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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
58/126

#58〜作戦〜

それからローレンさんは光の中に包まれた後の事について話をしてくれた。

ローレンさんの胸元に付けているブローチは、過去の記憶の世界でエレナさんの母親であるファナさんから受け取った物らしく、そのブローチにはファナさんの魔力が込められておりローレンさん曰く、ファナさんが千里眼のスキルで予知した未来の光景をこのブローチを通して自身に見せてくれたと推測している。


ローレンさんが見た光景から得た情報は、まずローレンさん達を襲撃しエレナさんを拐った襲撃者達は”神聖教団暗躍部隊『(シャドー)』”と名乗っている事、次にローレンさんに致命傷を負わせた人物は影を自由に行き来出来る能力を有している事、そしてエレナさんは、襲撃者曰く身の安全を保証されている場所にある牢獄のような場所で他に誘拐された人達と一緒に監禁されているという事だ。



「神聖教団暗躍部隊『影』…ですか…。」


「はい…。その名の通り影を自由に行き来して、瞬時に相手の背後を狙う事の出来る厄介な相手でございます。」



ローレンさんの話しでは他の教団のメンバーがゲートを使って移動したのに対して、ローレンさんを襲った襲撃者はゲートを使わずに影の中を行き来して牢獄のある場所まで移動したと言っていた…。

エレナさんの母親であるファナさんの持っているスキル千里眼のように、これも一種の特別なスキルの持ち主…。あるいは僕と同じで”影”を操る事の出来る能力を持った転生者…という事も考えられる。


転生者同士はお互いの存在を近くに感じる事が出来る特性を持っていると神様は言っていたが、どうやらその襲撃者はエレナさんを監禁したのを確認すると、何処か別の場所へと向かったらしく今はそれを確かめる方法は無い…。いずれにせよその襲撃者とはどこかでぶつかる事は間違い無い。その時が来れば転生者かどうかも分かるはずだ。



「襲撃者の言った言葉から、安全を保障されている場所というのが私達の今居るこの商業都市イスタリアムという事は間違い無いのですが…。その場所というのは一体どこなのでしょうか…。私の見た限り、エレナ様や他の方達が監禁されている場所はかなり厳重な作りになっていました。それに何かあった時には”あいつら”に報告を…と……。」


「その襲撃者が言っていた”あいつら”というのは教団のメンバー…あるいは教団に協力している者の事だろう。そして”何かあれば”という言葉から察するに、もし何か問題が発生した場合でも直ぐに報告が出来る場所に”その教団のメンバーか協力者が近くに居る”という可能性が高いだろうな。」



黒騎士さんの推測がもし仮に正しかったとすると、僕達が思ってる以上に神聖教団がこの商業都市イスタリアム内に潜伏し溶け込んでいるという事になる。



「そしてこの都市で身の安全が保障され、誰にも怪しまれない場所といえば1つしかない…。」


「冒険者協会…でございますね…。」



黒騎士さんはローレンさんのその一言に深く頷いた。

まさか黒騎士さんの言っていた通り、教団の魔の手が冒険者協会にまで及んでいたとは…。

そうなるとこの商業都市イスタリアムに安全な場所というのは存在しないのかもしれない。



「まさか冒険者協会全体が教団とグル…という可能性はありませんよね?」


「冒険者協会全体が教団とグル…という可能性は少ないだろう。さっきローレンが話してくれた事と今ある情報を踏まえてだが…、おそらく冒険者協会が教団の手に落ちたのは、誘拐された人達を捜索に出た冒険者と騎士団数名が背中にメッセージを刻まれて帰還した辺りが私は怪しいと思う。それ以降の進展が無い事を考えると、その時点で教団に情報操作されている可能性が高いだろう。」


「ではどうすれば良いのでしょうか?このままではエレナ様を救出するどころか、冒険者協会内部を捜査しようにも逆に私達が怪しまれてしまうのでは無いでしょうか?」


「確かにマーガレットの言う通り、冒険者協会内部には騎士団の兵士が日夜問わずに警護していますし…。変に探ろうとしても逆に怪しまれてしまいますね…。」



完全に八方塞がりだ…。

教団の目がどこまで行き届いているのかも分からない上に、下手な行動を起こしてしまえば逆に僕達が捕まってしまう可能性もある。どうしたものか…。

どうやって冒険者協会内部を調べるか頭を悩まして考えていると、黒騎士さんが僕の肩にそっと手を乗せこう言った。



「ハルト、君の力を使う時だ。」


「えっ?」



……


………


…………



「…っという訳だ。」


「ハルト様がそんな能力を持っていたとは…。これなら何も怪しまれずに冒険者協会内を捜査する事が出来ますね。」


「流石ハルト様です!!」


「おにーたん、すごぉ〜い!!」


「はははっ…。」



黒騎士さんの言う”僕の力を使う時”というのは、僕が持つ能力”クリエイティブ”の事だ。そして黒騎士さんが考えた作戦は、まず僕の能力でイスタリアム騎士団の兵士が身に付けているプレートアーマーの鎧をクリエイティブし、それを僕とローレンさんが身に付け冒険者協会内部に潜入する。っというものだった。


黒騎士さんは僕やローレンさんとは違いその大きな肉体では、イスタリアム騎士団の鎧を身に付けたところで怪しまれてしまう。そしてイスタリアム騎士団の兵士には見た感じ男性しかいないので、マーガレットとレヴィーが鎧を身につけたところで直ぐに怪しまれてしまう。以上の点から僕とローレンさんが冒険者協会内部の潜入に抜擢され、牢獄の内部を見たローレンさんが一緒ならば捜査もスムーズに行える。


そして黒騎士さんは何かあった時の為に冒険者協会付近で待機し、マーガレットとレヴィーは宿でロロちゃんと一緒に待機する。とうい作戦だ。

まさか自分の能力を活かす時が来るとは…。しかしこれで何も怪しまれずに冒険者協会内部に潜入する事は可能だ。たぶん。



「分かりました。その作戦で行きましょう!」


「よし。作戦決行は警備が昼間よりも手薄になる夜を狙う事にしよう。マーガレットとレヴィーは先に宿に戻って待機をしていてくれ。私とハルトとローレンは一度冒険者協会の方へ足を運んで作戦結構前に中の様子の下見をしてくる。」


「分かりました。では私とレヴィーは先に宿の方へ戻っておきます。」


「宿まで気を付けてね、マーガレット、レヴィー。」


「はい!ハルト様!!」


「先に帰って待っとくね!おにーたん!!」



僕と黒騎士さんとローレンさんは、マーガレットとレヴィーを見送ると冒険者協会へと足を運んだ。

冒険者協会に着くと、協会内は相変わらずイスタリアム騎士団の兵士が厳重に警備しており、その他にも冒険者達がクエストの受注等で賑わいを見せていた。



「相変わらず冒険者協会内はイスタリアム騎士団の兵士がしっかりと警備していますね…。」


「あぁ…。それとハルト、周囲を見渡したくなる気持ちは分かるが、今は出来るだけ平然を装っておくんだ。下手な行動をすると怪しまれるぞ。」


「すっ…すみません…。気を付けます。」


「うむ。」



この中に神聖教団のメンバー、または教団の協力者がいると思うと僕は動揺と緊張を隠せずにいた…。黒騎士さんの言う通り下手に目立ってしまっては今後の作戦に支障をきたしてしまう可能性がある。僕は自分の右手の手のひらに『人』という字を書いてそれを飲み込んで気持ちを落ち着かせる事にした。



「ハルト様、一体何をされているのですか?」


「あぁ…これは僕の元居た世界で緊張をほぐす時に行う…”おまじない”みたいなものです。」


「ほぅ…。それは良い事を教えて頂きました。今度試してみます。」



ローレンさんはそういうと僕に軽く頭を下げた。

それにしても冒険者教会の1階だけでもそこそこな人数の兵士が配備されている。

これが2階、3階、4階となればなるほど警備も厳重になるはずだ…。

僕達はクエストの受注書が貼られたクエストボードを見るフリをして、兵士の行動パターンやどこに配備されているのかを出来るだけ確認し頭の中へと叩き込んだ。



「よし…とりあえずは大丈夫だろう。」


「はい。私も大丈夫です。」



この2人は短時間の間に何か兵士に関する情報を収集したのだろうか…。

何かあった時はローレンさんを頼る事にしよう。



「では私達も一旦宿に戻るとしよう。」


「はい。」



そして僕達は冒険者協会を後にしてペルマールの宿に戻ったのだった。

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