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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
55/126

#55〜教団の影〜

宿屋を後にしてロロの師匠が経営しているお店”パナケイア”の前へと着いた。

まだ早朝という事もあってお店の扉には店が閉まっている事を表す札が下げられていた。

ロロはお店の扉を2回ノックした後そのまま店の中に入ると、師匠の名前を呼んだ。



「コ…コルア様……来ました…です!!」



どうやらロロの師匠の名前は”コルア”という名の人物のようだ。

そしてロロの呼びかけに店の奥から『は〜い』と女性の声で返事が聞こえると、奥から1人の女性が現れた。その女性はおっとりとした雰囲気の持ち主で、茶色の髪の毛を腰辺りまで伸ばし毛先にかけて巻き髪となっており、黒と紫を基調としたゆるいドレスを着ていた。



「おはようございますロロ、来るのを待っていましたよ〜。それと……こちらの方は…どなたかしら?この地域ではあまり見掛けない顔のようだけれど〜?」


「初めまして、私の名前はローレンと申します。訳あって深手を負って倒れていたところをロロに助けて頂きました。こうして今話せているのもロロが私を治療してくれたおかげなのです。なのでせめてもの恩返しとしてロロが住むパラマ村から、ロロのお師匠様が経営しているこちらのお店まで護衛を兼ねてお供させて頂きました。改めてロロ、助けて頂きありがとうございます。」



私はロロに改めて感謝の気持ちを込めて深く頭を下げその思いを伝えた。



「そんな事が…。深手を受けた傷は大丈夫なのですか…?」


「はい。ロロが懸命に治療してくれたおかげで傷も殆ど完治しております。」


「それなら良かったわ〜。それに昔からの願いが叶って良かったわね、ロロ〜。」



昔からの願いというのは…。

おそらくペルマールの宿屋のマキナ様が言っていた、『誰かの役に立ちたい』という事でしょう。

ロロは師匠であるコルア様からのその言葉に嬉しそうな表情を浮かべ頷いていた。そしてロロの師匠であるコルア様は、嬉しそうな表情を浮かべるロロの頭を優しく撫でると私に自己紹介をしてくれた。



「自己紹介が遅れてしまい申し訳ありません。私の名前は”コルア・アライアス”と申します。この商業都市イスタリアムで、”パナケイア”というこの店のオーナーと薬師として活動をしております。どうかコルアとお呼び下さいな。」


「こちらこそ宜しくお願いしますコルア様、どうか私の事もローレンとお呼び下さい。」


「はい、こちらこそよろしくお願いしますね、ローレンさん。」



それからロロは師匠のコルア様から頼まれていた薬草やポーションなどを背負い袋の中から取り出すと、コルア様へ手渡し納品の手続きをしていた。そして納品の確認が終わると、ロロは最後に小瓶に入った透き通った緑色をしたポーションをコルア様に見せた。



「おっ…お師匠…様、これ……新しい…回復のポーション…です。」


「これは……」



コルア様はロロが作ったその透き通った緑色をしたポーションを、食い入るように見ては目を輝かせ言葉を失っていた。



「こんな透き通った緑色をしたポーションは今まで見た事はありません…。これをロロが1人で…?」


「はっ…はい……です!」


「そうですか…。ちなみにこれの効力は…試したのですか?」


「はっ…はい。ローレン…様が……深い傷を負って…いたので…その時…使った……です。」


「なんと…!!深手を負ったローレンさんの傷を癒すほどの効力が…。私が知る限りこれ程の効力を持ったポーションは、おそらくこの世でロロが作ったこのポーション以外存在しないと思います。よくこれ程の物をお作りになりましたねロロ!!貴女の『誰かの役に立ちたい』というその強い思いを胸に秘めて、日々頑張って来た成果ですよ〜!!私も師匠としてロロが誇らしいです〜!!」


「いっ…いえ……。これもお師匠のおかげ…です。あの時から……感謝している…です。」



どうやらロロとコルア様は良き師弟関係のようだ。

お互いがお互いを尊敬し思い合い、まるで本当の姉妹のように私には見えた。



「2人とも仲がよろしいのですね。」


「はい〜。血は繋がっておりませんが、私はロロの師匠である前にロロのことを本当の妹だと思って接し育てて来ました。そんな大事な妹がこれ程の偉業を成し遂げたのです。喜ばない姉がどこにいますでしょうか!!」



そう言うとコルア様はロロを優しく抱き締め『頑張りましたね』とロロに優しい言葉をかけた。



「おっ…お師匠様……はっ…恥ずかしい……です。」



恥ずかしがっているロロにコルア様が笑みを浮かべ頭を優しく撫でると、

次にコルア様は私を真剣な表情で見ながらロロの作ったそのポーションの事について話しをして来た。



「ローレンさん、ロロが作ったこのポーションの事なんですけれど…。」


「ご心配なさらずとも誰かに口外する事はございません。」


「良かった…。それを聞いて安心しました。ロロが作ったポーションの存在が権力者や誰かの耳に入れば、きっとロロの身に危険が及ぶと思いますの…。最悪の場合はその命を奪ってでもこのポーションを奪う人達も出て来る可能性も…。なのでローレンさんがそう仰ってくれて安心しました。」



『誰にも口外しない』という私のその言葉にコルア様は安堵した表情を見せた。

どうやらコルア様もロロが作ったこのポーションの価値をちゃんと理解しているようだ。

最初はどんな方がロロの師匠か心配していましたが、ここまでロロの事を親身に思ってくれる人なら大丈夫でしょう。これで私もエレナ様の救出に専念出来ます。



「私もそのポーションの効力を自分の身で感じてコルア様と同じ考えに至りました。それもあってパラマ村からコルア様のこのお店まで誰かに襲われないように護衛していたのも同行していた1つの理由でした。それにコルア様も信頼出来るお方のようで、私も安心しました。」


「私もローレンさんがロロの事をそこまで思って行動してくれた事がとても嬉しいです。大事なロロをここまで守って頂いてありがとうございます。」


「いえ、こちらこそです。」



私とコルア様は感謝の気持ちを込めてお互いに礼を交わした。



「それではロロ、私はこれから冒険者協会に行ってハルト様達と合流します。」


「はっ…はい……です!私も…日が暮れる前には…宿に帰ってる…です!」


「分かりました。それではまた後ほど。」



ロロを無事にコルア様の元に届けコルア様が信頼に値する人と判断した私は、

店を後にしてハルト様達がいる冒険者協会へ向かったのだった。



=======


<商業都市 冒険者協会1階フロアにて>



「それにしても”神聖教団暗躍部隊”ってどんな組織なんでしょうね…。黒騎士さんは何か知らないんですか?」


「実際に遭遇した事は無いが噂では耳にした事がある。」


「そうなんですか!?」


「あぁ…。何でも”とある神”を信仰する過激派の組織だとか…。その組織の全貌は明かされていないが密かに暗躍している”裏の組織”だと言われている。」


「裏の組織…ですか。」



こういった場合の”裏の組織”とはかなり厄介な存在である事に間違いない。

自分達の目的遂行の為なら人の命など簡単に消してしまう。そして『我々の目的遂行の為に必要な犠牲だ、何も問題無い。』とか言ってしまうパターンに違いない。



「ローレンの話しを聞く限り、今回の一件は何本もの糸が深く絡み合っているに違い無い。エルフの住む”魔法国家ナリアティス”のガルベルト王、そして堕天使サタンが率いる失楽の守護にして”堕炎の守護者ベリアル”の介入と裏の組織である”神聖教団暗躍部隊”による襲撃…。自分達が思っている以上に闇が深いのかもしれないな…。油断するなよハルト。」


「はい!」



そして僕達はまずは受付の方へ向かい”神聖教団暗躍部隊”について何か情報が無いか、受付のマインさんに聞いてみる事にした。



「こんにちはマインさん!」


「あっ!冒険者ハルト様御一行じゃないですか!今日はクエストの受注に来られたんですか?」


「いえ、今日は情報が欲しくて、それでマインさんが何か知っていないかと思って今日は伺いました。」


「情報…ですか……。何か事件の香りが…!!」



相変わらずどこでスイッチが入るのか分からない人だ…。

僕は気を取り直してエレナさんの事は伏せつつ、マインさんに”神聖教団暗躍部隊”について何か知ってる情報が無いかを尋ねみた。



「”神聖教団暗躍部隊”…ですか……。」



”神聖教団暗躍部隊”という組織の名前を聞いた瞬間、さっきまで興奮気味だったマインさんの表情が一変して少し怯えた表情へと変わり発する声を弱々しくなっていた。そしてマインさんは周囲を見渡すと僕達を2階の応接室へと案内した。



「突然場所を変更して申し訳ありません…。」


「いえ…。僕達は別に構いませんけど……。それよりマインさん大丈夫ですか?少し身体が震えているような……。」


「実はその……。」



何かに怯えているのか上手く言葉を発せないマインさんに、

マーガレットがマインさんに向けて両手をかざして魔法を施した。



「輝くシャイニング・ハート



マーガレットが施した魔法”輝くシャイニング・ハート”がマインさんを優しく包み込むと、先程までの震えも収まり怯えたいた表情も柔らかくなり落ち着きを取り戻していた。



「これでもう大丈夫ですよ。」


「有難うございます…。」



そして落ち着きを取り戻したマインさんは僕達を別室に案内した理由を話してくれた。



「実は数ヶ月前からこの地域周辺で誘拐事件が多発していて、私達冒険者協会は誘拐犯の確保と誘拐された方達の救出の任務を発注したのですが…その任務を受注した冒険者達は誰1人として帰って来る事は無かったんです。この事態を重くみた冒険者協会の会長とイスタリアム騎士団の上層部は、連携して捜査に乗り出しましたが…結果は悲惨なものとなりました…。そして奇跡的に複数の冒険者と騎士団の兵士が帰還すると、彼らの背中に『これ以上付き纏うとこの都市を滅ぼす』というメッセージと『我々神聖教団はいつでもお前達を見張っている』という2つのメッセージが刻まれていたんです…。」


「つまり監視されている可能性があるから別室に案内した…という事ですね?」


「はい…。」



もし”神聖教団”について探りを入れようとする者と何らかの関わりを持っている事がバレてしまったら、今度は自分の命が危険にさらされるかもしれない。だからマインさんはさっきまで怯えていたのか…。



「そういった事情があったとは知らず、怖い気持ちにさせてしまってすみません…。」


「いえ…。私の方こそ…これくらいの情報しか提供できず申し訳ありません…。」


「そんな、マインさんが謝る事じゃ無いですよ。」



これ以上マインさんを危険な目に合わせるわけにはいかない…。

それにマインさんの話によればこの地域周辺で誘拐事件が多発しているという事は、”神聖教団”はこの近くに潜伏している可能性が高い。ここから先は自分達で手がかりを探して行く方がよさそうだ…。下手に誰かに情報を聞けばその人に危険が及ぶ可能性もある。慎重に事を進めなければ…。

僕達はマインさんにお詫びと勇気を持って情報を提供してくれた事に感謝の気持ちを伝えると、応接室を後にして1階のフロアへと戻ったのだった。

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