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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
66/126

#66〜少女達の決意〜

(どうしよう…。ロロちが…お姉ちゃんが連れてかれちゃう……。レヴィーがロロちとお姉ちゃんを助けなきゃ…。)



レヴィーは必死に身体を動かそうとするもレヴィーのその小さな身体は、まるで”動くな”と暗示をかけられたかのようにピクリと動かす事が出来ずにいた。



「ロロ…ち…。お姉…ちゃん……。」



ロロの師匠で神聖教団のメンバーでもあるコルアに地下倉庫の奥へと引きずられて行くマーガレットの姿は、暗闇の中へと消えて行き辺りは静寂に包まれ、その場には瀕死の状態で倒れ込んでいるロロと身体を動かす事が出来ず立ちすくんでいるレヴィーだけが残された。



(動いて…!今動かないと…!!ロロちとお姉ちゃんを助ける事が…。)



動けと思えば思う程レヴィーの中で焦りが積もって行き心が絶望という感情に侵食されようとしていた時だった。目の前で瀕死の状態で倒れ込んでいるロロの身体がピクリと動くと、ロロは瀕死の状態で這いずりながらレヴィーの元へと向かい辛うじて動かす事が出来る右手をレヴィーの足へと触れた。



「シャ…イニング……ハート…。」



弱々しく掠れた声でロロはそう唱えると、先程までピクリとも動かなかった事が嘘だったかのように解放され自由に動けるようになると、レヴィーは自分の足元で倒れ込んでいるロロに駆け寄り身体を支えるように起こした。



「ロロち!!ロロち!!!」


「っ…の……にっ………。」



ロロはレヴィーの腕の中で必死に何かを訴えかけようとしていた。

それに気付いたレヴィーはロロの口元に耳を近づけると、弱々しく枯れ果てたロロの声に耳を傾けた。



「うわっ…ぎ……の……内…ポケット………です…。」


「わっ…分かった!!」



レヴィーは急いでロロの上着の内ポケットの中を探すと、内ポケットの中から透き通った緑色の液体が入った小瓶を見付けた。

その透き通った緑色の液体を見たレヴィーはその液体が回復の薬液だと気付くと、小瓶の蓋を開け瀕死状態のロロの口元へと持って行き、数回に分けてゆっくり飲ませた。



「んっ……。んっ…。」



その小さな小瓶に入っていた薬液を無事に飲み終わると、ロロの身体中にあった傷跡や痛め付けられた後が瞬時に癒え出血も治ると、青ざめていたロロの表情も次第に元に戻りロロはレヴィーの腕の中で目を覚ました。



「ロロち!!ロロち!!!」


「んっ…。レヴィー……さん。」


「良かった…。ロロちが助かって……。生きてて…。」



レヴィーはロロが無事に目を覚まし事に少し安堵すると瞳から涙がこぼれ落ち、その涙がロロの頬へと落ちた。ロロは自分を抱き抱え涙しているレヴィーに、”ありがとう”と”もう大丈夫だよ”という意味を込めてレヴィーの頬に優しく手を添えて撫でると、レヴィーの腕の中から起き上がった。



「たっ…助けてくれて……あっ…ありがとう……です。」


「うぅん…。レヴィーは何も出来てないよ…。何も…。」


「レヴィー…さん…?」



レヴィーは肝心な時に身体が動かなくなってしまったせいで、直ぐにロロを助けられなかった事と、マーガレットが地下倉庫の奥に連れ去られてしまって行く姿をただ見ている事しか出来なかった自分に対して自責の念に駆られていた。



「レヴィー…ロロちが血を流して倒れている姿を見て…怖くなっちゃったんだ…。ロロちが死んでしまったんじゃないかって…。それから急に身体が動かなくなって…。そしたら今度はお姉ちゃんがロロちの師匠に何かされて倒れちゃって…。」


「………。」


「助けなきゃって思っても身体が全然動いてくれなくて…。そしたらロロちがレヴィーのところに来て”輝く心(シャイニングハート)”をレヴィーに施してくれたの…。だからレヴィーは何もしてない。ロロちが力を貸してくれなかったら…レヴィーはたぶん今もここに立ったまま何も出来てないと思う…。」



ロロはレヴィーの話を最後まで真剣に聞くと、自責の念に駆られているレヴィーの手をそっと優しく握りこう言った。



「そっ…そんな事無い!!…です。レヴィーさん…達が来なかったら……。私…今頃どうなってたか…分からない……です。だから……」



ロロは次の言葉を口にするのが恥ずかしのか言葉を詰まらせ下を俯いた。

そしてロロは自分の気持ちをレヴィーに伝えると意を決し、身体を左右に揺らし頬を赤くしながらその思いをレヴィーへと伝えた。



「だっ…だから……。とっ…友達が……助けに…来てくれて……嬉しかった…です…。な…なので……自分を…責め…ないで下さい……です…。」


「ロロち…。」



ロロが意を決して伝えたその想いを聞いたレヴィーは、自分の心の中にあった自責の念が次第に浄化されて行き暖かくなって行くのを感じた。そしてレヴィーはロロ本人から『友達』と言われた事が何よりも嬉しかった。



「ありがとう…ロロち。」


「いっ…いえ…です。」



互いに気持ちが通じ合ったレヴィーとロロの二人からは自然と笑みが溢れた。

そして、ロロに救われたレヴィーはある決心を固めていた。それはロロの師匠であるコルアに地下倉庫の奥へと揺れさられたマーガレットを救出するという事だった。

レヴィーは心を奮い立たせ立ち上がると、ロロの方を向いた。



「ロロち…?」


「はっ…はい!…です。」


「レヴィー…もう逃げないって決めた!!お姉ちゃんを助けに行く!! だからーーー」


「わっ!私も行くです!!一緒助ける!です!!」



レヴィーが次の言葉を口にしようとした瞬間、ロロも自分の心を奮い立たせ自分も一緒にマーガレットの事を助けるとレヴィーへ伝えた。

ロロと出会って間もないが、レヴィーは今までに無いロロの気迫さに少し驚いた様子を見せるも、ロロのその気持ちを笑顔で受け入れるとレヴィーはロロに手を差し伸べてこう言った。



「一緒にお姉ちゃんを助けよう!ロロち!!」


「はい!です!!」



ロロはレヴィーから差し伸べられてその手を取り起き上がると、二人はマーガレットが連れ去られた地下倉庫の奥へと歩き出したのだった。



============


<時を同じくして地下倉庫内の奥にて>



「んっ………。」



徐々に意識が戻り、目を開けて周囲を見渡してみるも視界がまだボヤけているせいで自分が何処にいるのかが分からない…。それにどうやら身体も痺れているのか全く動かす事ができない…。

確か私は…。ボヤけた視界が徐々に戻ると同時に今の状況に至るまでの記憶も蘇って来た。私はレヴィーと一緒にロロさんの帰りを待っていたが、日が落ちてもロロさんが宿に戻って来ないのが心配で、レヴィーと一緒にロロの師匠が経営しているお店、”パナケイア”へと向かいロロの師匠であるコルアさんに会って…。



「っ…!!」



そこから先の事を思い出すと怒りが込み上げて来ると同時に、自分が油断して隙を見せてしまい今のような状況になってしまった事に不甲斐なさを感じてしまっていた。



「ロロさん…レヴィー……」



あの時…少しではあるがロロさんに回復魔法を施す事は出来たけれど…。完全どころか傷を癒す事も出来なかった。あの状態が続いてしまったらロロさんは…。

それにレヴィーは、ロロさんのあの酷い状態を見てショックを受けたせいであの場から動く事が出来なくなっていた…。何とかしないと……。


そうこう考えていると、視界は完全に回復したものの身体は以前動かせないまま。

しかし、今思い返せば私はコルアさんに毒薬を盛られたはずでは…?だとすれば意識が戻るどころか、あれだけの即効性を有している毒なら私は今頃死んでいるはず…。まさか毒では無かった?それとも解毒剤を…?考えれば考える程きりが無い…。


私はその事を一旦考えるのを止めて、今自分が何処にいるのかを確認する事にした。

私は倒れたままの状態で怪しまれないよう視線だけを動かし、見える範囲で周囲を警戒をしなが辺りを見渡す事にした。



「まさか…。」



周囲を見渡し、私は自分自身が今何処にいるのかを直ぐに理解した。

私が今いるこの場所は”牢屋”…。そして私が居るこの牢屋の前には黒いフードを被った謎の人物達を数名確認する事が出来た。さらに私が居るこの牢屋以外にも同じ牢屋が幾つも存在し、その中には年齢問わず数名の人達が囚われている。


間違い無い…この場所はローレンさんが言っていた牢獄のような場所だ…。まさかハルト様達が向かった冒険者協会では無く、ロロさんの師匠で神聖教団のメンバーであるコルアさんのお店の地下にあったなんて…。そしてこの場所にローレンさんが探しているエレナさんが何処かに…。


そう確信した時、頭の中に聞き覚えの無い声が流れ込んできた。



『きっ…まっ……すか?』


「!?」



流れ込んできたその声は途切れ途切れでしか聞き取る事が出来ずにいた。

もしかするとこの声の主は…。私は途切れ途切れで頭の中に流れ込んでくるその声に集中し耳を傾けた。



『聞こえ…ますか?? もし聞こえるなら…頭の中で会話を…念話するイメージで私の声に反応して下さい…。』



頭の中で会話…。

私はその声の主の言ったように、頭の中で会話…念話するイメージでその声に反応して見せた。



『聞こえます…。私の声は届いていますでしょうか…?』


『はい!聞こえています!!良かった…念話が通じて…。』



どうやら私の声がこの声の主に無事に届き念話をする事に成功したようだ。

その声の主も無事に念話が出来た事に安堵すると私との念話を続けた。



『貴女はヴァルキリー…いや、マーガレットさんですね?』


『どうして私の名を!?』



私がヴァルキリーという事は限られた者しか知らないはず…。

それにハルト様に付けてもらった名前まで…。私はその声の主の正体を確かめる為にもこの声の主に訪ねる事にした。



『貴女は…一体……?』


『紹介が遅れてしまって申し訳ありません。私の名は”エレナ”。ハイブリットエルフと呼ばれている者です…。』


『!?』



その声の主の正体…。

それは神聖教団暗躍部隊『影』に拐われローレンさんが探していた人物エレナさんだった…。

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