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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
50/126

#50〜初デートⅡ〜

それから僕達は雑貨屋を後にして、この中央エリアに数ある出店で1番人気の”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”を食べる為に出店の行列に並んでいた。

マーガレットはプレゼントした雫型のネックレスをかなり気に入ってくれたようで、出店までの道中や行列に並んでいる時も雫型のネックレスを手にとって見ては笑みを浮かべている。



「そんなに喜んでもらえて嬉しいよ。」


「ハルト様から貰ったプレゼントです!嬉しいに決まっているじゃないですか!!」



マーガレットのその言葉に僕の心が『ポカポカ』と温かくなるのを感じた。

それから僕とマーガレットは自分達の番が来るまでノルズの街に居た頃のように2人で会話を楽しんだ。



「それにしてもここの出店は凄い人気なんですね!凄い行列です!」


「1番の人気店なんだって!それに僕が昼間に見かけた時はこれ以上の行列だったよ。」


「そんなにですか?」


「うん!」



徐々に自分たちの番が近ずくにつれ、食欲を掻き立てるその悪魔的な匂いに僕達は『グウゥゥッ』とお腹の音を何度も鳴らしその時が来るのを待ち焦がれた。次第に僕達はその悪魔的な匂いに魅了され、互いに”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”の事で頭が一杯になっていた。


そして空腹が限界に達しようとしたその時…ついに僕達の番が回って来たのだった。



「いらっしゃい!!家は”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”一本で勝負してんだぁ!!これを食っちまったら…もう〜癖になって後戻り出来ないぜ…?」



そう言って出迎えてくれたのはスキンヘッドに活かしたサングラスを掛けたこの出店のオーナーだった。

本来ならその一癖もありそうなキャラにツッコミを入れたいところだが、今の僕とマーガレットにはそんな余裕は無かった。



『覚悟は出来てます!!”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”を2つ下さい!!』



互いに空腹が限界に達している僕達は見事なシンクロ率でオーナーに覚悟が出来ている事を伝え、それを見たオーナーはニヤリと笑みを浮かべ『あいよっ!!』と返事をし調理を開始した。

そして待つこと数分…出来立ての”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”をオーナーから無事に受け取ると、食欲を掻き立てる悪魔的な香りと香ばしい肉の匂いに僕達は『ゴクリ』と唾を飲み込んだ。そして更にオーナーは僕達2人にシュワシュワと炭酸のような泡を弾かせ、琥珀色の飲み物が注がれたジョッキを2つ手渡して来た。



「へい!これは俺からのサービスだ!!それを豪快に頬張った後にキンキンに冷えたこの”ビア”で豪快に流し込めば…そこはもう…天国さ!!!」



見た感じこれは元の世界で言うところのビールだ。

オーナーの言う通りこれを頬張った後にこれを豪快に流し込めば最高の祝福を味わえるに違い無い…。

僕達はオーナーからビアを受け取り近くのベンチへと腰掛けるとはやる気持ちを一旦深呼吸をして落ち着かせ、満を辞して”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”を口の中へと頬張った…。



『!!!!!!』



口の中に入れた瞬間に香辛料の香りが口の中でフワッと広がり、カリッと焼けた肉を噛むと溢れんばかりの肉汁が身体全身に染み渡って行くのを感じた。そのあまりの美味しさに僕とマーガレットは悶絶して言葉も出なかった…。


そして次にオーナーからサービスで頂いたキンキンに冷えた”ビア”を口の中へと豪快に流し込む。



『ゴク…ゴク……ゴク………。』



”ビア”はまさにビールそのもので濃厚な味わいで少し苦味があるものの、その濃厚な味わいと苦味が”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”の美味しさを更に引き立てていた。

マーガレットも予想以上に美味しかったようで、肉を頬張っては豪華な飲みっぷりを見せていた。



「ハルト様!これ凄く美味しいですね!!それにこの”ビア”という飲み物も癖になりそうです!!」



僕とマーガレットはリミッターが外れたように”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”ペロリとたいらげ最後にキンキンに冷えたビアで締めた。



「マーガレット…」


「何でしょう…ハルト様?」


「美味しかったね…。」


「はい…物凄く美味しかったです…。」



オーナーの言っていた通り、僕達はまるで自分達が天国にいるかのような幸せな気持ちになっていた。

そのままベンチに深く腰掛け深い藍色の夜空を見上げるとそこには無数の星々が宝石のような輝きを放っており、どこか僕達を優しく見守ってくれているように感じた。

マーガレットはデートを楽しんでくれただろうか?僕は星を眺めながらそんな事を考えていると隣に座っていたマーガレットが話し掛けて来た。



「ハルト様、少し歩きませんか?」


「うん、そうだね。少し歩こうか。」



僕とマーガレットはベンチから腰を上げジョッキを出店のオーナーに返却しゆっくりと歩き始めた。


朝、昼、夜と稼働し続ける商業都市イスタリアム。その姿は時間が進む毎に姿を変えて今では都市全体がさっき見上げた深い藍色の夜空に輝く無数の星々のように僕達を明るく照らしおり、少しお酒も入ったせいか僕の目には少しだけ幻想的な世界へと変わっていた。

そのまま僕達は拳一つ分のもどかしい距離を保ちながら中央エリアをぶらっと周り、気が付けば宿泊エリアへと戻っていた。


宿泊エリアはライトアップされた街並みや催し物に訪れた観光客達で相変わらず賑わいを見せていた。

その中でも賑わいを見せていたのは観光客向けの高級リゾートホテル”イスリーム”だった。どうやらこの高級リゾートホテル”イスリーム”の最上階には展望台があるらしく商業都市イスタリアムを一望できるらしい。それに1000ガルム払えば宿泊していない人でも展望台へ行く事ができるようだ。


せっかくのデートだ…マーガレットを展望台に誘ってみよう。

このまま宿屋に帰ってしまうのもどこか名残惜しさも感じてしまう。そして何よりもう少しだけマーガレットと一緒に居たいと僕はそう思った。


緊張し自分の鼓動が高鳴って行くのを感じながら、僕はマーガレットに声を掛けた。



「マーガレット…せっかくだし展望台に行ってみない?」



マーガレットは少しだけ驚いた表情を見せ、少しだけ照れ臭そうにしながら展望台への誘いに『OK』の意味を込めて頷いたのだった。


そして僕とマーガレットは高級リゾートホテル”イスリーム”の中へと入り、2人分の2000ガルムを支払うと受付の人に展望台に向かう転移魔法陣まで案内された。そのまま魔法陣の上に乗ると一瞬にして展望台へと転移し目の前には宝石のように輝く商業都市イスタリアムの夜景が広がっており、訪れた観光客やカップル達の姿が多く見受けられ目の前に広がる夜景を各々眺めていた。




「綺麗…。」



イスタリアムの夜景を眺めるマーガレットの横顔はお酒も入ったせいか頬が少し赤くなっており、オッドアイの瞳が夜景の光に照らされて宝石のように輝き僕はその姿に心を奪われ見惚れてしまっていた。

そして気付くと僕とマーガレットの間にあった拳一つ分の距離は今は無く、手を伸ばせば触れられる距離に変わっていた。



「ハルト様…。」


「ん?」


「昨日はすみませんでした…。それに昼間もハルト様にあんな態度をとってしまって……。」



そう言うとマーガレットは僕に深く頭を下げた。



「そんな謝らないでマーガレット!!昨日の一件は僕が油断してたのが1番の原因な訳で…。だからね?マーガレットが謝る必要は無いし何も悪く無いから!」


「ですが…。」


「大丈夫!気にしてないから!!だから顔を上げてよ、マーガレット!」



それを聞いて渋々ではあるがマーガレットは顔を上げて僕の方を見るが、その一件が自分の中で余程気にしていたのかマーガレットは時折視線を逸らしていた。そしてしばらくしてマーガレットは下を俯きながら自分の気持ちを僕に話してくれた。



「私…レヴィーにハルト様を取られてしまうんじゃ無いかと思ったんです…。レヴィーは私と違って小さくて可愛いですし…それに甘えん坊じゃないですか…。だから私…嫉妬していたんだと思います…。」


「マーガレット…。」


「私の方が…ハルト様の事を知っているのに…とか……。私の方が長い時間一緒に過ごしたのに…とか。そんな事ばかり思ってしまって…。そんな思う自分がどんどん嫌になってしまって…それで今度はハルト様に八つ当たりしてしまいました…。」


「そうだったんだ。」


「…。」



マーガレットは自分の気持ちを伝えると、顔を拭いながら僕に顔を見られないように夜景の方へと視線を戻した。こういった時、僕はどうする事が正解なのか分からない。ましてや正解なんて無いのかもしれない。でも今は……。



「!?」



今はこうする事が自分の中で精一杯の答えだと思い僕は横に居るマーガレットの左手を優しく握った。

できるだけ優しく包み込むようにそっと大事に。



「僕はそういったところも含めてマーガレットの事が好きだよ。」


「ハルト様…。」


「だからマーガレットにはもっと自分の感情や気持ちを、今僕に言ってくれたみたいにもっと表に出して欲しいと思うんだ。僕に何が出来るかは分からないけど…それでも僕はマーガレットの力になりたいと思うし支えたいと思う。」



今の僕に出来る事と言ったらたかが知れているかもしない…。

でも…。それでも僕はマーガレットの気持ちに寄り添って一緒に歩んで行きたいと思う。この先どんな事が待ち受けていたとしても。一緒に。



「本当に優しいですね…。」


「そうかな?」


「そうです…。ズルいですよまったく。」



そう言うとマーガレットは握っている僕の右手を優しく握り返すと、今度は視線を逸さず僕の目を見てこう告げた。



「なら私…もっとワガママになっちゃいますけど覚悟はいいですか?ハルト様!」


「お手柔らかにね。」


「レヴィーにも負けませんから!!」



マーガレットは何か気持ちが吹っ切れたのか僕にそう告げると、少し背伸びをして僕に優しく口づけをしたのだった。



=========



<商業都市イスタリアム領土内の街道にて>



ロロの案内でパラマ村を出発してから半日程で目的地の”商業都市イスタリアム”の前に到着し、辺りは既に日が沈み始めていた。商業都市イスタリアムには冒険者や商人、それに観光客などが多く訪れており外からでも分かるくらい賑わいを見せていた。



「つ…着きました……です!」


「ありがとうございますロロ。貴女のおかげで無事にたどり着く事が出来ました。」


「いっ…いえ……そんな…です。」



私はロロにここまで案内してくれた事に”感謝”の気持ちを込めて深く頭を下げた。

そして再び商業都市を訪れる人々を観察し私はある疑問を抱いた。それは訪れる人達の中に人間以外の種族を見掛けないという事。これ程大きな都市であれば他種族との交流があっても不思議ではないと思いますが…。



「ロロ、1つ伺ってもよろしいでしょうか?」


「はっ…はい……です。」


「この商業都市には私のようなエルフや、亜人といった人間とは違う種族の方を見掛けた事はありますか?」


「いっ…いえ……私は無い…です。」


「そうですか。教えて頂きありがとうございます。」



何度かこの都市を訪れているロロでさえ見掛けないという事は自分がエルフであるという事は伏せておいた方が良さそうですね…。

私は今後のことも考慮して精霊魔法”容姿(チェンジ)変化(シェイプ)”でハイエルフの特徴でもある白銀の髪と瞳をロロと同じ黒に、そして少し尖った耳を人間の容姿に合わせて変化させた。



「ロッ…ローレン様の……髪…と耳が……変わった…です!!」


「商業都市を訪れた人の中に人間以外の種族を見掛けなかったものですから。念には念を入れて姿を変えました。どうですロロ?今の私は人間に見えるでしょうか?」


「はっ…はい……です!!見える…です!」


「それは良かったです。私がエルフだという事はーーー」


「はい!言わない…です!!」


「ありがとうございます。では行きましょうか。」



そして私とロロは商業都市イスタリアムへと入っていったのだった。

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