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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
86/126

#86 番外編 〜聖なる夜に 後編〜

中央広場にあるツリーの飾り付が終わると、今回のクリスマスパーティーを主催したルミナさんが集まった人達に向けてこの日を迎えるにあたっての感謝の気持ちと、クリスマスパーティーを開催を宣言する為の挨拶をし始めた。



「皆んなの協力のおかげで今日こうやってクリスマスパーティーを開く事が出来ました!!本当にありがとう!!今日は大切な家族や友人、恋人や大事な人と特別な日を過ごして欲しいと私は思います…。」


「!?」



気のせいだろうか?

最後の『恋人や大事な人と特別な日を過ごして欲しいーーー』っと言っている時にルミナさんがニヤリと笑みを浮かべてこっちを見たような…。



「では!皆の衆!!準備は出来てるか〜い???」


『おぉ〜!!!』



ルミナさんのその一言に集まった人達は、各々グラスを持ち開催の宣言を待ち焦がれていた。



「みんなで一緒に〜!せぇ〜のぉ〜!!!」


『メリ〜クリスマァ〜ス!!!!!!』



開催の宣言と共に中央広場で飾り付けをしたツリーがライトアップされると、集まった人達はグラスを中に掲げ歓声を上げると同時に、ライトアップされたツリーや街並みの光が空から降り注ぐ雪に照らされ幻想的な空間へと姿を変えたノルズの街並みに心を奪われていた。



「綺麗…。」



この幻想的な空間のせいもあってか、僕の隣で幻想的なこの景色に見惚れているマーガレットの姿は僕の瞳にはいつも以上に綺麗に映っていた。



「本当に綺麗だね…。」


「はい…。」



それからはルミナさんやマーガレット達が作ったクリスマス料理…。ルミナさん風に言えば、”ノルズの聖夜に舞い降りた天使が届けるスペシャルディナー”を皆んなで美味しく食べたり、子供達がツリーの前で歌ったりと、それぞれ楽しい時間を過ごしていた。


ルミナさんは他の準備があるとか何とかで料理を少し食べた後に、マーガレットと他数名の女性を連れて少しバタバタしながらヴィヴィアンへと一旦帰っていった。



「女性は色々と忙しいようですな。」


「そうみたいですね。」



ジャバルさんはホット甘味水を飲み冷えた身体を温めると、クリスマスパーティーを楽しんでいる人達を眺めながら静かに口を開いた。



「ハルト様、今回のクリスマスパーティーにお付き合いして頂いてありがとうございます。それにマーガレット様も。」


「いえ、そんな!感謝するのは僕の方ですよジャバルさん。この世界に来て、まさかこんな楽しいクリスマスを過ごせるなんて思っていなかったですから…。」


「そう言って頂けると私もルミナも嬉しいです。」



そんな話をしていると後ろの方からルミナさんが僕達を呼ぶ声が聞こえて来た。



「ジャバル!ハルト君!!」



ルミナさんの声に反応し僕とジャバルさんが振り向くと、そこにはサンタの衣装に身を包んだルミアさんとマーガレットの姿があった。

ルミナさんが着ている衣装は元居た世界で言うところのミニスカサンタの衣装だ。スカートの丈は膝よりもかなり上の方で、下手すればスカートの中が見えてしまうくらいの短さだった。

それに上は大胆にも胸元が開いており、正直目のやり場に困ってしまうほどだ。いくら上から厚手のポンチョを羽織っていても見てるこっちが寒さを感じてしまいそうだが、正直その格好はルミナさんにドンピシャで似合っている。


マーガレットはルミナさんより短い訳では無いが、スカートの丈は膝より少し上の長さでルミナさんと同じく厚手のポンチョを上から羽織って寒くないようにボタンを閉めていた。そしていつもは後ろで編み込んでいる髪は珍しく二つ結びで編み込んでおり、頭にはサンタの帽子を上から被っていた。

マーガレットは仕事の時以外は基本的に白のワンピースを普段から着ており、そのイメージが強いせいか赤を基調としたサンタの衣装を着ている姿はとても新鮮で、いつもとは違う雰囲気とその反則までの可愛さに僕は見惚れてしまった。



「どうどう!?二人とも感想は〜?」



二人のサンタコスに見惚れてしまっている僕とジャバルさんに、ルミナさんがニヤニヤしながら感想を求めて来た。いつもクールなジャバルさんも今回ばかりは流石に照れているようで、顔を赤くしながらルミナさんに向けて『似合っています』と照れながら言った。



「そ〜れぇ〜でぇ〜?ハルト君はどうなのさっ!?」



ルミナさんは慣れない格好のせいか、恥ずかしさで照れているマーガレットの背中を両手で僕の方へと押して距離を縮めながらニヤニヤした表情で言って来た。

マーガレットは恥ずかしさで真っ赤にした顔と口元を両手で隠しながら、僕の方を見ては視線を逸らしてを繰り返していた。

正直、その姿が…また可愛いさを増し増しにしている。まさに”可愛いは正義”というのはこの事だ!!!



「どっ…どうでしょうか…ハルト様?あまりこういった格好はした事がないので…。」



マーガレットは頬を赤らめ上目遣いで僕に聞いてきた。


『そんな心配せずとも最高に可愛いよマーガレット。』


そう心の中でキザなセリフを言ってみたが、いざ本人を目の前にしたら緊張が高まってしまい言いかけていた言葉が詰まってしまった。しかし、マーガレットも意を決して僕に聞いて来ている。このまま言葉を詰まらせて何も反応しなければマーガレットに失礼だ。頑張れ自分!!勇気を出すんだ!!


僕は呼吸を整え気持ちを落ち着かせると、マーガレットに自分が思った事を伝えた。



「似合ってるよマーガレット…。その…すごく可愛いと思う…。」


「!!」



マーガレットは僕のその言葉を聞くと恥ずかしそうに下を俯いた。

そして僕もその反応を見てマーガレットと同じく顔を真っ赤にして下を俯いたのだった。



「二人とも初々しいというか何というか…。」



ルミナさんはそんな僕とマーガレットに見かねたのか、僕とマーガレットの肩をポンっと叩くと笑顔で『大切な人と素敵な聖夜を!!』と言い残し、ジャバルさんに腕組みをしてライトアップされたノルズの街の中へと消えていった。



「ルミナさんとジャバルさん…行ってしまいましたね……。」


「そう…だね……。」



きっと二人に気を遣わせてしまったに違いない。

二人になってしまった事で僕の鼓動は今にもはち切れそうになっていた…。生まれてから今の今までクリスマスを異性と過ごした事は一度も無い…。残念ながら…。

しかし!!今僕は大切に思っている人と二人きりでクリスマスを過ごせるというチャンスに巡り会えたのだ。ここは男として不慣れでもリードしなくては…!!



「ぼっ…僕達も街を回ってみよう…か?」


「そっ…そうですね!!私も少しお腹が空いちゃって、、、」


「途中でルミナさんに連れて行かれたもんね…。」


「そうなんですよ…。」


「相変わらずだねルミナさん」


「まったくです!!」



僕とマーガレットは自然と会話の中で自然と笑みがこぼれ落ちた。

それから僕達は拳一つ分の距離を保ちながら歩き始め、二人でチキンを食べたり催し物をみたりホット甘味水を飲んだりと一緒にクリスマスパーティーを楽しんだ。

そして思う存分クリスマスパーティーを楽しんだ僕達は、中央広場から少し離れた場所にある公園のベンチに腰掛けていた。



「クリスマスパーティー…楽しかったですねハルト様。」


「うん。まさかこの世界に来て、こんなに楽しいクリスマスを過ごせるなんて思っても見なかったよ。」


「私も…ハルト様とクリスマスを一緒に過ごせて本当に良かったです。良い思い出が出来ました。」



マーガレットはそう言うと僕に向けて満面の笑みを見せてくれた。

それからの僕達は何かしゃべる訳でも無く、拳一つ分の距離を保ちながら中央広場に輝くツリーを静かに眺めていた。



……


………


…………



「マーガレット…」


「どうされましたか?ハルト様?」



僕はコートのポケットに準備していた小さな箱を取り出し、マーガレットに向けて差し出した。



「メリークリスマス…マーガレット…。」


「えっ?こっ…これを私にですか…?」


「うん…。」



マーガレットは僕が差し出した小さな箱を両手で受け取ると、瞳を輝かせながらその小さな箱を見ていた。



「開けてみてもいいでしょうか…?」


「うん…。」



マーガレットは僕がプレゼントした小さな箱を開けると、その中に入っていた物を見て目を丸くし驚いた表情で僕の方を見た。



「ハルト様…この指輪は…?」


「どう…かな?ジャバルさんに教わりながら作ったんだけど…。」



実はクリスマスパーティーを開催すると決まった時に、マーガレットには何かプレゼントをしようとは前々から考えていた。

が、しかし、女性にプレゼントをした事が殆ど無い僕は何をプレゼントするか悩んでいた。そんな時にジャバルさんがルミナさんに指輪を作ってプレゼントすると聞いて、僕はジャバルさんに頼んで指輪の作り方を教えてもらいながら一緒に作ったのだ。


僕のクリエイティブの能力を使用すれば、この指輪よりもちゃんとした物が出来たかもしれないが僕は一から作ってプレゼントしたいと思ったのだ。

この指輪には洞窟内で採取した『光』のマテリアルを埋め込んでおり、”ヴィヴィアンに舞い降りた天使”にちなんで”翼”をイマージした作りの指輪になっている。


果たしてマーガレットは喜んでくれるだろうか…?

そんな事を思っているとマーガレットが箱から指輪を取り出して僕にこう言った。



「付けて…もらえますか?」


「えっ?」


「ハルト様に付けてほしいんです…。」



マーガレットはそう言うと左手を僕の方へと翳した。

この寒さなのか緊張なのかは分からないが僕の手は少し震えており、震えた手で指輪を受け取るとマーガレットの左手の薬指に指輪をそっとはめた。



「ありがとうございます…ハルト様。こんな素敵なプレゼントを頂けて幸せです。」


「良かった…。」



どうやらマーガレットはこのプレゼントを喜んでくれたらしい。

僕はプレゼントを無事に渡せた事とマーガレットの嬉しそうな反応にホットしていると、今度はマーガレットが僕の方を見てこう言って来た。



「わっ…私からもハルト様に……プレゼントがあります…。」


「僕に?」


「はい…。」



そう言うとマーガレットは羽織っていたポンチョのボタンを上から順に外していった。

ボタンを外したマーガレットの姿は、ルミナさんと同じく胸元が大胆に露出しており首には赤いリボンが蝶々結びで結ばれていた。そして前屈みになり上目遣いをしながら少し甘い声で僕にこう言った。



「わっ…私が……プレゼント…です…。」


「へっ!?」



まさかのプレゼントと今までに無いマーガレットの大胆な行動に、僕は思わず変な声が出てしまった。それにこのマーガレットの姿…破壊力がヤバイ…ヤバすぎる!!!

それに『私がプレゼント』だって…?そんな展開はアニメや漫画だけだと思っていたが…まさか現実で自分が体験する事になるとは…。



「いっ…嫌……ですか?」


「いっ…嫌じゃない!嫌じゃないです!!」


「なら…。」



マーガレットそう言うと瞳を閉じて僕の方へとゆっくりと近付いて来た…。

これは…まさか……?そう言う事なのか!?そうなのか!?

そんな思考が頭の中を駆け巡っていると、気付けばマーガレットの顔はすぐ側まで来ていた。


かっ…覚悟を決めなくては…。僕は意を決して瞳を閉じた…。



……


………



「!!」



自分の頬に柔らかい物が当たる感触を感じた…。

僕は恐る恐る目を開けると、恥ずかしそうに下を俯いているマーガレットの姿があった。



「メッ…メリークリスマスです…ハルト様。」


「メッ…マリークリスマス……マーガレット。」



マーガレットは余程恥ずかしかったのか、ポンチョのボタンを閉めると顔を真っ赤にして慌てながら僕に事の経緯をジャスチャー付きで説明して来た。

どうやら、マーガレットのこの一連の大胆な行動はルミナさんから教わったようで、『聖なる夜に”私がプレゼント”』っと言えばどんな男も瞬時に落とせるっと…。そしてマーガレットはそれを間に受けて実行した…。っという訳らしい。

僕はその話を聞いてルミナさんが考えそうな事だと納得した。



「こっ…今度は!ちゃんと成功させますから!!期待してて下さいハルト様!!!」


「はっ…はい……。」



どうやらマーガレットは諦めていないようだ。

ともあれ、僕は異世界で大事な人と素晴らしい聖夜を過ごせる事が出来たのだった。

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