表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
77/126

#77〜レヴィーの覚悟〜

<パナケイア地下にある牢獄内にて>


「わっ…私が……てっ…転生者の子供……? そっ…それに……お師匠様が…わっ…私の両親を殺した……です…?」



コルアから告げられた真実はあまりにも残酷のものだった。

ロロにとってコルアは師匠であり幼い時に両親を亡くした自分を育ててくれた恩人。

血こそ繋がっていないものの、ロロにとってコルアは唯一自分が家族だと思える人物だった…。


どれだけ自分が傷つけられようとコルアが神聖教団のメンバーだったとしても、目を逸らさずにしっかりと向き合えば以前のような優しいコルアに戻ってくれるのだとロロは心のどこかで信じていた。だがロロに突きつけられたのは、”両親は病で死んだのでは無くコルアによって自分の両親が殺された”という事実…。


その事実を知ったロロの心は次第に荒んで行き、沸々と煮えたぎるマグマのように心の中にはドロッとした負の感情が芽生え始めていた。



「そっ…そんな……うっ…嘘に決まってる…です…。お師匠様が…そんな事……」


「呆れた…。この後に及んでまだそんな甘いことを言ってるの?そんなに真実が受け入れられないなら自分自身で”あの日”の事を思い出しなさい…。」


「”あの日”の事…です?」



そう言うとコルアは自身の右腕に魔法陣を展開すると、その場で立ち尽くして困惑しているロロの地面に自身の右腕に展開している魔法陣と同様のものを展開した。



「ロロち!!」



レヴィーがロロを魔法陣から遠ざけようと手を伸ばすが、コルアは瞬時に左腕に魔法陣を展開するとロロを魔法陣から遠ざけようとするレヴィーに向けて魔力を利用した衝撃波を放ちロロから遠ざけた。

衝撃波を受けたレヴィーは部屋の壁に勢いよくぶつかるとそのまま地面へと倒れ込み、壁にぶつかった衝撃で意識を失ってしまった。そしてレヴィーが倒れ込んだ姿を確認したコルアは右腕に展開した魔法陣を解き放ち、”偽りの記憶”へと書き換えたロロの記憶を”元の正しい記憶”へと戻した。



「あっ…あぁ……。」



コルアが書き換えたロロの”偽りの記憶”を”元の正しい記憶”に戻した事により、ロロの脳内の中では”ロロの両親がコルアによって殺害された日の記憶”が鮮明に流れ込んで来ていた。



「お父さん…?お母さん……!?」


「思い出して来たようね。」


「そっ……そんな……わっ…私を置いて……行かないで…です……!!」



ロロは脳内に流れ込んでくる”元の正しい記憶”に深く入り込んでしまい現実と記憶の区別が付かなくなっていた。ロロは脳内で見ている両親に向けて”置いていかないで”と両手を差し出し瞳から涙を流しているが、現実の世界ではロロが両手を差し出している先に居るのは皮肉にもロロの両親を殺した本人コルアだった。



「うっ…。」



コルアが放った魔力の衝撃波によって意識を失っていたレヴィーが目を覚ますと、目に飛び込んできた光景はロロがコルアに向かって『お父さん』『お母さん』と泣き叫んでいる姿だった。



「ロロち!!」


「あっ…あぁ……お父さん!!お母さん!!!わっ…私を一人にしないで……です!!」


「どうしたのロロち!?ロロち!?」



レヴィーの必死の呼びかけにロロが答える事は無く、その異様な光景を見たレヴィーはコルアに向けて力強く叫んだ。



「一体ロロちに何をしたの!!」


「あら〜?やっとお目覚めかしら?」



レヴィーは地面から身体を起こすとコルアを鋭い目つきで睨みつけながら、再度ロロに何をしたのかをコルアに問いただした。



「何をしたの…?ロロちに!!」


「ふ〜ん。そんな幼い顔をして随分と怖い顔をするのね…?」


「答えて…。」


「 まぁいいわ…。ロロには”元の正しい記憶”を思い出させてあげてるの…。私がロロの両親を殺した日の記憶をね…。」



そう言うとコルアはレヴィーに向けてニヤリと不気味な笑みを浮かべてみせた。



「あっ…あれは……お師匠…様です…?」


「そろそろメインイベントみたいよ〜」



先程まで両手を伸ばし泣き叫んでいたロロは、脳内で流れ込んでくる”元の正しい記憶”の中で師匠であるコルアの姿を見て安心したのか、泣き叫ぶのを止め今度は記憶の中のコルアに向けて助けを求め始めていた。



「ふふふっ…ロロったら私に助けを求めちゃうなんて哀れよね〜。今助けを求めている私に目の前で両親を殺されてしまうんだから…。」



ロロは一度記憶を書き換えられており、今度は一度書き換えた記憶の紐を解き”元の正しい記憶”に戻そうとしている。ただでさせ記憶の書き換えを行うだけでも脳と精神にかなりの負荷がかかってしまう上に、”元の正しい記憶”の内容が自分が師と仰いでいるコルアが”自分の目の前で両親を殺す”といった残酷なものだ。

現実と記憶の区別が付かないままの状態でロロがその記憶を見てしまえば最悪の場合、ロロの精神は壊れてしまう可能性がある。



「ロロち!!!!」



そう思ったレヴィーはロロがその記憶を見てしまう前に助け出そうとロロの元へ向かって走り出すが、コルアの魔法によってレヴィーは身体の空中へと追いやられ身動きを封じられてしまった。



「そこでロロが”元の正しい記憶”を思い出すのを黙って大人しく見ていなさい!!!」


「っ!!」



その時の記憶が近付くにつれてロロの心と精神は徐々に壊れ始め、ロロが立っている地面を中心に小さな亀裂が入り始めていた…。



「そっ……そんな…おっ…お師匠様…何を…する…です…? あっ…あぁ……そんな…そんな!!」


「ロロち!!!!」


「どれだけ叫んでも無駄…もうロロの心は完全に崩壊し始めてる。そして”元の正しい記憶”を取り戻した時には、精神と心は完全に崩壊して生きた屍のようになってしまう…。ふふふっ…なんて哀れな子…。」


「そんな事は私がさせない!!」



ロロをこの状況から救い出すには自分自身の力を解放するしかない…。例えそれが自分自身にどんな結果を招いたとしても、自分の大切な友達を救うにはそれしかなかった…。

レヴィーは覚悟を決めると自身の左腕に魔法陣を展開すると詠唱を唱え始めた。



「我、天地創造の神によって生み出されし生命の海を司る最強の子なり。全てを飲み込む力を我に与えたまえ。」



レヴィーが唱えた詠唱に左手に展開した魔法陣が共鳴すると、展開した魔法陣から瑠璃色の水龍を一体出現させレヴィー動きを封じていたコルアの魔法を打ち破った。

そしてレヴィーは瑠璃色の水龍をまるで自身の手先のように指先で自在に操り、コルアや周囲に居る黒いフードを被った教団のメンバー達を吹き飛ばしその場から遠ざけた。それからレヴィーはコルアが展開した魔法陣の中で現実と記憶の区別が付かなくなっているロロと、地面に横たわっているマーガレットを瑠璃色の水龍を操って救出する事に成功した。



「ロロち!!お姉ちゃん!!!」



二人とも意識を失っているせいかレヴィーの呼びかけに反応はしなかったが、息をしている事を確認したレヴィーは安心し胸を撫で下ろしたが、その安心の一瞬のものしか過ぎず牢獄の奥からコルアの声がレヴィーの耳に入って来た。



「まさか…こんな可愛い子が”神器持ち”だったなんてね……。」


「………。」



レヴィーは瑠璃色の水龍を操って二人を牢獄の入り口付近へと避難させると、コルアの声がする方へと視線を送り警戒した。



「あの女から教えてもらった情報の中にあなたが”神器持ち”という情報は無かったわ…。」



ボシュウゥゥゥゥ…。



不気味な音と共に牢獄の奥から出て来たコルアは身体から濁った紫色の魔力が湧き出ていた。そしてコルアは自身の両手に濁った紫色の魔力を集め空中に浮遊すると、レヴィーに向けて問いただした。



「それで…あなたの神器はどんな物なのかしら?」



レヴィーはコルアから一旦視線を離し、マーガレットとロロの元で待機させていた瑠璃色の水龍を自分の元へと呼び戻すと水龍の額を優しく撫でこう唱えた。



「神器”リヴァイアサン”!!!」



その言葉と共に瑠璃色のドラゴンから眩い光が発せられると瑠璃色の水龍はその姿をロッド状の武器へと形状を変化させ、レヴィーはロッド状の武器『神器 リヴァイアサン』を手に取るとコルアに向けてこう言った。



「これが私の神器…。」


「ふ〜ん…これは楽しめそうね…。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ