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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
72/126

#72〜日向と日陰〜

「白騎士が…私の…”本当の兄”…!? まさか…そんな訳が…。」



白騎士の口から告げられた衝撃の事実に私は動揺を隠せずにいた。



「俄には信じ難いがな…。だがこの”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”が、それが事実だという事を証明しているだろう?」


「そっ…それは…。」



”白騎士が私の本当の兄”という事を信じる信じ無いの前に、その左腕に装着している”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”が全てを物語っており、私はその事実を受け入れる他無かった。白騎士が”私の本当に兄”だという事を…。



「100年前のあの日…。俺は幼い頃から家族同然に育ち、共に歩んできたお前に殺され命を落とした…。そして俺の魂は”死者の国(ヘルヘイム)”で囚われ、消滅する事も新たな命へと生まれ変わる事も許されず長い時をそこで過ごした…。永遠とも言えるその時の中で俺の記憶は徐々に薄れていったが、それでもお前への復讐心と”あの目的”の事だけは魂に刻み続けた…。」



白騎士は左腕に装着している”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”に視線を送り、自身の綿線の高さまで持っていくとガントレットを力強く握りしめると話を続けた。



「そしてある時、魂だけの存在になった俺の元に”彼の方”が姿を現し手を差し伸べ、薄れていった記憶を呼び戻し失った肉体を俺に与え現世へと呼び戻してくれた。それから”彼の方”は俺が”何者”であるかという事や、この世界の真実について話しをてくれた。その時に俺とお前が血の繋がっている実の兄弟であるという事もな…。最初は信じ難かったが、俺の中にある”枷”を”彼の方”が解き、この”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”を目にして”彼の方”が言っている事が真実だと確信した。」



死者の国(ヘルヘイム)”から白騎士を現世に呼び戻し、私も知らなかった真実を知っている”彼の方”とは一体誰だ…?”死者の国(ヘルヘイム)”に出入り出来るのは限られた人物だけのはず…。



「”真実”を知った俺は怒りや絶望をも通り越し、なぜか清々しい不思議な気持ちになっていた…。小さい頃からゼウスの加護を受け、日向の道を歩んで来たお前には分からんと思うがな。」


「白騎士…。」


「少し話が逸れてしまったが、そういう訳だ黒騎士…いや、弟よ。日陰を歩きゼウスに見捨てられた挙句、実の弟に殺された哀れな兄の復讐心をその身で受け止めてやってくれ!!!」


「!!!」



そう言うと白騎士は左腕に装着したガントレットを力強く握りしめると、目にも止まらぬ速さで私との距離を一気に詰め、ガントレットを装着した拳を私の腹部目掛けて勢いよく打ち込んで来た。



「ぐふぁっ!!!!!!」



一瞬の隙をついて打ち込まれたその一撃に私は反応する事が出来ず、打ち込まれた拳は私の無防備な腹部へと深く打ち込まれ骨をも砕いた。そして白騎士は腹部にガントレットを装着した拳を深く撃ち込んだまま私を地面へと勢いよく叩き込む。

その強烈な一撃は、”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”の力もあってか叩き込まれた地面周辺には巨大なクレーターが出来ていた。



「くっ………。」


「これが”全知全能神の(ゼウスザガントレット)決死拳(・レフトゥ)”の力…。まさかこれだけの力でこれ程の威力だとは…。決死と名が付くだけ事はある。なぁ弟よ?」



白騎士は私の返答を待たず、

倒れ込んでいる私の首を右手で掴んで持ち上げてこう言った。



「これで終わりだと思うなよ弟…。」



そう言うと白騎士は掴んでいる私の首を強く握りしめ、無防備状態の私の身体に左腕に装着しているガントレットで一方的に殴り始めた。



「どうだ!!これが!!!100年もの間!!!!俺が心に溜めていた怒りだ!!!!」



首を掴まれ身体中に白騎士からの攻撃を受けている私は、右腕に装着している”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)”の効果と、自身の魔力を使用して身体の防御力を高める事で白騎士からの一撃をなんとか耐え凌いでいる状態だった。

何とか白騎士から距離を取らなければ…。このままの状態が続いてしまえば魔力が尽き自分の命が危ない…。何とか白騎士との距離を…一瞬だけでも油断させる事が出来れば…。



「どうした黒騎士!!もう、もがく事も出来なくなったか!?」



白騎士の左腕に装着されている純白のガントレットと兜は、私を痛ぶり殴り続けているせいか純白の輝きは失われ血に染まっていた。

一方的に私を殴り続けるその光景に、周囲に居た人々は恐怖でその場から動く事も言葉を発する事も出来ずただ見ている事しか出来ずにいた…。



「はぁ…。はぁ…。はぁ……。」


「………。」


「これだけ殴ってもまだ死な無いとはな…。」



白騎士は全身の骨を砕かれ大量に出血し、

言葉一つ発さ無い私の姿を見るとそのまま地面へと放り投げた。

自分の力に溺れ勝ちを確信した時こそ隙が生まれるもの…。私は今にも意識が遠のきそうな自分に喝を入れ、この一瞬の隙に残った魔力を右腕のガントレットへと注ぎ始めた。



「ッ……ね…ッ……い………た…。」


「ん…?」


「この……いっ…一瞬を………狙って…いた…!!」


「何!?」


「”制限解除リムーヴァル”!!!」



その言葉にガントレット全体に浮かび上がっている七色のラインが輝き出すと、その七色のラインはガントレット全体から私の身体全身へと広がって行き、その輝きは次第に私自身をも包み込んでいった。



……


………


…………



「こっ…これは……!?」


「白騎士…。これが”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)”の真の力だ…。」



かつてゼウスはその右腕を漆黒に染め”全ての攻撃を無に返した”とされているが、それは単に敵の攻撃を無力化したというものでは無く、その言葉の”真の意味”は別にあった。

その真の意味は”無に返す”と同時に全ての攻撃を自身の右腕に吸収し、それを自身の力へと変換するというものだった。

そして敵の攻撃を漆黒の右腕で吸収したゼウスは、その力を純白に染まった左腕へと集めると決死の一撃を相手に浴びせ無に返したとされている。


私は白騎士が放った”白騎士の(ホワイトナイツ・)爆裂聖剣撃オブ・エクスプロージョン”をガントレットへと吸収し、いざという時の為にその力を温存させていたのだ。

そして白騎士が気を許し勝ちを確信した瞬間にガントレットに自分の残りの魔力を全て流し込み、蓄積された力と合わせてガントレットの”制限を解除”させその膨大なエネルギーで痛めた身体の傷を回復させ自分自身をも強化したという訳だ。



「聞いて無い…。聞いて無いぞ!!!”全知全能神の(ゼウスザガントレット)死守拳(・イウス)にそんな力があるという事は!!!!」


「これは加護を受けた者…”死守の使命”を持った者にしか知り得ない力だ!!!」


「くっ…!!!そうやってまたお前は日向の道を歩んでいくのか!!!この俺を日陰へと落として!!!」


「自分から日陰に落ちているのが分からないのか白騎士!!!いい加減に目を覚ますんだ!!!」


「黙れっ!!!!」


「ッ!!!」



私と白騎士はそれぞれの思いをガントレットを装着している拳に託すと、

互いが互いを目掛けてその拳を勢いよく放ち、漆黒のガントレットと純白のガントレットが激しくぶつかり合ったのだった。

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