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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
44/126

#44〜新たな出会いと旅立ち〜

『貴女は…本当にファナ様なのですか…?』


『はい、私はアランの妃にしてエレナの母…正真正銘ローレンが知っている”ファナ・レイ・ブレアディア”本人です。』


『なっ…まさか……そんな………』



この時のファナ様はアラン様に初めてこの場でお会いしたはず…。それにエレナ様の事までご存知だとは…俄に信じ難い話ではあるが2人の間に子が生まれた事はごく一部しか知り得ない情報…、それにファナ様は旅の道中に襲撃者に襲われて命を落とされたはず…。



『戸惑わせてしまって申し訳ありません。ですがこうでもしないとローレンに真実を話す事が出来なかったのです。』


『っと言いますと…?』


『今ローレンがいるこの場所、この空間は貴方の中にある精神世界に過去の記憶を呼び起こし再現した世界…。そして記憶から再現された過去の私に現在の私の魂の一部を介入させる事で、ローレンとこうして話をする事が出来ているというわけです。』


『私の過去の記憶から生まれた世界…』



確かにあの時ファナ様は何者かの襲撃によって私とエレナ様の目の前で命を落とした…。あの時はエレナ様を必死にお守りする事で精一杯だったのでちゃんと確認はしていませんが…もし仮に生きていたとしてもあの負傷状態でこのような強力な術を行うとすれば膨大な魔力を必要とする上に、術を発動した瞬間に身体が耐えきれずそのまま死に至る可能性が高いはずでは…。



『しかしどうやって現在のファナ様の魂を、過去の記憶から再現したファナ様に介入させたというのですか?私が知る限りそれは不可能に近いと思われますが…。』


『少し言葉に語弊がありましたね。”現在”というのは私が襲撃者に襲われ”死ぬ直前”という意味です。』


『なっ…なぜその事を……襲撃者に襲われた事を知っているのですか!?』


『ローレンには時が来るまで伏せていましたが、私には生まれ付き”千里眼”という特殊なスキルを有しています。そしてこの”千里眼”は未来に起こるであろう出来事を予知できるもの…。なので私はこのスキルが開眼した時からアランとの出会いエレナという宝を授かる事やこれから起きる”あの悲劇”や私やアランの身に起こる事も全て予知し知っていました。そして襲撃者に襲われた時、自分の死と引き換えに”魂の介入ソウル・インタァヴェンシャン”という術を発動しこうしてローレンと話しが出来ているという訳です。』


『そんな術が……。なら…なぜ?なぜその事をアラン様や私に話してくれなかったのですか?もし事前にその情報を知っていれば、これから起こる悲劇も全て防ぐ事が出来たのではありませんか!?』



もしこれから起こりうる出来事を事前に知っていればもっと対策を立てあの悲劇”も回避し、エレナ様がアラン様とファナ様を失わずに済んだのではないだろうか…?それをなぜ…全てを失った私に今話されるのだ…。



『ローレン…。この事はアランも知っていました。”あの悲劇”が起こる事も…そして自分達の命も失ってしまうという事も…。』


『アラン様も…知っていたのですか!?』


『はい。』



まさかアラン様もこれから起こる事を知っていたとは…。なぜ…なぜ私には教えにならなかったのか……。



『ローレン。貴方になぜそれらの事を伏せていたのかにはちゃんとした理由があります。それはこれから先に起こるであろう”ある出来事”に貴方とエレナの力が必要だからです。』


『ある出来事…ですか?』


『はい。私が見た未来では大いなる闇が復活しこの世界に大厄災を招こうとします。しかし大いなる闇に立ち向かう1人の転生者とその仲間達の姿を私は見ました。そしてその転生者の仲間の中にローレンとエレナの姿がありました…。そこから先を見通す事は出来ませんでしたが貴方達2人には大きな役目があるのです。』


『だとしても…起こり得る悲劇を全て防いでその大厄災に挑めばよかったのではないですか?』


『いえ…”あの悲劇”も私とアランの命を落とす事も全て必要な事なのです。もし起こる事を防いでしまったら別の可能性が生まれ今度はローレンやエレナに悲劇が起こる可能性もあります。それにあの転生者には貴方とエレナの力が必要なのです…そしてその転生者もきっと貴方に力を貸してくれるでしょう。目が覚めたら”商業都市イスタリアム”へと向かいなさい。そこで転生者…ハルトという人物を探すのです。』



私がその転生者について詳しく聞こうとした時だった、視界に映るファナ様の姿が徐々に透けていくのが目に入って来た。



『ファナ様!?』


『どうやら時間が来てしまったみたいですね…。こんな事しか出来ない私を許して下さいローレン。』


『いえ!そんな事はございません!!ですが…あの時………アラン様とファナ様をお守り出来なかった事…本当に申し訳ありませんでした……。』


『謝るのは私達の方ですローレン。貴方には色々と背負わせてしまい申し訳ありませんね…。そして最後に……これを貴方に渡しておきます。』



そう言うとファナ様は身に付けていた”ブローチ”を私に渡して来た。そのブローチにはファナ様の瞳と同じ色をしたアメジストの鉱石が埋め込まれていた。



『ファナ様これは?』


『このブローチには……私の魔力が込められています………。この先…何かの役に立つ時が来るでしょう………。』



ファナ様の姿はもうほとんど消えかかっており、うっすらとシルエットが見えるだけだった。そして言葉にも力が入っておらず最後の力を振り絞って私に話しかけているようだった。



『ファナ様…』


『ロー……レン…。エレナを………た…のみ………まし…………。』



その言葉を最後にファナ様の姿は目の前から完全に消滅し、それと同時に私の記憶から作り出されたこの世界と私自身も春先に溶ける雪のように優しく消えて行き意識も遠のいて行った…。




「ん…ここは…一体……?」



意識が戻ると私の目線の先には今にも崩れ落ちて来そうな天井が広がっていた。周囲を見渡してみるとどうやらここは民家のようで辺りには誰かがここに住んでいるような形跡があった。そして私の身体には包帯が巻かれておりどうやら誰かに命を救ってもらったようだ。

私は身体を起こそうとするとある事に気付いた、それは襲撃者に斬り付けられた傷が痛まないという事だ…。確かにあの時受けた傷は致命傷になる程の傷だったはず…なのにどうして………。



「!?」



ふと自分の手に何かを握りしめているのを感じ握りしめているその手を開くと、そこにはアメジストの鉱石が埋め込まれたブローチがあった。



「これは………。」



そうだ。これは記憶の世界でファナ様から受け取った物。もしかしてこれが私の致命傷を負った背中の傷を癒してくれたのだろうか…。



「おっ…お目覚めでしょうか…?」



声の方に視線を向けると、そこには透き通った長い黒髪に少し萎れた服に身を包んだ1人の少女の姿があった。



「貴女は…?」


「わっ…私の名前はロロと言います…。」


「初めましてロロ。私の名前はローレンと申します。ここは…?」


「こっ…ここは私の家…です。狭くて汚くて…すみません…。薬草の採取の時に…たっ…倒れてるのを見かけたので…その…魔法で……ここまで運んできました…。」



魔法が使えると言う事は…この少女が私の傷を癒してくれたのだろうか。

あの場所からここまで運んでくれた上に治療まで施してくれるとは感謝してもしきれない。今度何かお礼を考えておかなくては。



「そうでしたか…。命を救って頂きありがとうございます。貴女のおかげで使命が全う出来そうです。」


「いっ…いえ…そんな…です。」



私の命を救ってくれたロロという少女は人付き合いが苦手なのか少し会話がたどたどしかった。



「ところでロロ、1つお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「はっ…はい…。」


「私はどれくらいの間意識を失っていたのでしょうか?それとこの場所は一体…?」


「みっ…3日程…です。それと…こっ…ここは”パラマ村”…小さな……村…です。」


「そうですか…。このパラマ村から商業都市イスタリアムまではどれくらいの距離なのでしょうか?私はそこに用事があり向かわなければ行けないのですが…。」


「あっ…こっここからそんな遠くない…です。そっ…それに、私も……そこに用事あるので……傷治ったらあっ…案内します……。」


「傷…ですか?傷ならすでに殆ど完治していますよ?ロロ治療のおかげです。」


「えっ…?」



するとロロは勢いよく私の方に来ると、斬り付けられた傷口周辺を確認し始めた。



「うっ…嘘?すっ……すごい回復力………です。さっ…さすがエルフ…です。」


「ロロのおかげですよ。」


「あぁ…いえ……そんなです。」



何か気にすることでも言ってしまったのでだろうか?ロロの顔はほんのりと赤くなっていた。



「なっ…なら……私はすぐにでも…行ける…です。」


「はい。私も大丈夫です。それに私はこの辺の地理はあまり詳しくないので案内して頂けるのはとても助かります。」


「あぁ…はい…です。頑張って…案内する…です。」


「よろしくお願いしますね、ロロ。」



そして私は命を助けてもらった恩人ロロと共に、

商業都市イスタリアムに向けて出発の準備を始めたのだった。


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