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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
47/126

#47〜ブロンドの冒険者〜

冒険者協会の中へと入るとそこには多くの冒険者達の他に、プレートアーマの鎧を身に纏った兵士の姿が多く見受けられた。そういえばこのイスタリアムに入ってから街の中でも同じプレートアーマーに身を包んだ兵士達を数名見たような気がする。外は兵士の数よりも冒険者やこの街に訪れた観光客や商人の方が圧倒的に数が多かった為そこまで気にならなかったが…それにしてもこの冒険者協会の中にいる数は少し異常だ。



「黒騎士さん、あの兵士のような人達は何ですか?街の中でも少し見かけたような気もしますけど…」


「あれはこの都市を守っている”イスタリアム騎士団”の兵士だ。」


「”イスタリアム騎士団”…ですか。」



これだけ大きな都市だから騎士団がいるのは分かるが、この数は少し多いような……。それ程までにこの冒険者協会という場所は重要という事なのだろうか?



「まぁ、その辺も含めて冒険者に登録する際に受付の人から色々と説明があるだろう。」



そう言うと黒騎士さんは受付のカウンターの方へと足を運んで行き僕もその後へと続いて行った。

冒険者の受付カウンターは1階の中央にあり、カウンター内には受付嬢が合計で5人居た。

それにしてもカウンター付近には多くの冒険者がクエストを受注していたり達成したクエストの報告とその報償金を受け取りに来る人や、僕達のように冒険者登録に来る人達で賑わっており受付嬢の方も忙しそにしていた。



「おに〜た〜ん!黒騎士ぃ〜!おそぉ〜い!!」


「ごめんね待たせちゃって…」



受付のカウンターには先に入っていたマーガレットとレヴィーの姿があり、先に冒険者登録をしに来た事を受付嬢の方に話しおいてくれたようで僕達が来るまで待っていてくれたみたいだ。



「ハルト様、こちらで冒険者の受付が出来るみたいです。」


「ありがとう、マーガレット。」


「いえ…。」



話してはくれるもののマーガレットとは何処か距離を感じてしまう。

冒険者の登録が終わった後にタイミングを見てデートのお誘いをしなければ…。

断られてしまったらどうしようと不安になってしまうが、今は冒険者の登録をする事に専念するとしよう。



「冒険者の登録に来たパーティーの方達ですね。」


「あっ、はいそうです。」


「初めまして。私は冒険者協会イスタリアム地区で受付を担当しています”マイン・ダルシア”と申します。どうぞ”マイン”とお呼び下さい。」


「初めまして、僕はハルトと申します。そしてパーティーメンバーのマーガレット、レヴィー、黒騎士さんです。」



自己紹介をしパーティーメンバーであるマーガレット達の事を紹介すると、受付のマインさんは僕達の事をまるでアイスを舐め回すかのようにじっくりと観察し始めた。



「ん〜…なるほどなるほど〜。ふむふむ。ほうほう…。そうかそうかぁ〜」



次第に受付嬢のマインさんの鼻息が荒くなり目が輝いていくのを感じる…。

なんだろう…。初対面でこんな事を思ってしまうのも失礼かもしれないが、見た目はふんわりとした雰囲気を醸し出しながらも頼れるお姉さん的な感じかと思っていたが、何やらこの受付嬢のマインさんには触れてはいけない何かがあるのかもしれない。そして………怖い。



「あっ…あのぉ〜。マインさん?」


「あっ!!ごめんなさい、私ったらつい興奮しちゃって………。」



この状況で一体何に興奮をしたんだマインさんは!!その姿はもはや飢えた野獣のような表情をしており、未だにその興奮は抑えきれていないようだ。僕が思う限り興奮する要素なんて1つも無いと思うが…。



「そっ…そうだったんですか…。」



もはやその言葉でしかマインさんに反応する事が出来なかった。



「すっ…すみません。私、冒険者フェチでして…。これから輝きそうな駆け出しの冒険者を見ると興奮してしまうんです。もちろん!現役の冒険者達も好きですよ? でもやっぱ!原石を発見した時の興奮はそれに勝る物があるんです!!」


「はっ…はぁ…。」



世の中には色んなフェチを持っている人が存在し世界は広いという事を僕は知った。

それからマインさんに気を取り直してもらい冒険者の登録をするにあたって色々と説明を受ける事になった。


どうやらこの冒険者協会の中は全部で5階に分けられており、1階には受付と冒険者専用の依頼ボードが備え付けられておりランク別で依頼を確認する事が出来るようだ。その他にも冒険者メンバーで依頼の確認や作戦が立てられるように会議用のテーブルや椅子なども完備されており自由に使用する事が出来るらしい。

僕が知る限りのイメージでは、こういった場所には酒場などもプラスであるようなものだけど…この冒険者協会には無いみたいだ。

続いて2階には会議室や応接室の他に冒険者協会の会長の部屋があるそうだ。個人的なイメージだが、会長という肩書がつく人物はオジキャラの確率が高く無駄な強さを誇っているというイメージがある。今後冒険者として活躍して行けば会う機会もあるかもしれない。


そして3階から5階に関しては冒険者協会では無く、この商業都市イスタリアムとその近郊の安全を守っている”イスタリアム騎士団”の本拠地となっているそうだ。つまりこの場所は”イスタリアム騎士団feat冒険者協会”といった感じで、この場所が王国の城のような外観をしているのもたぶんこれが理由なのだろう。



「簡単ではございますが、以上が冒険者協会イスタリアム地区とイスタリアム騎士団についての大まかな説明になります。それでは続いて冒険者の登録を行いますので、こちらの”映し身のプレート”に1人ずつ手をかざして頂いてもよろしいでしょうか?」


「”映し身のプレート”…?」


「はい。こちらのプレートは特殊な素材で出来ており、手をこのプレートにかざして頂くだけでその方の名前や取得しているスキルや魔法などの情報を読み取って行きます。そしてギルドカードに必要な情報を自動的にプレートに書き込んで行き、それがそのまま自身のギルドカードとなり冒険者の登録は完了となります。」



なるほど…。てっきり書類に個人情報を記入して、他の役場などで各種手続きを終えてようやく冒険者の登録が完了するものと思っていたが…どうやらこのプレートに手をかざすだけで登録は完了らしい。元居た世界でもこういった手続がこれくらい簡単だったらどれだけ楽だった事だろうか…。



「分かりました。では僕から…。」



僕はカウンターに置かれたA4用紙程の大きさをした透明の”映し身プレート”に自分の右手をかざす。

するとかざした右手にプレートが反応しプレート内に魔法陣が展開し光を放ち始める。そしてA4用紙程あった大きさの映し身プレートは、次第に縮小して行き最終的にカード1枚分くらいの大きさになり色も透明からブロンズへと変わっていった。



「はい。これで冒険者の登録は完了となります。登録当初は皆さんブロンズからのスタートとなりますが、依頼をこなして信頼と実績を得ればランクも上がると同時にギルドカードも自身のランクに合わせた色へと変化して行きます。次に自分のステータスを確認したい場合は、こちらのカウンターを正面にして右手奥にある”精霊の手鏡像”の前でギルドカードをかざす事でご確認する事が出来ます。その他にも手鏡像では色々と調べ物など色々な機能もございますので、実際に触れて確認してみて下さい。」


「ありがとうございます。マインさん。」


「いえ、では最後にこれを…。」



マインさんはそう言うと、銅で作られたドッグタグに似た物を僕に渡して来た。



「マインさんこれは?」


「これはギルドカードとは別に自身が冒険者であるという事とランクを示す認識票で別名”タグ”とも呼ばれており、殆どの冒険者はこの”タグ”を首にかけています。そしてこちらのタグもギルドカード同様に、ランクが上がればそのランクと同じ素材で作られた物をお渡ししています。」



つまり、この”タグ”を首にかけていればギルドカードを一々見せなくても自分が冒険者であるという事の証明になり、”タグ”に使用されている素材を見ればその冒険者の実力がわかるというわけか…。



「おにーたん!せっかくだから付けてみたら?」


「うむ。身に付ける事で自分が冒険者である事を実感できるかもしれんぞ。」


「そうですね…。じゃあ、せっかくなので付けてみます。」



僕はマインさんから受け取った”ブロンズのタグ”を自身の首に通して身に付けた。

身に付けてみて少し気恥ずかしかったが、黒騎士さんの言うとおり”タグ”を身に付けた事によって自分が冒険者になったと少しだけ実感した。



「おぉ〜!おにーたんカッコイイ!!お姉ちゃんもそう思うでしょ?」



レヴィーからのパスに少し戸惑いながらもマーガレットは”ブロンズのタグ”を身に付けた僕の姿を見ると、少し頬を赤らめて僕にこう言った。



「はい…。似合っていると思いますし……カッコイイと…思います。」


「あっ…ありがとうマーガレット…。」


「いえ…。」



マーガレットからのまさかの感想に僕の心はドキッと高鳴り、淡い雰囲気が受付カウンター周辺を包み込み今にもトレンディなBGMが流れて出して来そうになった瞬間、何かを悟ったかのように受付嬢のマインさんが唐突に切り出した。



「はぁ〜ん…2人は……そういったご関係なのですね?」


『へっ!?』



僕とマーガレットは、受付嬢のマインさんが唐突に切り出したその言葉に2人して同時に大きな声で驚いてしまい周囲の目を惹きつけ互いに顔を赤くしてしまった。



「お熱い2人のようですねぇ〜。」


『………ッ。』



受付嬢のマインさんに茶化され2人して顔を赤くしていると、今度はそれを見たレヴィーがマーガレットに対抗心を燃やしたのか僕の元へ勢いよく駆けつけて来た。



「もぉ〜!!おにーたんはレヴィーのおにーたんなの!!!」


「お兄さん人気者なんですねぇ〜」


「茶化さないで下さいよマインさぁ〜ん!!!」


「さぁさぁ、気を取り直して残りの3人の方も登録の方をお願いしますね!!」



明らかに1人で楽しんでいる受付嬢のマインさんは、面白いネタを発見したと言わんばかりの表情でマーガレット、レヴィー、黒騎士さんの冒険者登録の手続きを行ったのだった。

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