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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
82/126

#82~戦いの終わり〜

<時を同じくして商業都市イスタリム 冒険者協会エリアにて>


冒険者協会エリアでは黒騎士と白騎士の拳がぶつかり合う音がエリア周辺に響き渡り、互いに一歩も引かない状況が続く中、黒騎士の心には焦りが募り始めていた。

その理由は冒険者協会から出て来たローレンは複雑な表情を浮かべており、その隣にはハルトの姿が無かったからだ。

ローレンのその表情を見た黒騎士は、冒険者協会内で何か問題が発生しハルト身に何かあったのだと悟ると同時に、白騎士が言っていた三人の重要人物の最後の一人がハルト”だったのだと確信した。


しかし、その焦りの中にも黒騎士の心の中には少しの希望があった。

それはローレンがパナケイアへと向かおうとしていたからだ。冒険者協会内で何かしらの問題が発生したにせよ、ローレンはパナケイアこそ教団が言っていた”身の安全を保証されている場所”だという情報を得たに違いない。そしてローレンがそこに向かうという事は、ハルトもそこにいる可能性が高いという事になる。


そしてローレンが騎士団の兵士達と共にパナケイアの中へ向かってしばらくした後、パナケイアの地下深くから二つの大きな力が解放されるのを黒騎士は感じ取った。

一つは禍々しい魔力を放ち、もう一つの大きな力は神の力…、おそらくマーガレットかレヴィーのどちらかが”神器”の力を解放したものだと黒騎士は推測し、ローレンがパナケイアへと向かってからの時間を考えると既に合流していてもおかしくない。


それらを踏まえ、禍々しい魔力を放っていた力が弱まっている今が勝機だと確信した黒騎士は、この機会を逃さんと右腕に装着している”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)”に力を込め白騎士に反撃を仕掛けた。



「これで終わりだ白騎士!!」



黒騎士は白騎士の攻撃を紙一重で躱し、力を込めたガントレットを強く握りしめ白騎士の腹部へと勢いよく打ち込むが、後もう少しのところでガントレットを装着している右腕に触手のような物が巻き付き攻撃を阻止されてしまった。



「なっ!?」


「ふふふっ…。そうはさせないわよ。」



後方から謎の女性の声が聞こえ黒騎士はその声の方へ振り向くと、そこには人の背骨のような形をした触手を身体に纏っている一人の女性の姿があり、黒騎士の事を不敵な笑みを浮かべながら見ていた。



「良いタイミングだ、コルア・アライアス…。」


「!?」



黒騎士の攻撃を触手を使って防ぎ、触手を纏い不敵な笑みを浮かべているその女性の正体はロロの師匠でパナケイアを経営している薬師コルアだった。



「ふふふっ…。それはどうも〜」



コルアはそう言うと纏っている触手を黒騎士に向かって更に放つと、黒騎士の手足を触手で縛り上げ自由を奪った。



「ぐっ!!…かっ…身体の自由が…!!!」



コルアの放った触手によって身体の自由を奪われた黒騎士を見た白騎士は、『残念だったな』と皮肉じみた嫌味を言うと、左腕に装着している”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”に力を込め黒騎士の腹部に渾身の一撃を打ち込んだ。



「ぐふぁっ…!!」



渾身の一撃を腹部に打ち込まれた黒騎士は口から大量の血を吐き出し、吐き出された血が兜の中から滲み出ると地面へと滴り落ちた。



「まっ…まだ……だ…。まだ終わって…ない…」



黒騎士は自身の右腕に装着している”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)”の効果で蓄積したダメージを自身の力に変換して立て直そうとするが、黒騎士の身体は先の白騎士が打ち込んだ渾身の一撃によって意識が朦朧としており、その思いも虚しく右腕に装着していた”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)”は強制的に解除され、元の鎧へと姿を戻し地面へと崩れ落ちた。


地面に崩れ落ちた鎧は以前のような漆黒の輝きを失っており、黒騎士の身体は力が抜け不覚にもコルアの触手によって支えられながらその場で項垂れていた。



「どうやら勝負あったようだな弟よ。」



満身創痍の黒騎士とは違い白騎士は息切れ一つせず、兜ごしからでも分かるくらいの余裕に満ちた声で黒騎士に話しかけるが、既に殆どの魔力と体力を消費し身体が限界にきている黒騎士は白騎士の声に反応する余裕も無く、朦朧とする意識の中でただただ白騎士の姿を見ている事しか出来ずにいた。



「俺の声に反応する力も残っていないか…。」



そう言うと白騎士は黒騎士が背中に背負っている七色に輝く大剣を奪うと、人の背骨のような触手をその身に纏っているコルアの方を見た。



「それにしてもコルア、随分と様変わりしたように見えるが?」


「とんだ邪魔が入っちゃたのよ…。まさか”神器持ち”がいるだなんて思ってもなかったわ…。」


「やはりあの時感じた大きな力の一つは、神器を解放した力だったか。そしてお前はその相手に苦戦したおかげで様変わりした…という訳だな?」


「そうよ…。」



皮肉じみた白騎士の言葉にコルアは少し苛立ちを見せる。



「だが、お前がここに来たと言う事は例の三人は無事に回収出来たのだな?」


「ハイブリットエルフと”彼の方”が興味を示した転生者ならマインが先に回収したわ。でもロロは邪魔が入ってね…。」


「ふむ…。まぁハイブリットエルフと”彼の方が興味を示した転生者の回収が出来たなら大丈夫だろう…。それに回収しようと思ばロロはいつでも回収が出来る。今は泳がせて能力が覚醒するまで待ってもいいだろう。”彼の方”もきっと分かってくれるはずだ。」


「だといいけど…。それはそうと、あんたの弟はどうするのよ?」



コルアの質問に白騎士は先ほど黒騎士から奪った七色の輝く大剣を力強く握りしめると、コルアの触手によって支えられながら項垂れている黒騎士の喉元にその大剣を翳した。



「この場で殺し”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)”の力を奪い取る…。それで俺はようやく…日向の道を歩ける……。」


「ふ〜ん。まぁご自由に…。でも私の可愛い触手ちゃん達は傷付けないでね?」


「あぁ…。一瞬で終わる。」



そして七色に輝く大剣を白騎士は両手で力強く握りしめ、黒騎士の首へと勢いよく振りかざそうとした時、上空から雷を纏った水龍が白騎士とコルア目掛けて勢いよく放たれた。

二人は突如上空から放たれたその一撃を間一髪で躱す事に成功するが、その一撃を躱した事により黒騎士から距離を離されてしまい、コルアに至っては黒騎士の動きを封じていた触手がその一撃によって焼き尽くされ、周囲にはその一撃が直撃した爆風と触手が焼き尽くされる煙幕が立ち込めた。



「この一撃は一体!?」


「思ったよりも早く来たみたいね…」


「何!?」



徐々に煙が晴れていきその中から姿を現したのは黒騎士の肩を支えるローレンと、”神器リヴァイヴァルトライデント”を握りしめコルアの方を警戒しているレヴィーの姿だった。



「大丈夫ですか黒騎士様?」


「その声…ロー…レン……か?」


「えぇ、私です。それとレヴィー様も一緒に駆けつけて来て下さいました。」


「レヴィー……?」


「助けに来たよ黒騎士!!」



黒騎士はローレンの反対側でコルアの方を警戒しているレヴィーの姿を見て、意識が朦朧としながらもその変わりように驚いていた。



「随分と頼もしくなったな…レヴィー…。その姿を…マーガレットとハルトが見たら驚くはずだ……。」



黒騎士の元へ駆けつけたローレンとレヴィーは、疲弊してる黒騎士を左右から守ようにローレンは白騎士をレヴィーはコルアを警戒していた。



「ほぅ…。まさか幻獣と同化している神器持ちとはな…。それはコルアが苦戦するはずだ。それにお前…ただの執事だと思っていたが、その練り上げられた闘気と魔力からしてただのエルフではないな?」


「お褒めの言葉ありがとうございます。それで…エレナ様とハルト様の居場所はどこです?」


「そう聞かれて易々と教える奴がいると思うか?」



白騎士は少し挑発気味にそう言うと空間魔法を出現させコルアに撤収する事を命じ、コルアもその命令に応じると空間魔法を出現させこの場から退場しようとしていた。



「逃がさない!!!」



レヴィーはコルアを逃さんとその場からコルアの元へ勢いよく駆けつけようとするも、不敵な笑みを浮かべながら『じゃあね、可愛子ちゃん』と言い残し、レヴィーが駆けつける寸前に空間魔法の中へと消えて行く。



「今回の目的であるハイブリットエルフと”彼の方”が興味を示した転生者は無事に回収出来た。”異種人間ハイブリット・ホムンクルス”のロロもいずれ回収する…。それまでせいぜい可愛がってやれ…。」



「まっ…待て…しろっ…き……」



黒騎士は空間魔法でこの場から去ろうとする白騎士に意識が朦朧としながらも手を伸ばすが、身体が限界に達したのかそのまま意識を失った。



「黒騎士様!!」


「ふっ…最後まで争うとはお前らしい…。そこのエルフ!!黒騎士に伝言だ!!!この七色に輝く大剣…”ミストルティン”は俺が頂いていくとな…。」


「待て!!!!」



ローレンの叫びも虚しく白騎士はローレンにそう言い残すと空間魔法の中へと姿を消し、黒騎士、レヴィー、ローレンの心の中にエレナとハルトを助けられなかったという悔しさと大きな傷を残し、この戦いは幕を閉じたのだった。

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