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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
49/126

#49〜初デートⅠ〜

見事マーガレットをデートに誘う事に成功した僕は心の中で静かにガッツポーズをすると、後ろで見守っていてくれた黒騎士さんに向けて小さくグッドポーズをして成功したことを知らせると、僕達は今夜止まる宿を探す為に宿泊エリアへと向かった。


宿泊エリアは観光客向けの高級リゾートホテルから、冒険者や商人などイスタリアムに立ち寄ったり商売をしに来た人向けの用のリーズナブルなものと様々で僕達はその種類の多さに驚いてしまった。本音を言えば今自分の目の前にある高級リゾートホテルに宿泊してリッチな気分を少しは味わってみたいという気持ちもなくは無いが…。

それに僕達は今日冒険者の登録したばかりでランクは1番下の”ブロンズ”だ…下手に目立ってしまうと面倒に巻き込まれる可能性もあるかもしれない。見栄を張りたいという気持ちを抑え今回はリゾートホテルへの宿泊は見送るとしよう。



「リゾートホテルはまた今度という事で…。」


「賢明な判断だ。」



それから僕達は宿泊エリアを少し散策して中央から少し離れた場所に”ペルマールの宿屋”という場所を見付けた。外観はアニメやゲームなどでよく見かける木造を基調とした作りとなっておりノスタルジックな雰囲気を感じさせる宿屋で、個人的にこういった宿屋で出てくるご飯は家庭的で美味しいイメージがる。

僕はマーガレットと黒騎士さんに今夜お世話になる宿を”ペルマールの宿屋”にする事を伝え2人から同意を得ると、宿屋の中へと入った。



「ごめんくださぁ〜い。」


「はぁ〜い!いらっしゃいませぇ〜。」



中に入るとこの宿の看板娘だろうか?歳はマーガレットと同じくらい1人の少女が出迎えてくれた。

僕は宿泊の受付を行う為に受付のカウンターへと足を運ぶと、その看板娘は僕達が首にかけている冒険者の証でもある”ブロンズのタグ”に一瞬チラリと視線を送った。



「この宿に今日泊まりたいんですけど、部屋は空いてますか?人数は4人なんですけど…。」


「かしこまりました!冒険者4名様ですね!部屋は…どうなされますか?」



部屋…か。もしみんな同じ部屋にした場合、色々と大変な事態になってしまう事は予想出来てしまう…。

もし次に何かアクシデントが発生してしまったら今度こそマーガレットとレヴィーの間に亀裂が入ってしまう可能性もあるかもしれない…。そして自分の命を死守するという意味でも部屋は男女別々にする事にした。



「2部屋でお願いします。」



僕は横目でバレないようにマーガレットの方を見るとマーガレットは少し残念そうな表情をしていた。



「かしこまりました。では宿泊費を前払いでお願いします。」


「分かりました。」



”ペルマールの宿屋”では食事付きの一泊の費用が5000ガルムで無しの場合は4500ガルムのようだ。その他にもいくつかのプランがあるらしいが、僕達は食事付きのプランを選び4人分の20000ガルムを支払うと部屋がある二階へと案してもらった。案内された部屋は隣同士で、僕は自分の背中で天使のような寝顔を見せて深い眠りに付いているレヴィーをマーガレット達の部屋のベットにゆっくりと降ろした。


レヴィーをベットへ降ろした後、部屋の外にふと目をやると先程までこの商業都市を茜色に染めていた夕日も今ではその半分が水平線の彼方へと沈んでおり、辺り一面が暮色(ぼしょく)に包まれていた。



「じゃあマーガレット…日が落ちたら宿屋の外で待ち合わせって事で大丈夫かな?」


「分かりました…。では後ほど……。」


「うん…。じゃあまた後で…。」



お互いに高鳴る鼓動を相手に悟られないようにデートの待ち合わせの時間を決めると、僕はレヴィーを起さないようゆっくりとマーガレット達の部屋を後にし自分の部屋へと戻った。

高鳴る鼓動を感じながら部屋に戻ると、先に部屋に入っていた黒騎士さんが七色に輝く大剣の手入れをしていた。



「緊張しているのか?」


「はい…。こうやって2人で出掛けるのは久々だから余計に……。日が落ちたら宿屋の前で待ち合わせってことになってます。」


「そうか…。まぁ今はベットにでも横になって気持ちを少しでも落ち着かせておくといい。直前になってガチガチに緊張した姿を相手に見せてしまうと相手も萎縮してしまうぞ?」


「ですね…。少しだけベットに横になって気持ちを落ち着かせておこうと思います…。」



僕は黒騎士さんの言う通りベットで少しだけ横になり心を落ち着かせ、日が落ちるのを待ったのだった。





それからしばらくすると外は完全に日が落ちて深い藍色をした空がどこまでも広がっていた。

ベットでしばらく横になっていたおかげなのか今は不思議と緊張はしておらず、僕はマーガレットとのデートに向けて身支度を済ませ待ち合わせの場所に向かおうとしていた。



「それじゃあ黒騎士さん…行って来ます!」


「あぁ、レヴィーの事は心配しないで久々に2人で楽しんでくるといい。」



黒騎士さんはそう言うと僕に向けてグッドポーズをして見せた。

僕は『頑張って来ます!』の意味を込めて黒騎士さんにグッドポーズを返すと部屋を後にして待ち合わせ場所へと向かった。

待ち合わせ場所である宿屋の前に到着するとマーガレットの姿はまだ無かった。黒騎士さんの言った通り、この商業都市イスタリアムは夜も昼も関係無く稼働しており、都市全体がライトアップされていて昼間とはまた違った雰囲気を醸し出していた。



「おっ…お待たせしました…。」



昼間とは違う光景に浸っていると後ろからマーガレットが声をかけて来た。

僕は声を掛けられた瞬間『ドキッ』と心が弾けそうになってしまったが、何とか平常心を保ちつつマーガレットの方を振り向いた。



「いや、全然待ってなっ………。」



後ろを振り向くと、いつもとは違う雰囲気のマーガレットの姿がそこにはあった。

いつもは金色の髪を後ろの方で1本に編み込んでいるのだが、今回は結ばずにそのままストレートで流して片方の耳にかけていた。そして何より僕が1番驚いたのはマーガレットが化粧をしているという事だ。いつもはナチュラルな雰囲気なのに対して今回は化粧をしているせいか、いつものあどけなさは無く大人びた雰囲気のマーガレットに僕は見惚れてしまった。



「へっ…変でしょうか……?」


「全然!全然変じゃ無い!!むしろ……凄く…綺麗だよ…。」


「!!」



その言葉を聞いてマーガレットは頬を桜色に染めて恥ずかしそうに下を俯いた。

そしてマーガレットの恥ずかしそうにしている姿を見て、僕は自分の言った言葉が脳裏に浮び急に恥ずかしさが込み上げて来てしまい思わず視線を逸らしてしまった。


しばらく沈黙が続いた後、マーガレットが緊張しているせいか少し声を震わせながら口を開いた。



「化粧……ルミナさんが私に教えてくれたんです…。『大切な人と過ごす特別な日には、可愛くお粧しして相手をびっくりさせるのが女の使命だ!』って…。あまり慣れていなくて上手く出来ているか分からないですけど…ハルト様にそう言って頂いて凄く嬉しいです。」



マーガレットはそう言うと、少し恥ずかしそうにしながらも僕の方を見て満面の笑みを見せた。

僕はマーガレットの満面な笑みを見た瞬間、心の中で何かが芽吹いた事を感じたのだった。




「それじゃあ行きましょうか!ハルト様!!」


「うん!」



そうして僕とマーガレットの初デートが幕を開けたのだった。


僕達はまず最初に宿泊エリアの中心地へと向かった。

この宿泊エリアはこの都市を訪れた観光客や冒険者達などが集まる事もあって、商業都市の中央エリアに続いて賑わいを見せているエリアとなっている。そして夜になると高級リゾートホテルを中心にその周辺の街並みがライトアップされたり、ちょっとした催し物なども行われるなど訪れた観光客や冒険者達を中心に大いに盛り上がりを見せていた。



「うわぁ〜!綺麗〜!!」



訪れた時とは違う宿泊エリアの雰囲気と、ライトアップされた街並みや催し物をマーガレットは目をキラキラと輝かせながら見ていた。その姿は年相応の女の子といった感じで、何か面白い物を発見したり驚いた事があればその都度マーガレットは僕に笑顔を見せてくれた。それから僕達はライトアップされた街並みや催し物などを堪能した後、次に”バー丼”を食べた商業都市の中央エリアへと向かった。


中央エリアに着くと出店や露店などを中心に活気付いていたが、皆、お酒も入っているのか昼間に比べて陽気な賑わいを見せていた。そして僕がこの中央エリアにマーガレットを連れて来たのにはある理由があった。それは昼間に食べる事が出来なかった出店1番人気の”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”をマーガレットと一緒に食べようと思ったからだ。


時間的にもそろそろお腹が減って来る頃だと思いマーガレットの方へ視線を送ると、マーガレットは露店の雑貨屋に並んでいる色とりどりに輝いているネックレスやブローチに釘付けになっていた。どうやらこの雑貨屋が気になっているようだ。



「せっかくだし見に行ってみようか。」


「いいのですかハルト様?」


「もちろん!」



マーガレットが気になっている雑貨屋に立ち寄って中を覗いてみると、そこにはネックレスやブローチの他にも指輪やピアスといったアクセサリーが豊富に品揃えされていた。マーガレットはその中でもネックレスコーナーが気になっているらしく食い入るように見ていた。



「何か気になる物でもあった?」


「あっ、いえ…綺麗だなと思いまして…。」



マーガレットの目線の先を辿って見てみると、そこにはマーガレットのオッドアイの瞳と同じ青と赤の色をした雫型のネックレスがあった。しかも奇跡とも言うべきかマーガレットの瞳と同じで”左側が青”で”右側が赤色”をしており、ネクレスの中心に進むにつれて色が混ざり合い神秘的な色合いとなっていた。



「すみません。これを試しに試着してみても大丈夫ですか?」


「ハルト様…?」



マーガレットは僕のその言葉に少し驚いた表情を見せていた。

そして雑貨屋の店員さんからネックレスを試着する許可を貰うと、雫型のネックレスを手に取りマーガレットの首元に手を回して雫型のネックレスをマーガレットの首へと付けた。



「うん。凄く似合ってるよマーガレット。」



マーガレットはネックレスを試着した自分の姿を近くに置いてあった鏡で確認すると、雫型のネックレスを手に取りそのまま見入っていた。



「とても…綺麗です。」



どうやらこの雫型のネックレスを気に入ってくれたようだ。



「すみません。このネックレスを下さい。」


「えっ?そんな!悪いですよハルト様!!」


「これは初デートの記念に僕からマーガレットへのプレゼント!だから悪いだなんて思わないで?」


「ハルト様…。」



マーガレットはそのネックレスを両手で優しく大事そうに握りしめるとそのまま胸元へと持っていき、瞳を少し潤ませながら『ありがとうございます』と感謝の気持ちを込めた満面の笑みを僕に見せたのだった。

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