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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
死者の国《ヘルヘイム》編
87/126

#87〜彼の方の元へ〜

商業都市イスタリアムの冒険者協会エリアから空間魔法で転移した白騎士とコルアは、辺り一面が霧に覆われた深い谷の一角へと転移し、先にハイブリットエルフのエレナを回収した複数の教団のメンバー達が白騎士とコルアが来るのを待っていた。



「お待ちしておりました。白騎士様、コルア様」


「待たせてすまないな。それに無事にハイブリットエルフも回収出来たようで安心した」



白騎士はエレナを回収し待機していた教団のメンバー達にそう告げた。

そして白騎士達の居る深い谷には黄金に輝く橋が架かっており、その橋の先にはこの霧の中でも目視できる程の巨大な門が設けられていた。



「この場所に帰って来るのも久々ね…。まさかこんな形でこの場所に帰ってくるなんて思っていなかったけど…、それにこんな私の姿を彼の方に見せる事になるなんて最悪…。」



コルアは自身の身体を支えている触手を見て少し不満げな顔をしていた。



「俺は今の姿の方がお前らしいと思うがな、まさに”バーバヤーガ”という名に相応しい姿だと思うが?」


「その呼び方は止めてって言ったでしょ!!殺されたいの…?」



コルアは白騎士が言った”バーバヤーガ”という言葉に過剰に反応すると、白騎士の方を見て殺意をぶつけた。しかし白騎士はコルアから向けられた殺意に動じることも無く、少し小馬鹿にした態度でコルアを見ていた。



「クククッ…そう怒るなコルアよ。」


「次にその名で私を呼んだら死を覚悟しなさい…。」


「肝に銘じておくとしよう。さて…立ち話はこれくらいにして、彼の方の元へ向かうぞ。」


「そうね…。」



それから白騎士達は目の前に架かっている黄金の橋へと足を運び、その先にある巨大な門目掛けて歩き始める。二人が黄金の橋を歩き始めてしばらくすると、目の前を覆っていた霧が徐々に晴れていきその巨大な門の全貌が露わになった。そして黄金の橋を渡り終え巨大なその門の前には、白いローブに身を包み黄金に輝く槍を片手に持った一人の少女の姿があった。


白いローブを被り門の前で黄金の槍を片手に立っているその少女は、白騎士達の気配に気付くと俯いていた顔を表情一つ変えずにゆっくりと上げ、目の前に居る白騎士達の顔をじっくりと観察するかのように警戒しながら見た。

そしてしばらく白騎士達の顔を観察したその少女は、目の前に居る人物達が白騎士とコルア、そして神聖教団のメンバーだと認識すると被っていた白いローブを取り警戒を解いた。



「白騎士様、コルア様、そして教団の皆様、お久しぶりでございます。そしてお帰りなさいませ。」



白いローブを被ったその少女は白髪の髪をしており、その瞳は白髪の髪同様、白い瞳をしていた。



「久しぶりだな”モーズグズ”、変わりはないか?」


「お久しぶりでございます。私は特に変わりなく門番としての使命を全うしています。」



そう言うと、白髪白眼の少女”モーズグズ”は白騎士達に向けて深く頭を下げた。



「それでモーズちゃん、あの女はもう帰って来たのかしら?」


「あの女…というのはマイン様の事でしょうか?」


「そっ!名前を呼ぶのは癪だけど、マインの事よ。」


「マイン様でしたら他の教団の者と一緒に少し興奮されたご様子で先にお戻りになられました…。」



白騎士とコルアはモーズグズから聞いたマインの様子に呆れた様子で頭を抱えた。



「あの女…。」


「マイン…。」



呆れた様子を見せる二人に、モーズグズは頭上に『?』を浮かべたように首を傾げ白騎士とコルアを見ていた。



「白騎士様、コルア様、どうされたのでしょうか?私に問題がございましたでしょうか?」


「モーズちゃんは何も悪くないわ、問題があるのはあの女よ…。」


「コルアの言うとおり問題なのはコルアだ。彼の方が興味を示した転生者に何かあったらどうするんだ……。」


「何か…。白騎士様、コルア様、無知な私に教えて欲しいのですが、マイン様が興奮したご様子と彼の方が興味を示したという転生者と何か関係があるのでしょうか…?」



白騎士はモーズグズの抱いた疑問にどう返答したらいいのか困った様子で、そんな困った白騎士の様子を見てコルアは鼻を高くして笑っていた。



「どうされましたかコルア様?」


「あぁ〜いや、なんでもないわよ、、、。まぁモーズグズに少し早いかもしれないわね。」


「早い…ですか?」


「その内モーズちゃんにも分かるわよ。そ、の、う、ち、ね。」



コルアの言っている意味を理解しきれないモーズグズに白騎士は肩にそっと手を乗せ、『気にするな』と一言モーズグズに伝えた。

それからモーズグズは気を取り直すと、白騎士達を門の中へと通すべく手に持っていた黄金の槍を巨大な門へと翳した。するとモーズグズが翳した黄金の槍に巨大な門が反応し門の扉が輝き出すと、巨大な門は”ギギギッ”と地響きのような音を鳴らしながらゆっくりと開き始め、その巨大な門が開くまでの間、モーズグズは白騎士とコルアに”彼の方”から預かった伝言を二人に伝えた。



「そういえば、お二人に”彼の方”より伝語のを預かっております。」


「俺達に”彼の方”から?」


「はい。伝言は、『時は満ちた…計画を実行に移す』との事です。」


「そうか…。ついに計画を実行に移す時が…。」


「でも計画を実行に移すにはロロの力も必要なはずじゃないのかしら?」


「確かに”彼の方”の計画を実行するのには、ロロの持っている力も必要不可欠なはず…。だがもし、”彼の方”が興味を示した転生者がロロの代わりになる…、あるいは少し気に食わないが俺達教団に”奴ら”が提供した”物”がそれなりの利用価値があるとなれば、ロロの力が無くとも計画を実行するのに支障は無い…。という事なのだろう。」


「それはそうだけど…。あの連中の事をそう簡単に信用してもいいの?」


「俺は”彼の方”の事を信じる。それにもしあの連中が裏切るような事があれば、その時は”彼の方”の名において俺が制裁を与えるまでだ。」



どこか決意に満ちた白騎士の言葉にコルアはそれ以上何も言わず、視線を巨大な門へと戻した。

そして二人の会話が終わると同時に、まるでタイミングを見計らったかのように巨大な門が完全に開くと、その先には緑豊かな自然の風景が広がっていた。


モーズグズは巨大な門が完全に開いたのを確認すると、白騎士達の邪魔にならないよう扉の中央から外側の方へと移動し二人にその事を伝えた。



「白騎士様、コルア様、お待たせしました。」


「ありがとう、モーズグス。」


「いえ、これが門番としての使命を任された私の仕事でございますから。」



モーズグズに感謝の気持ちを伝える白騎士にたいして、コルアは門の先に広がる緑豊かな自然の景色に目を奪われ見入っていた。



「お前がいない間に随分と変わっただろう?」


「えぇ…あの任務依頼ずっとイスタリアムに入り浸っていたから…。思ってた以上に変わったわね。」


「これが”彼の方”の望む世界なのだろうな。」



二人は門の先に広がる景色をしばらく眺めた後、門番であるモーズグズに見送られながら門の中へと入って行った。モーズグズは白騎士達が門の中へ入ったのを確認すると、黄金に輝く槍を再び開いた門へと翳し、その巨大な門は”ギギギッ”と地響きのような音を鳴らしながらゆっくりと閉じて行った。

そして完全に門が閉じると、その巨大な門の周辺から門を覆い隠すように巨大な樹木が次々と地面から生え出し、周囲に広がる自然の風景と同化した。



「”彼の方”の事を裏切る者などいるはずもないが念の為のカモフラージュだろう。それに万が一、侵入者が来た場合や何か問題が発生した際に、地上界と繋がる唯一の出入り口を見つけられなければ、今居るこの場所から出られる事は無い。」


「その前に”彼の方”の事を裏切ろうと考える時点で、私からしてみれば”死”に値するようなものだけれど」


「同感だ。」



そして白騎士達はその場を後にし、”彼の方”が待つ場所に向けてしばらく道なりに進んで行くと白騎士達の目の前に巨大な城壁に囲まれ白く輝く巨大な城が現れた。その白く輝く巨大な城の出入り口には門番の兵士数名と、門番の兵士と同じくらいの背丈のある白い毛並みを有した番犬の姿があった。



「”彼の方”の待つ場所、”エリューズニル”に帰って来たな。」


「しばらく帰らない間に随分と雰囲気も変わってしまったみたいだけれど…やっと帰って来れたわ。計画を実行に移すみたいだけれど、この身体の事もあるし少しの間身体を治療する時間を貰えたらいいんだけど…。」


「それならは”彼の方”にお願いしてみるといい。寛大なお方だ、お前のその願いを聞き入れてくれるかもしれんぞ?」


「そうね、”彼の方”に会ったらお願いしてみるわ。」



それから白騎士達は”彼の方”が待つ場所”エリューズニル”に向かって歩き始めると、城の門番をしている白い毛並みを有した番犬が白騎士達の気配を察知すると勢いよく走り出した。

その白い番犬は走るないなや終始興奮した様子で、白騎士達の元へ勢いよく駆け寄ると白騎士目掛けて勢いよく飛び付いた。



「おぉ!元気そうで何よりだ”ガルム”。元気にしていたか?」


「クゥウゥゥ〜ン」



その白い毛並みを有した番犬”ガルム”は興奮した様子で白騎士に飛びかかると、尻尾を左右に振りながら白騎士に甘えた様子を見せていた。



「まさかこれがあの”ガルム”なの?」


「あぁ、随分と大きくなっただろう?今ではこんな立派に成長して、この城の番犬を務めている。」


「時って早いのね…。私がここに居た頃はまだ子犬だったのに。」



コルアはそう言うと、自身に纏わせていた人の背骨のような触手を一体もぎ取り番犬のガルムへと投げた。

するとガルムは、投げられたその触手に勢いよく飛び付きその巨大な牙で背骨の触手を噛みながらご機嫌な様子を二人へと見せた。

白騎士とコルアは、尻尾を左右に振るわせご機嫌な様子のガルムの背中を優しく撫でると、門番の兵士に自分達が帰還した事を伝え、門を開閉させると城の中へと入って行ったのだった。

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