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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
48/126

#48〜満たされる心〜

「はい!これで全員の冒険者登録が完了しました!!皆さんいろんな意味でお疲れ様です。」



受付嬢のマインさんに茶化されながらも無事に冒険者の登録を完了させた僕達は、受け取った”ブロンズのタグ”をそれぞれ首にかける事で自分たちが冒険者になったのだと実感した。

それにしても意外だたのが黒騎士さんが冒険者では無いという事だ。黒騎士さんは冒険者協会の存在や冒険者になった場合のメリットやランクなどについても詳しく知っており、今回冒険者に登録する事を勧めて来たという事もあって僕はてっきり冒険者に登録しているものだと勝手に思っていた。


それにマーガレットの話しによれば、ベルゼブブの分身体やミノタウロスと戦闘を行った時も互角、またはそれ以上の実力をみせたらしい…。身に纏っている漆黒の鎧や背中に背負っている七色に輝く大剣といい、それだけの実力と装備を有しているとなればダイヤモンド級…いやアレキサンドライト級の実力を持った冒険者だったとしても不思議では無い。



「それにしても黒騎士さんが冒険者じゃ無いのが意外でした。」


「そうか?」


「はい。冒険者について色々と詳しいっていうのもありますけど、その漆黒の鎧に背中に背負っている七色の大剣を見たらそうなのかなって…。」


「まぁ確かに、たまに冒険者に間違われてしまう事もあるな。」



やはり。僕と同じ事を思った人が他にもいるようだ。



「私は昔とある王国でーー」


「おに〜たぁ〜ん!!お腹すいたぁ〜!!」



黒騎士さんが自身の過去について何か話そうとした時、お腹を空かせたレヴィーの声でその会話が遮られ僕の元へと駆け寄って来ると上目遣いで『ご飯〜食べたい〜』っとおねだりをして来た。



「こら!レヴィー!!」



自由奔放なレヴィーをマーガレットが注意しようとした時、マーガレットのお腹からも『グゥ〜』っとお腹を空かせた大きな音が鳴り響いた。



「こっ!これは…そのぉ〜……。」



まさか自分のお腹の音が鳴るとは思っていなかったマーガレットは、慌てて自分のお腹を抑えるとまるで茹で上がったタコのように顔を真っ赤にして視線を下に逸らした。



「どうやら2人とも限界のようだな。」


「みたいですね。」


「この話はまた後日、時間がある時にでもするとしよう。」


「分かりました!」



黒騎士さんの過去の話しや”精霊の手鏡像”で自分のステータスやその他の事について色々知りたいところだがそれはまた後日にするとして、今はお腹を空かせたマーガレットとレヴィーに美味しいご飯を食べさせてあげるとしよう。



「じゃあ冒険者の登録も終わった事だし、みんなでご飯を食べに行こうか!!」



余程お腹が空いていたのか、マーガレットとレヴィーはその言葉に目をキラキラと輝かせながら2人で手を取り合い喜んでいた。そして僕達はお美味しいご飯を求めて冒険者協会を後にしたのだった。



美味しいご飯を求めこの商業都市を散策して分かった事が1つある。それはこの商業都市がいくつかのエリアに分けられているという事だ。冒険者協会付近には武器や装備品などのショップや鍛冶屋など冒険者に因んだエリアとなっており、その他のエリアにはその国や地域だけでしか手に入らない特産品などを販売しているエリアや、観光客や冒険者などこの都市に訪れた人達向けの宿泊エリアなど様々な場所があるようだ。


そして僕達は今、この商業都市の中央エリアに居る。

この商業都市の入り口から今僕達が居るこの中央エリアは、観光客など訪れた人達をターゲットにしているようで珍しい雑貨などのショップや露店が賑わいを見せており、その中でも一際活気に満ち溢れているのが食事を提供する数多のレストランやその場で頼んで出来立てを味わえる屋台などが大勢の人達で賑わっていた。



「うわぁ〜。美味しそうなご飯の匂いがいっぱいするよお姉ちゃ〜ん。」


「本当ですねぇ〜。」



マーガレットとレヴィーは、周囲から漂い食欲を掻き立てる悪魔的な匂いを鼻にして空腹が限界に達してしまったのかその場に2人して棒立ちの状態で静止してしまった。



「ハルト、このままでは2人が危ないぞ!」


「かなりまずい状態ですね…。僕はとりあえず何か買って来るので黒騎士さんは2人をお願いします!」


「分かった!!」



僕は空腹が限界に達し棒立ちの状態で静止している2人を黒騎士さんに託すと、香ばしい匂いが漂う出店の方へと足を走らせ到着するとそこは既に大勢の人達で溢れかえっており戦場と化していた。数ある出店の中には長蛇の列が出来ている人気店や、あまりの美味しさに感動してその場で雄叫びを上げている人の姿もあった。



「ヤバすぎる…。」



僕はその光景に圧倒されてしまったが、今にも完全停止してしまいそうなマーガレットとレヴィーの為に心を奮い立たせ覚悟を決めると戦場の中へと足を踏み入れた。

戦場の中へと足を踏み入れて少しだけリサーチしてみた結果、長蛇の列が出来ている”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”が1番の人気らしい。その他にも”グルナ村の伝統料理 具沢山の濃厚チーズスープ”や”バリナフィッシュサンド”など美味しそうな出店が所狭しとあった。

まさかノルズ村で修行をしていた時にマーガレットやジャバルさんに教えてもらった読み書きが、こんなところで役に立つとは思ってみなかった。


本来なら並んででも1番人気の”120パーセント丸ごとモウ牛のスペシャル香辛焼き”を食べたいところだが、今の僕にはそんな時間は無い…。僕は食べたい気持ちを押し殺し2人が共通して好きな肉料理を探し求め足を走らせていると、特徴的な女性の声が耳に入って来た。



「こちら〜〜、イスタリアム産のコッコバードを使用した”バー丼”になりまぁ〜す!!」


「?」


今確か…”丼”と聞こえたような…。

僕は特徴的な声で客引きをしている女性の元へ向かうと、そこにはショートカットで茶色の髪をした女性が立っていた。



「あっ!お客さん!!どうですか?”バー丼”!!とろフワで美味しいですよ!!」


「とろフワ…ですか?」


「はい!とろフワです!!!」



まさかとは思うが…この”バー丼”って…。

僕は脳内に思い浮かんだ”とある料理”を想像し淡い期待を込めて”バー丼”4人分をお持ち帰りで注文した。



「ご注文ありがとうございます!!親方!”バー丼”4人前!!お持ち帰りで入りまぁ〜す!!!」


「あいよぉ〜!!」



親方…?まさかこの世界で”親方”という単語を聞く事になるとは…。

そしてしばらくすると、特徴的な声で客引きをしていた女性が”バー丼”が4人前入った紙袋を手渡して来た。この”バー丼”は1つ500ガルムで僕は4人前の合計2000ガルムを支払うと急いでマーガレットとレヴィーの元へと戻った。



「お待たせしました!!お店が色々とありすぎて迷っちゃって…」


「ご苦労だったなハルト。」



マーガレットとレヴィーは以前その場に立ち尽くしたままだった。

僕は急いで購入した”バー丼”を紙袋から取り出し容器の蓋を開けると、そこには僕の脳内で想像していた通りの料理”親子丼”に似た姿の料理があった。

まさかこの世界に来て日本人なら誰しも一度は口にした事があるであろう”親子丼”をこの世界で食べる事が出来るとは…。


容器から漂う出汁の香りに黄金に輝くフワとろの黄身とコッコバードの肉が程よいバランスで絡み合っており、その下には日本人の主食ともいえる”お米”らしき物が光沢を発していた。まさかこの世界に来て”お米”に似た食べ物に出会えるとは…僕は感動して涙が出そうになったがその感動は後にとっておくとして、今は目の前にいるマーガレットとレヴィーに食べさせるとしよう。

僕は備え付けのスプーンで”バー丼”を掬うと、マーガレットとレヴィーに一口ずつ”バー丼”を口の中へと入れた。



「………!!!」



口の中に”バー丼”を入れた瞬間2人の目には生気が戻り、口の中に入れた”バー丼”を噛み締めるように食べるとゴクリと飲み込んだ。



「こっ…これは……何ですかハルト様!?」


「これは”バー丼”って食べ物らしいよ!!」


「”バー丼”!!」


「おにーたんこれ美味しい!!」


「レヴィーも気に入ってくれたみたいで良かった。」



余程お腹が空いていたのかマーガレットとレヴィーは成長期の高校生のように一心不乱に”バー丼”をガツガツと食べていた。僕は買って来た”バー丼”を黒騎士さんに渡して自分達も食べる事にした。



「いただきます!!」



僕は黄金に輝くフワとろの黄身と肉、そしてその下の方で純白に輝いている白米に似た物をスプーンで掬い上げると口の中へと入れた。



「!!!!」



まさか…これ程の物とは……。僕はあまりの美味しさに言葉を失ってしまった。

口の中に入れた瞬間に出汁が口の中に広がりフワとろの黄身と肉、そして”お米”らしき歯応えをしっかりと感じた。まさに…まさにこれは親子丼だ!!そして”お米”だ!!!まさかこれ程までに”お米”が美味しいと感じる日が来るとは思ってもいなかった。僕あはあまりの嬉しさに目に涙を浮かべながら”バー丼”口の中へと頬張った。



「おぉ!!これは美味しいなハルッ………」



あまりの美味しさに感動して涙している僕を見た黒騎士さんは少し驚いた様子を見せていた。

ちなみに黒騎士さんが食事をする際は、兜の口の部分が脱着可能となっており食事の時は口の部分を取り外して食事をしている。



「はい…美味しいです黒騎士さん…!!」


「そっ…それは良かった…。」



”バー丼”を美味しく食べ終えて心を満たされた僕達はしばらくその余韻に浸った後、今度は4人で他の出店に行って違う物を食べたり露店に並んでいる雑貨を見たりと充実した一日を過ごした。

そして気が付くといつの間にか日も落ちて夕方になっており、レヴィーはたくさん食べてはしゃいだせいか疲れ果てて今は僕の背中で眠っている。



「レヴィーも楽しかったようですね。」


「うん。楽しんでくれて良かったよ。」



いつの間にかマーガレットとも普通に会話が出来るようになり僕は少しホットしていた。

しかし、僕には夜になるまでに達成しなければならないミッションが1つだけ残っていた。それは今夜マーガレットを”デートに誘う”という事だ。元居た世界でもあまり恋愛経験の無い僕にとってデートに誘う事はかなりハードルが高いが…今回は頑張ってこのミッションを達成するしかない…。

僕は後ろで歩いている黒騎士さんを見て合図を送ると、高鳴る自分の鼓動を感じながらマーガレットに話しかけた。



「マッ…マーガレット…」


「何でしょうかハルト様?」


「そのぉ〜…」



ダメだ…。緊張し過ぎて次の言葉が出て来ない…。



「うん?ハルト…様?どうされたのですか?」



くそ…。僕がもっとリア充で恋愛経験が豊富ならこんな緊張をする事も無かったのだろうが…。

少しずつ焦りが自分の中で生まれ始める…。だがここで諦めるわけにはいかない!!



「こっ…」


「こっ…?」



(そうだ!!!伝えるんだマーガレットに!!!)



「今夜…久々に……2人で出掛けない…かな?」


「!?」



その言葉にマーガレットは頬を桜色に赤らめた。

マーガレットは桜色に赤くなった頬を見られたく無いのか両手で頬を隠すと視線を下に向けた。



……


………


…………


…………………



静寂がこの空間を包み込むと同時に自分の鼓動が徐々に高鳴って行くのを感じた。

そしてしばらく沈黙が続いた後、マーガレットは頬を両手で隠しながらも僕の方に視線を戻し小さく頷いたのだった。

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