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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
75/126

#75〜因幡之白兎と赤の門〜

「”影の舞(かげのまい)円舞(えんぶ)”!!!」



先に仕掛けて来たのは影乃魔刃だった。

影乃魔刃は、呼び出した自身の影を”影の舞(かげのまい)円舞(えんぶ)”によって影の分身体それぞれが意志を持っているかのように動かしローレンに向けて放った。



「影の分身体それぞれが意志を持っているかのように動かして敵に奇襲を仕掛ける…。これは厄介な技ですね…。」



影の分身体はローレンの周囲を囲みながら円を描くように走っており、奇襲のチャンスを伺っていた。ローレンは自身の周りを走っているの影の分身体に意識を集中させると、邪霊拳の構えをしたまま静かに目を閉じた。



「目を閉じるとは〜随分余裕だな?」


「いえ…。警戒しているからこそ…。ですよ。」


「そうかよおぉぉぉぉ!!!」



影乃魔刃はそう言うと自身の両手を勢いよく”パンッ”と叩くと、その音に反応した影の分身体は走るのを止め四方からローレン目掛けて攻撃を開始した。


ローレンは更に意識を集中する…。


そして目を閉じたまま影の分身体が自分目掛けて仕掛けてくる連携した攻撃一手一手を、しっかりと見極めその全てを確実に防いでいた。



「なんて奴だ…目を閉じたまま全ての攻撃を防いでやがる……。これが”邪の道を極めし者”の力…。なら……。」



影乃魔刃は両手を左右に大きく開くと、ローレンに攻撃を仕掛けている自身の影の分身体に向け左右に開いたその両手を再度大きく叩きこう叫んだ。



「”影の舞(かげのまい)円舞(えんぶ)乱れ咲(みだれざき)”!!!」



その言葉と共にローレンを攻撃していた影の分身体達は一旦攻撃を止めローレンから距離を取ると、今度は今まで連携した攻撃から不規則な攻撃へと戦法を変えた。

先程までの連携した攻撃から一転して影の分身体の不規則な攻撃にローレンは次第に押され始めていた。


次第に押され始めているローレンの姿に手応えを感じた影乃魔刃は、今度は自身もナイフを両手に握りしめローレンの元へと走り出す。

そして影の分身体の攻撃に苦戦しているローレンの元へと辿り着いた影乃魔刃は、影の分身体の不規則な攻撃に自身も混ざりローレンに向けて攻撃を開始した。



「どうやら不規則な動きには弱いみたいだな?」


「ッ…!!」



影の分身体から繰り出される不規則な攻撃、そして影乃魔刃が隙を突いて仕掛けてくる攻撃に流石のローレンも閉じていた目を開き防御に徹していた。



「やっぱこれでも決定的なダメージを与える事は出来ないか…。クククッ…これも何かの縁だ。俺の本気をあんたに見せてやる!!」



そう言うと影乃魔刃は影の分身体に苦戦しているローレンの隙を突いて間合いに入ると、

手にしていた二本のナイフを地面に素早く刺しそのナイフの影を利用して『”影結び(かげむすび)”の力を発動しローレンの動きを封じた。



「なっ!?」



そして影乃魔刃はローレンの動きを封じたのを確認すると、両手の人差し指と中指以外を握りしめ、伸ばした人差し指と中指を地面に刺したナイフの持ち手部分に両手を交差させながら触れるとこう言った。



「”影の舞(かげのまい)凝結(ぎょうけつ)”…。」



ギョピッ…。



不気味な擬音と共に影の分身体はローレンへの攻撃がピタリと止むと、その四つの影の分身体は『ギョピピピッ』と擬音を発しながら一箇所へ集まると人型の形状から液体の形状へと形を変え、影乃魔刃が地面へと突き刺したナイフの元へと吸い込まれるように移動し突き刺したナイフの周りを漂っていた。


影乃魔刃は地面に突き刺した二本のナイフに触れていた両手を左右に空を裂く勢いで開くと、旋律めいた声で液状の影に向かってこう囁いた。



「”因幡之白兎(いなばのしろうさぎ)(かげ)”」



ギョッコッパアァァァ…。



影乃魔刃が囁いたと同時にナイフの周りを漂っていた液状の影は、不気味な擬音と共に地面へと滴るように落ちて行った。



ゴッポア…。


ゴッポアァァ…。



ローレンを動きを封じていた”影結び(かげむすび)”は、液状の影がナイフを取り込んだ事によりいつしか解けていたが、ローレンは目の前で不気味な擬音を発しながら気付けばローレン自身や影乃魔刃の身長を越して巨大化し形状を変化している影に見入っていた。



ギャッポゥ…。


ゴポポッ……。



そしてナイフを取り込んだ液状の影は、その姿を巨大な兎の形状へと変化させた。



「こっ…これは…?」


「”因幡之白兎(いなばのしろうさぎ)”…。これは俺が元居た世界の神話に出てくる生物だ…。そしてこれを呼び出したのは”あの厄災”以来…しかも今回は”邪の道を極めし者”相手と来た…。」


「”あの厄災”以来…?」



ローレンは影乃魔刃が言った”あの厄災以来”という言葉に疑問を感じた。

厄災があったのは100年前…。だが私の目の前にいる影乃魔刃の見た目は20代前半…。

もし彼が、ハルト様同様に最近この世界に転生、また人間よりも寿命が長いエルフや他の亜人、それに神や英雄の領域に達した者だとすれば100年経っていてこの見た目でも何ら違和感は無い…。


だがしかし、彼は”あの厄災以来”と言った事から”影乃魔刃”本人が”厄災”を体験したということになる。

転生者は時による影響を受けない…?それが”転生者の特性”…という事なのだろうか……?


それとも他の理由が…?


ともあれ、今はこの”因幡之白兎(いなばのしろうさぎ)(かげ)”を倒さなければ…。



「これは私も少し本気を出さなければいけませんね…。」


「へぇ〜。そりゃ〜楽しみだ…。」



ローレンはそう言うと両手首を甲の方に曲げながら自身の胸元に持って行き、深く呼吸をし気を落ち着かせると己の中にある”邪の心”にあるリミットを一つ解放した。



邪気解放(じゃきかいほう)赤の門(せきのもん)!!」



その言葉と共にローレンが”赤の門”を解放するとローレンの身体から湧き出るように赤いオーラが放出された。そしてローレンは赤いオーラを纏いながら邪霊拳の構えをすると、影乃魔刃に向けこう言った。



「準備は整いました…参ります。」


「これが”邪の道を極めし者”のオーラか…。クククッ…胸が高鳴るわ〜」



ローレンは目の前に立ちはだかる”因幡之白兎(いなばのしろうさぎ)(かげ)”に鋭い眼光を飛ばしながら拳を強く握りしめると、その握りしめた拳に赤いオーラを集中させたのだった…。

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