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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
46/126

#46〜冒険者協会〜

”商業都市イスタリアム”

この街は貿易が盛んで数多の国や街と取引を行っていたり、その他の地域や村などにしかない特産品がこのイスタリアムでは数多く販売されている。元の世界で言うところの大型ショッピングセンターみたいなものだ。なのでここの商業都市イスタリアムは”ヴァラマ帝国の帝都”に次ぐ巨大な都市となっており、観光客やここでしか手に入らない特産品や装備品などを買い求めに来る冒険者や商人達で賑わっていた。



「ここが商業都市イスタリアムですか…。思っていた以上に大きな都市なんですねぇ〜」



マーガレットやジャバルさんから商業都市イスタリアムについて色々と話しを聞いていたが、まさかれ程までに大きな都市だとは思ってもみなかった。周囲を見渡すとジャンル問わず多くの店が通り沿いに出店しており中は賑わっていた。



「ハルト…大丈夫か……?」


「あっ、はい。大丈夫ですよ黒騎士さん。そんなお気になさらないで下さい。」


「そっ…そうか……。それならいいのだが…。」



僕は妹との予期せぬアクシデントをマーガレットに見られてしまい、それに激怒したマーガレットから強烈な往復ビンタを受け危うく天に召されそうになってしまった。そして今度は口こそ聞いてくれるがレヴィーに代わってマーガレットが不機嫌になってしまった。前虎後狼とはまさにこの事である。



「それで、これからの予定はどうするんだ?」


「そうですね…。まずはこの世界の情勢について知りたいと思っています。色々と情報を集めればドライアドさんの件や僕達を襲ったベルゼブブの事について何か分かるかもしれません。それにこのまま野放しにしておけば、レヴィーみたいに良いように利用される人やそれで悲しむ人達も出てくるかもしれません…。僕はこれ以上そんな思いを誰にもしてほしくないんです…。」



そう…。僕は誰にも悲しい思いをしてほしくないのだ。



「そうか…。ならまずは冒険者協会に行って冒険者の登録をするといい。」


「冒険者の登録ですか?」


「うむ。冒険者の登録をすればいろんな恩恵が受けられる。まず冒険者に登録をするとギルドカードを発行してもらえる。このギルドカードは身分書のような物で、これがあれば冒険者協会と提携しているのショップや宿屋で提示する事で割引などを受けれる場合がある。次に冒険者にはランクがあり、登録当初はみんなブロンズから始まり依頼をこなし信頼と実績を得る事でシルバー、ゴールド、サファイア、エメラルド、ルビー、ダイヤモンド、そして………」


「そして…?」


「神に匹敵する程の力を持った者だけ与えられる称号”アレキサンドライト”という最上級のランクがる。帝国騎士や王国騎士、それに名のある冒険者などの実力者でも”ダイヤモンド”止まりといったところだ。そしてこの称号を持つ者は私が知る限りこの世界に6人しかいない。」


「6人だけ…ですか?」


「あぁ…。」



神に匹敵するだけの力を持った者だけに与えられる称号”アレキサンドライト”…まさに英雄の中の英雄というわけか……。そんな力を持った英雄がこの世界に6人…一体どんな人達なのだろう?もし会える機会があれば会ってみたいものだ。



「とまぁ、こんな感じでランクが上がって行くわけだ。そしてランクが上に行けば行くほど報酬の額や得られる情報の信憑性も高くなり色んな面で融通が効くようになるだろう。しかしその分危険なクエストや国からの直接依頼や緊急招集を受ける事もある。」



なるほど…。この世界の冒険者というのもアニメやゲームの世界と同じようなものなのか。

金銭面に関しては困る事は無いと思うが、このまま旅をするよりも冒険者の登録をしてランクを上げながら依頼をこなして行けば信頼と実績を得られるだけでなく、それに見合った恩恵と融通が効きく上にドライアドさんやベルゼブブに関する情報も得られるかもしれないというわけか…。悪く無い考えだ。



「そうですね。黒騎士さんの言う通り冒険者として活動すれば今後の活動にも役に立つかもしれませんし、まずは冒険者協会へ行って冒険者の登録をしましょう。」


「うむ。」



僕は黒騎士さんとこの先の方針を決めると、前の方で手をつないで歩いているマーガレットとレヴィーの元へと向かった。レヴィーは僕が近付くと笑顔で駆け寄り抱きついて来てくれたが、マーガレットは今だに不機嫌で僕と目を合わせてくれなかった。



「2人ともちょっといいかな?」


「どうしたのおにーたん?」


「何でしょう…。」


「今後の事も考えて冒険者協会に行って冒険者の登録をしようと思うんだ。」


「冒険者…ですか?」


「うん。」



僕は黒騎士さんから聞いた内容と今後の方針についてマーガレットとレヴィーに話した。



「確かに今後の事を考えれば冒険者に登録しておけば色々と活用できそうですね…。私はハルト様と黒騎士さんのその方針に賛成です。」


「レヴィーも〜お姉ちゃんに賛成〜!!」


「良かった。なら先に冒険者協会に行って冒険者の登録を済まそうか。」


「分かりました…。」


「は〜い!!」



マーガレットは話こそ聞いてはくれるものの今だに目を合わせてはくれない…。

レヴィーとの一件が予期せぬアクシデントだったとはいえ今回は油断していた僕にも責任がある。それにしても意外だったのがマーガレットがレヴィーに対しては怒ってはいない…かどうかは分からないが、イスタリアムに入ってからはレヴィーが逸れてしまわないように手を握って面倒をよく見てくれている。個人的にはあの一件で2人の中が悪くなってしまうと思っていたが逆に深まったようにも思える…。たぶん。それにレヴィーに関してはマーガレットの事を今では”お姉ちゃん”と呼ぶようになっていた。



「おにーたん!ここお店がたくさんあるよ!!美味しそうな食べ物がいっぱい!!!」



レヴィーは通り沿いにある出店を見ては目をキラキラと輝かせ珍しい食べ物に釘付けになっていた。

ベルゼブブに操られていたとはいえドリュアス森林で見せたあの魔法攻撃による猛攻…そして神器を解放した時に放ったあの技の威力……。今では『おにーたん』と連呼しながら頭をスリスリしたり、珍しい食べ物に目を輝かせている可愛い妹が同じ人物とは信じがたい…。もしや本気で怒らせたらマーガレットよりも恐ろしいのでは…。



「本当に美味しそうな食べ物がたくさんあるね〜。冒険者協会で冒険者の登録が終わったら、みんなで色々と見に行いこうか。」


「うん!!行く〜!!」


「マーガレットも…ね?一緒に行こう?」


「………はい。」


「良かった〜。」



断られると思っていたがマーガレットも一緒に行ってくれるみたいだ。

冒険者の登録が終わったらお詫びに好きな物を好きなだけ食べさせてあげよう。それとマーガレットの大好物の甘味水もあればそれも好きなだけ…。


そして僕達4人はこの商業都市イスタリアムで最初の目的である”冒険者協会”へと向かった。





「ここが冒険者協会…。」



冒険者協会の前に到着した僕はその規模の大きさに圧倒されていた。

アニメやゲームなどでは酒場やそれに似た外観のイメージが強かったが、商業都市イスタリアムにある冒険者協会はまるでどこかの王国の城かと思わせる外観をしていた。



「すごぉ〜い!!大きいねぇ〜おにーたん!!」


「そっ…そうだねレヴィー…。黒騎士さん…ここが本当に冒険者協会なんですか?どう見てもどこかの王国のお城にしか見えないんですけど…」


「まぁ外観に関しては少し派手だとは思うが、ここで間違いないぞ。」



もはや見慣れているのか黒騎士さんは物怖じせず堂々としていた。

自分の中で想像していた物とはあまりにもかけ離れており、圧倒されながらも少し引いてしまっている自分がいた。そんな心境の中ふとマーガレットの方を見てみるとマーガレットはどこか寂しげな表情で冒険者協会を見ていた。



「ここも…昔とは変わってしまったのですね…。私が最後に訪れた時はここまで大きなものではありませんでした…。やはり100年の歳月というのは思っていたよりも大きなものですね…。まるで自分だけ違う世界に来たように感じてしまいます…。」


「マーガレット…。」



自分の知っている物や風景が100年の歳月を経て変わっていれば、たとえ同じ物で同じ場所だったとしても変わりゆく光景を目にしていない本人からすればそれはもう全くの別物だ。マーガレット本人が口にしていないだけで実際はそういった光景をたくさん目にしているのかもしれない…。



「さぁ!早く冒険者の登録をしてハルト様に美味しい物をご馳走してもらわないとです!!行きますよレヴィー!!」


「はぁ〜い!」



心配をかけまいと気丈に振る舞っているマーガレットの姿を見て僕は心が痛んだ。

自分の場合こういった状況はアニメやゲームで馴染み深いからある程度免疫はあるが、マーガレットの場合は自分の居た世界がまるっきり違う世界に変わってしまっているのだ…。少なくとも昔の仲間であるレヴィーと出会えた事が本人にとっても救いだったのではないかと僕は思っている。



「マーガレットの事が心配かハルト?」


「はい…。」


「ならばレヴィーが寝静まった後にでも2人で外に出掛けてみてはどうだ?」


「出掛ける…ですか?」


「あぁ。この商業都市は昼も夜も関係なく稼働していて夜景も綺麗だと聞く。久々に2人で出かけて彼女の気持ちに寄り添ってみるのもいいんじゃないか?」


「黒騎士さん…。」


黒騎士さんの言う通りノルズの街に居た時と比べて、ここ最近は2人だけで過ごす時間やゆっくりと会話する事も殆ど無かった。レヴィーだけでなくマーガレットにも色々と我慢させていたのかもしれないと思うと僕は心の中で深く反省した。



「今日…レヴィーが寝静まったらマーガレットを誘って外に出掛けてこようと思います!」


「あぁ。レヴィーの事は私に任せてデートを楽しんで来ると良い。」



黒騎士さんはそう言うと僕に向けて眩しいくらいのグッドポーズをして見せた。



「プッ……」


「うん?どうしたんだハルト?」



まさか黒騎士さんがグッドポーズをするとは予想だにせず、僕は思わず吹き出してしまい目に涙を浮かべ心の底から笑った。



「ハハハハハハハッ!!」


「なぜ…笑っているのだ?」


「いやっ…黒騎士さんがまさかグッドポーズをするとは思ってもみなくて…ッッ……意外な一面を見てしまったものですからッッ……」


「私だってグッドポーズくらいするぞ?」


「そっ…そうですか……ッッ…。すっ…すみませんッッ…。」



黒騎士さんは僕が笑っている姿を不思議そうに眺めており、僕はこれ以上笑い声が出ないように必死に笑いを堪えているが黒騎士さんがグッドポーズした場面が頭から離れずにた。



「ハルトは笑いのツボが浅いのかもしれんな…。」


「かもしれません…ッッ…。」



あまりに笑いを堪えている僕の姿に黒騎士さんは少し呆れていた。



「さて、ここで油を売っていても仕方ないし冒険者の登録を済ましに行くぞ。」


「はっ…はい!そうしましょうッッ!!」



そして僕と黒騎士さんはマーガレットとレヴィーに少し遅れをとりながらも、冒険者の登録をするべく冒険者協会の中へと入っていったのだった。

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