賛同してくれた白騎士に『感謝』の気持ちを伝えた。



「そして次に、先に帰還したマインと他の者達には既に伝えているが、ついに”あの計画”を実行に移す時が来た。」


「”あの計画”をついに…。ですが、”あの計画”にはハイブリットホムンクルスのロロの力が必要なのでは?」



白騎士の疑問に”彼の方”が答える。



「確かに白騎士の言う通り、”あの計画”にはハイブリットエルフのエレナと、ハイブリットホムンクルスのロロの力が必要だ。だが、私達と協定を結んだ”あの連中”が協定を結ぶ際に手土産で持って来た交渉材料の一つ、”人形ドール”に思ってた以上の利用価値がある事が分かった。」


「あの”人形ドール”にですか?」


「あぁ。そして私の持っている力”死者蘇生アナスタシ・ネクロム”と、”人形ドール”を使用すればロロの代わりはいくらでも作れるというわけだ…。」



コルアは”彼の方”と協定を結んだ連中の事がどうしても気になり、無礼を承知で協定を結んだ連中が信用に値するのかを”彼の方”へと質問した。



「無礼を承知でお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「どうしたコルア?」


「協定を結んだ連中の事ですが…。信用に至る者達なのでしょうか?私はイスタリアムで数回しかお会いした事がありませんが…どうにも……。」



意を決して質問したコルアの予想とは裏腹に、”彼の方”はコルアの質問を聞いて少しだけ気が緩んだように笑い出すと、『申し訳ない』とコルアに笑ってしまった事を謝罪した。



「あの…えと……。私は何か変な質問をしたのでしょうか…?」


「いや、コルアは別に変な質問をしたわけではないよ。ただ、コルアを含め皆、私と同じ気持ちなのだと思ったら可笑しくてな、、、。」



”彼の方”の予想外の反応にコルアは戸惑った表情を浮かべ、その意味を理解出来ず、その反応を見た白騎士、ガングレトも”彼の方”と同じように笑い出し、コルアの顔は真っ赤に染まり恥ずかしそうに下を俯いた。



「コルア、私はあの連中と協定を結んだからといって必ずしも信用していると言う訳では無いぞ?ましてやあの連中とは長い付き合いでな…。どちらかと言うと私は信用していないし嫌いだ。今回はあくまで利害が一致したから協定を結んだまで、まぁ、協定と言っても形だけのもので、目的達成のために互いが互いを上手く利用するためのものさ。」


「なるほど……。それを聞いて安心しました。」


「いらぬ心配をさせてしまったな。ともあれ、向こうが私達教団を裏切るような事があれば、この私の名において”死”をくれてやるまでよ…。」


「その時は、我ら教団が一段となってお供させて頂きます。」


「うむ。さて、”あの計画”についての報告は以上だ。そしてマイン含めそれぞれの者に役目を与えている。それに着いては他の者達が帰還した後に伝えるとする。だからそれまでは疲れた身体をゆっくりと休ませてくれ。」


『はっ!!』



それから白騎士とコルアはガングレトと共に女王の間を後にし、各々の部屋へと戻って行った。

そして、玉座に深く腰を下ろしていた”彼の方”と呼ばれる女性は静かに腰を上げ、外に広がる緑豊かな景色を見て小さくこう呟いた。



「待ってて下さい…。お兄様……。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ