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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
68/126

#68〜麻導薬〜

牢獄へたどり着いたレヴィーとロロの前に広がっていたのは、年齢問わず牢屋に監禁されている人達の姿だった。



「これって…」



レヴィーは目の前にある光景を見てこの場所が、ハルトやローレンが話していた”神聖教団が身の安全を保証されている場所”、そしてこの場所にローレンが探しているエレナが囚われているのだと直ぐに理解した。

二人は周囲を警戒しつつ牢獄の中に足を踏み入れ囚われている人達の元へと向かうも、牢屋の中に囚われている人達はレヴィーとロロの姿が見えても何も反応を見せる事も無く、顔は青ざめ身体から力が抜けてうめき声を発しながら地面に横たわっていた。

それに二人が居る牢屋の周辺には警備をしている人の姿は無く、横たわっている人のうめき声だけが響き渡っておりレヴィーとロロはその異様な光景に身体中に悪寒が走った。



「こっ…こんな事を…するなんて……酷い…です……。」



ロロは牢屋の中に囚われている人達の症状を見てある事が脳裏を過った…。

レヴィーは握っているロロの小さな手から、怒りと悲しみを合わせたように力強くもどこか悲しみで震えているのを感じた。



「ロロち…?」



ロロはレヴィーの方を向き『私は大丈夫』と意味を込めて震えながらも小さく頷くと、”輝く心(シャイニングハート)”を自分とレヴィーに施し、身体の中にある恐怖を吐き出すように深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、握っているレヴィーの手を先程とは違う強さと優しさで握るとレヴィーの方を向きこう言った。



「たっ…助ける…です!!」


「うん!」



そう言うとロロはその小さな手に魔法陣を展開させると解除魔法を唱えた。



「”解錠アンロック”」



ロロが唱えた魔法”解錠アンロック”によって牢屋の施錠が解除されると、レヴィーとロロは牢屋の中へと入り倒れている人の元へと駆け寄り呼び掛けた。



「だっ…大丈夫……です…!?」


「私達の声聞こえますか!?」


「………」



倒れている人へ何度か呼びかけてみても倒れている人達から返答が返ってくる事は無く、目を見開き何処か遠くを見ながらうめき声を発し続けていた。



「やっ…やっぱりこれは……。」


「何か分かったの?ロロち?」


「はっ…はい……です…。」



信じたくは無かったがロロは倒れている人の症状を観察しその症状の原因と、”何をされた”のかを理解した。それは決して許される事では無い…。たとえそれを行ったのが自分の師匠であるコルアだったとしても…。



「こっ…この人達がこうなった…のは……。わっ…私のお師匠様…の作った…”麻導薬”…のせい…だと思う…です。」


「”麻導薬”?」


「はっ…はい……です。」



ロロの話によると牢屋の中で倒れている人達には、ロロの師匠であるコルアが作った”麻導薬”が投与されている可能性があるという。この”麻導薬”はコルアが熱心に研究していた物の一つだったとか…。決められた一定量を投与すれば鎮痛剤の代わりに使用されたり、配合する成分を変えれば一時的にアドレナリンが活性化され、肉体の増強に活用できるのだとコルアはロロに熱弁していたらしい。しかし、その使用方法を間違えれば人に対して害になり、致死量を投与すれば最悪の場合自我が崩壊し、廃人と化してしまうのだとロロはレヴィーに説明した。



「じゃ…じゃあ…この人達はどうなるのロロち?」


「こっ…このまま放置した状態……が続けば…そっ……その…。」


「そんな…。」


「でっ…でも!あっ……諦めない…です!!」



ロロはそう言うと自分の上着の内ポケットの中から透き通った緑色の薬液が入った小瓶を取り出すと、倒れている人の口元へと持って行き薬液を数滴、口の中へと流した。



「ロロち、それってさっきロロちに飲ませたやつ…だよね?」


「そっ…そう…です。わっ…私が作った…回復ポーション……です。」


「えっ!?その回復ポーションをロロちが!?」


「はっ…はい……です。以前…ローレン様が負傷…した時にも…使ったやつ…です。これで少しは回復…したら…いいんです…けど…。」



ロロが作った回復のポーションを数滴飲ませてばらくすると青ざめていた顔に生色が戻り、先程まで発していたうめき声が止み見開いていた目も、まるで何かから解放されたようにそっと目を閉じた。



「ロロ…ち!?」


「たっ…たぶん……最悪の事態は…回避できた…かも…です。」



二人は症状が回復した事に希望を見出すと、同じ牢屋で囚われていた人達にも小瓶に入った回復ポーションを数滴飲ませた。

そしてしばらくすると、その人達も最初に回復ポーションを飲ませた人と同じように次第に症状が回復して行った。



「んっ……」



”麻導薬”の症状が改善した事に二人が安堵していると、最初に回復ポーションを飲ませた一人の女性が意識を取り戻した。



「大丈夫ですか!?気分は…?」


「貴女達は…ぼっ…冒険…者?それに……ここは一体…?」



どうやらロロが作った回復ポーションのおかげでこの女性は意識を取り戻し、その他の人達も次々と目を覚まして行った。それからレヴィーとロロは目を覚ました人達に現在の状況と自分達がどういった状況にあったのかを説明した。



「そんな事が……。そんな物を身体に投与されて…私達…大丈夫なんでしょうか!?」



怯えてしまうのも無理も無い。

どうやら囚われていた人達に話を聞いてみたところ、この人達はある日突然誘拐され、誘拐された時から今目覚めるまでの記憶が一切無いという。記憶が無い間に得体の知れない物を身体の中に投与され、ロロが飲ませた回復のポーションで目覚めたとしても不安が残ってしまうのは当然の事だ。



「げっ…現状……症状は回復…してるので…今の所は…大丈夫…だと思う…です。後は…けっ……経過観察を……見て…です。」


「そっ…そうですか…。それならよかった…。」



経過観察を見て最終的な判断をするとしても、囚われていた人達はロロのその言葉を聞いて安堵の表情を浮かべていた。



「良かったねロロち!!」


「はっ…はい……です!!」


「後は残りの人達をどうするか…だよね…。お姉ちゃんの事もあるし…。ロロちが作った回復のポーションは残り幾つあるの?」



ロロは自分の上着のポケットを確認すると、予備で持っていた回復のポーションは残り二つだった。



「のっ…残り二つ……です…。」


「二つ…かぁ……。」


「どっ…どうします……です?」


「ん〜・・・・。」



レヴィーは脳内をフル回転させ今の自分達に出来る最大限の事を考えた…。



「ロロち、この人達は通常の回復魔法でも回復する事は出来そう?」


「えっ…えと……。じょ…上級魔法なら…たぶんかも……です。」


「そっか…。」


「まっ…”麻導薬”は……おっ…お師匠様が開発したやつ…なので……。まっ…魔法耐性……とか付けていたら…分からない…です…。」



もし”麻導薬”に魔法耐性が付いていれば回復魔法を施したところで、完全に回復…とまではいかない。そうなれば”麻導薬”を投与された人達を救うにはロロが作ったこの回復のポーションが必須になる。



「ロロち、ロロちのポーションはまた作る事は出来る?」


「すっ…直ぐには…難しい……です…。けど…ざっ…材料があれば…です…!」


「なら大丈夫だね!!」


「はっ…はい…です!?」



レヴィーは上級魔法を使用すれば”麻導薬”を投与された人達を治療する事が出来る可能性がある事と、万が一、魔法耐性が備わっていた場合でも完全とまではいかなくともある程度の回復を見込む事ができ、材料があればロロがまたポーションを作成する事が出来ると聞いてある作戦を思い付いた。



「ロロち!良い作戦を思い付いた!!」


「さっ…作戦……です?」


「うん!!」



レヴィーの思いついた作戦というのは、コルアに連れ去られたマーガレットとエレナも囚われていたこの人達と同様に”麻導薬”を投与された可能性もある…。なのでロロが持っているポーションの一つは後々の事を考えて残しておき、残り一つのポーションで回復出来る人達を回復させ意識が回復した事を確認すると、回復した人達に助けを呼びに行ってもらう。そして上級魔法または、治癒魔法である程度の段階まで回復させ現段階で出来る処置を施し、もし完全に回復する事が出来なかった場合は、後でロロにポーションを作成してもらい作ってもらったポーションで治療する…。というものだった。



「どうかな!この作戦!!」


「いっ…良いと思う…です!!」



それからレヴィーとロロは目覚めた人達にこの作戦の事を伝えて了承を得ると、ロロが作ったポーションで他の囚われている人達を回復出来るだけ回復させ、意識が戻ったのを確認し先の人達と同じようにこの作戦の事を説明して助けを呼んでくる事を任せると、レヴィーとロロの二人はマーガレットとエレナを救出すべく牢獄の奥へと進んで行った。



============



<時を同じくして牢獄内にて>



「何でロロさんにあんな酷い事をしたんですかっ!!!」


「ふふふっ。だってあの子ったら私の言う事を聞かなかったんですもの〜。それはお仕置きが必要でしょ〜?」


「だからってあんな状態までする事はないじゃないですか!!」



私は心の中に溜まっていた怒りをコルアさんへとぶつけた。



「そんな怒るとシワが増えちゃうわよ〜?可愛い顔してるんだからそんな怖い顔しないの〜。それに死ななかったでしょ?ちゃ〜んと死なないように私手加減したんだから〜。偉い偉い〜。」


「貴女って人は…。」



私はコルアさんが何を言っているのかが分からなかった…。

ロロさんが死ななかったからいいと…?死なないように手加減したから偉い…?どれだけ思考を巡らせても私にはコルアさんの考えが理解出来なかった。



「あら?どうしたのマーガレットちゃ〜ん?」


「………。」


「急に黙り込んじゃったら寂しいじゃな〜い。お楽しみはこれからなんだからぁ!!!」



その言葉と同時に、コルアさんは身体が動かせない無謀な私の身体に、これでもかというくらい力強い蹴りを何度も何度も入れた。楽しむように何度も何度も…。



「うっ………。うぅ…。」


「はぁ〜。やっぱり可愛い女の子を痛ぶるのは最高に気持ちいわ〜」


「っ……。」


「ロロは引っ込み思案な性格でしょ〜?だから泣き叫ぶ声も小さくてね〜・・・。それに比べてマーガレットちゃんは良い声で叫ぶから・・・興奮しちゃうわ〜。」



コルアさんは完全に常軌を逸している…。

人を痛ぶって興奮するなんて…。完全に異常だ…。ロロさんはこれをどれだけの時間耐えたのだろうか………。ダメだ…。身体中を何度も蹴られたせいで意識が朦朧として来た…。

このままじゃ意識が…。


必死に意識を保とうとしていると、私を痛ぶっているコルアさんに教団のメンバーらしき人物がコルアさんに耳打ちで何かを伝えていた。

そしてそれを聞き終えたコルアさんはニヤリと笑みを浮かべると、興奮じみた表情で私の耳元に口を近づけて耳元でこう囁いた。



「マーガレットちゃんの可愛い可愛いお友達が…貴女を助けにこっちに向かってるって…。楽しみだわ〜。」



私はコルアさんのその言葉を最後に意識が遠のいて行った…。

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