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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
69/126

#69〜牢獄の奥と対峙〜

囚われた何人かの人達をロロの作ったポーションで回復させ、その人達に牢屋に囚われている他の人達を救出する為に助けを呼びに行くのを任せた後、レヴィーとロロの二人はマーガレットとエレナを助け出す為に牢獄の中を進んで行った。



「思ったよりも広いね…ロロち。」


「はっ…はい……です。」



二人が居るこの牢獄は、ロロの師匠コルアが経営しているお店パナケイアからは想像出来ない程の大きさで、その道中には牢屋がずらりと並んでおり、中には年齢問わず多くの人達が横たわりうめき声を上げている光景が続いていた。



「お姉ちゃん…。」



レヴィーは連れ去られたマーガレット、そしてローレンが探しているエレナもこの牢屋の中に囚われている人達と同じように”麻導薬”を投与されているかもしれないと思うと、牢獄の中を進むにつれ次第に心の中に焦りが見え始めていた。


もし…自分達が駆けつけた時に最悪な結果になっていたら…っと。



「レッ…レヴィー……。」


「あっ!ごめん!!ロロち…。」



レヴィーはその焦りから握っていたロロの手を無意識に力強く握っていた。

ロロはレヴィーに向けて『気にしていないよ』と意味を込めて大きく首を横に振ると、改めてレヴィーの手を包み込むように握りこう言った。



「そっ…その……。レッ…レヴィーの…不安な気持ち……半分こ…に……する…です。」


「ロロち…。」



それは、ロロが師匠でもあり自分の事を育ててくれた恩人でもあるコルアに裏切られ、気持ちが滅入っていた時にレヴィーがロロに掛けた言葉だった。

ロロはその言葉に救われたと同時に、目の前の事から目を背けず自分の師匠であるコルアと向き合おうと思えた。状況や立場は違えどロロは少しでもレヴィーの不安を和らげたい。そう思いその言葉を伝えたのだった。



「とっ…友達……です!!!」



レヴィーはロロのその言葉がスッと心に染み渡ると、先程まで焦っていた物が和らぎ心が軽くなったのを感じた。



「ありがとう…ロロち!ロロちが一緒に居てくれて本当に良かった!!」


「あっ!いえ…うん!!…です!!」



まだマーガレットとエレナが”麻導薬”が投与されたと決まった訳じゃ無い…。

それに万が一二人に”麻導薬”が投与されたとしても、その時はロロが作ったポーションで治療する事も可能だ。レヴィーはその事を自分に言い聞かせ再び歩き出した。


牢獄内を歩き進めると、二人の前に更に地下へと続く階段が現れた。

まるでレヴィーとロロを招き入れるかのように地下へと続く階段の前には、この世界の文字で『探し物はこちら』と書かれた貼り紙まで貼ってあった。



「こっ…これは……おっ…お師匠様の…字…です…。」


「じゃあこの先に…。」


「たっ…たぶん……です。」



地下へと続く階段の前に貼られた貼り紙を見て、二人はこの先に連れ去られたマーガレットとローレンが探しているエレナが居る、それとこの先に自分達が入る事が相手の策の中に飛び込む事だと確信した。



「ロロち…この先に入ったら無事に帰って来れる保証は無いと思う…。それにこの先に行けばきっと…。」



きっとロロは自分の師匠で恩人でもあるコルアと対峙する事になる。

そして現実を突きつけられるに違いない…。



「きっとロロちの師匠と会う事になると思う…。」



ロロはレヴィーからの問いかけに一呼吸置いて答えた。



「かっ…覚悟は……出来てる…です!そっ…それに……おっ…お師匠様を…止めるのは…私の役目……です…。」


「そっか…。」



そう言ったロロの瞳は、目の前の事から背けず覚悟に満ちた瞳をしていた。

そしてロロのその瞳を見たレヴィーにもその覚悟が伝わると二人は互いに頷き、地下へと続く階段を降り始めた。



地下へと続く階段を降りる道中レヴィーとロロの二人は会話をする事も無く、ただただ続く階段を互いの手を握り合い『一人じゃない』事を実感しながら一歩一歩降りて行った。



……


………


…………


そして地下へと続く階段を降り終わるとその場所は上の階と同じで牢獄となっていたが、上の階に比べて中央には円形のスペースが設けられており、その円形のスペースを囲むように牢屋が並べられ、その牢屋の中には上の階と同じく年齢問わず誘拐された人達の姿があった。そしてその牢屋の前には黒いフードに身を包んだ謎の人物達の姿があり、黒いフードに身を包んだ謎の人物達はレヴィーとロロが姿を現しても警戒するどころか見向きもせず、その場に立ちすくんでいた。


二人は黒いフードに身を包んだ謎の人物達に警戒しつつ牢獄の中へ足を踏み入れると、上の階に囚われている人達とこの階に囚われている人達との”ある違い”に気付く。

それは上の階で囚われている人と違って、牢屋の中で横たわっている訳でもうめき声を発する事も無く、牢屋の隅で身を寄せ合いながら”何か”に怯えている様子だった。


その光景に目を奪われていると、この牢獄の入り口の反対側の方からロロにとって聞き覚えのある声と”何か”を引きずる音が聞こえて来た。



「二人を待っていたわよぉ〜。」


『!?』



レヴィーとロロは同時に反応しその声の方へと目線を送ると、そこにはロロの師匠であるコルアの姿、そしてコルアによって痛めつけられ意識を失っているマーガレットの姿があった。



「お姉ちゃん!!!」


「………」



レヴィーはマーガレットに向けて必死に問いかけるのも、その声が届く事は無く反応が返ってくる事は無かった。コルアは引きずっていたマーガレットをその場に雑に置くと、レヴィーとロロに向けてニヤリと笑みを見せた。

コルアのあまりにも卑劣な態度にレヴィーの怒りは頂点に達し、今にもその怒りの感情が爆発する寸前だった。



「お姉ちゃんに一体何をしたの!!」


「ふふふ〜。可愛らしい顔をしてそんな怒った顔もできるのね〜。気に入ったわ〜。」



コルアはレヴィーの話を聞いていないのか、それともわざと反応をしないのかは分からないが、その問いには答えずに興奮じみたか表情でレヴィーの顔を見ていた。

何を話してもダメだ…。レヴィーがそう思い怒りを爆発させようとした時、コルアの今の姿を身兼ねたロロが静かに言葉を発した。



「…で……と…する……です…?」


「ん〜?」


「なっ…何で……」


「相変わらず声が小さいわね〜…。何か言いたい事があるならもっとハッキリ喋りなさいよ!!!昔からボソボソボソボソと…。ロロのそういうところ、本当に嫌いだったわ!!!」



コルアのその言葉がロロの心に突き刺さり、その小さな身体が小さく震え始めロロの瞳から涙が頬を伝い握っていたレヴィーの手にこぼれ落ちた。

自分を育て、信頼し尊敬していた人物からの酷い言われようにロロの心は砕けてしまいそうになったが、握っていたレヴィーの手から感じる温もりと『友達』と言ってくれたレヴィー言葉がその砕けそうになった心をそっと繋ぎ止めた。


そしてロロはこぼれ落ちる涙を拭い堪えると、レヴィーの手を強く握りしめコルアに向けてこう言った。



「なっ…何でこんな酷い事をするんですかお師匠様!!!わっ…私は信用していたです!尊敬していたです!!本当のお姉ちゃんと思っていたです!!!」



自分の気持ちをコルアにぶつけているロロの表情は怒りと悲しみが入り混じり、堪えていた涙で溢れかえっていた。


現実を受け止めたくない…。

まだどこかで優しいコルアが居るはず…。

きっとこれは何かの間違い…。


その考えれば考えるほど、心が真実から目を背け心が砕けそうになってしまう。

それでも心が砕け壊れないのは、自分の事を”友達”と言ってくれたレヴィーが隣に居てくれる。そして、コルアとしっかりと向き合うと心に決めた自分がいたから…。


だからロロは心が壊れずに強くいれた。



「へぇ〜。言うようになったじゃないロロ…。倉庫でお仕置きした時はずっと泣き喚いていただけだったのに…。」



コルアは上を見上げため息をつくと、先ほどまで興奮じみた表情を一転さえ冷酷な顔つきに変えるとロロの質問に答えた。



「何でこんな酷い事をする…だったかしら? それは、これが本来の私の姿だからよ!!それにこの際だから話さしてもらうけど…ロロ、あんたの両親を殺したのは私よ。」


「!?」


「その時の記憶を消しているから、あんたは何も覚えていないでしょうけどね…。私達、神聖教団にとってあんたの両親は邪魔な存在だったの。」


「そっ…そんな……。わっ…私の両親は病で……」


「そんなの嘘に決まってるじゃない!!それは私が書き換えた記憶…あんたを信じ込ませる為のね。あんたの両親が住む屋敷に襲撃した時、事前に収集していた情報には存在しないあんたの存在があった…。」



コルアは再び上を見上げ髪をかき上げ、今度は冷酷な表情から一転し狂気に満ちた笑顔を見せるとロロに向けて真実を告げた。



「ロロ…。あんたはね、”転生者”とこの世界の住人の間に生まれ子供…”異種人間ハイブリット・ホムンクルス”なんだよ。」



コルアから告げられた衝撃な事実と共に、牢獄の外で白騎士が放った”白騎士の(ホワイトナイツ・オブ)爆裂聖剣撃・エクスプロージョン”の爆撃音が牢獄内に響き渡ったのだった。

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