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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
43/126

#43〜再会〜

ダークエルフの郷である”フォールクヴァング”は、魔法国家ナリアティスから西の方に数キロ離れた場所に位置し馬に乗って行けば半日程で到着する。そして今回アラン様が王より与えられた任務はダークエルフの郷”フォールクヴァング”を視察するというもの…。しかしこれはあくまで表向きの任務でありその真の目的は、アラン様の父に対する尊敬心と王に対する忠誠心を利用して疑いの目を向けさせないようにし、同行させた部下達に密かに現存するダークエルフの戦力や魔法科学の現状を偵察させるというものだった。


この事実がアラン様と私が知る事になるのはこの任務より数年後…”あの悲劇”が起こる少し前……。今私がいるこの状況が何らかの幻術か死際の走馬灯によるものなのかは不明だが、これから起こる出来事を知った上でもう一度体験するというのは………。



『酷なものですねぇ…』


『うん?何か言ったかローレン?』


『いえ、何も…。』


『そうか?てっきり寝言でも言ったのかと思ったぞ。』


『ハハッ、もしそうだとしたら明日は吹雪ですな。』


『かもしれんな。』



しかしこの任務も悪い事ばかりでな無かった。なぜならアラン様はこの初任務で訪れたダークエルフの郷でご自身の妃になられるファナ様に出会われ恋に落ちるからだ。私は今でもアラン様がファナ様に出会われた時の事を鮮明に覚えている。出会った瞬間、そのまま動きを止め口を半開きにして食い入るようにファナ様を見ていられたあの姿は周囲に一目惚れしたと口にせずとも公言しているようなもの…、それが王国の掟に反する事だと知っていても私は嬉しかった…。



『ローレン!』



昔の思い出に浸っているとアラン様が私に声をかけて来た。



『どうなされましたかアラン様?』


『ローレンは父上と昔からの付き合いなのだろう?』


『左様でございます。アラン様にお仕えする前まではガルベルト王の側近の執事としてお仕えしておりました。』


『そうか…。なら今の私の時のように父上の初の任務にもローレンは同行したのか?』


『はい。アラン様の仰る通りガルベルト王の初の任務の時もお供させていただきました。』


『父上は…初任務の時どうだった?』


『ガルベルト王は今でこそ王としての貫禄がありますが…若かりし頃は今のアラン様よりも少し気弱でしたねぇ…』


『あの父上が!?』


『えぇ、初任務の時も終始緊張なされておりました。任務を終え国に帰還した時は緊張していた肩の荷が降りたのか体調を崩し3日程寝込んでいました。』


『まさかあの父上にそんな過去が…』



アラン様はそれを聞いて少し安心したのか、先ほどよりも少し肩の力が抜け表情が柔らかくなっていた。



『はい。それに比べたら今のアラン様の方がしっかりされていますのでご安心下さい。』


『ハハハッ、そうかもしれないな。』



それからの道中、私とガルベルト王の過去の話しに花を咲かせ気付くと今回の目的地であるダークエルフの郷”フォールクヴァング”に到着したのだった。



『いよいよだな…。今回の任務が視察とはいえ、王から直々に与えらえた任務だ…魔法国家騎士団の一員として誠心誠意努めなければ!!』


『私も微力ながらアラン様のお力になれるよう誠心誠意お供させていただきます。』


『あぁ、頼んだぞローレン!』


『お任せを。』



そして私達はダークエルフの郷”フォールクヴァング”へと赴いたのだった。



ダークエルフの郷”フォールクヴァング”は、巨大な塀で囲まれており中へに入るには門番が死守しいるこの郷唯一の門を通って中に入る他無かった。アラン様は門番に魔法国家ナリアティスから視察に来た事を知らせてしばらくすると巨大な門が開き、その中からガルベルト王と同じ年齢くらいの1人の男性ダークエルフとその警護数名が私達を出迎えてくれた。



『遠いところからわざわざご苦労様でございます。私はこの村で族長を務めている”ディルク・レイ・ブレアディア”と申します。』


『お初にお目にかかります”ディルク・レイ・ブレアディア”殿。私は、魔法国家騎士団 第七部隊所属 アラン・ハイ・ナリアティス、と申します。今回はガルベルト王の命により視察に参りました。』


『ナリアティスという事は…』


『はい。”ガルベルト・ハイ・ナリアティス”王の息子でございます。』


『おぉ…そうでありましたか。どことなくガルベルト王に雰囲気が似ておりますな。』


『私が父…いやっ、王にでしょうか?』


『えぇ、凛とした顔立ちや少し緊張なされているところなど昔のガルベルト王そっくりでございます。』


『緊張している事を見抜かれていたとはお恥ずかしい限りです。』


『ハハハッ、ささっ立ち話も何ですのでこちらへどうぞ。』



終始和やかな雰囲気で最初の挨拶を交わすと、ダークエルフの族長”ディルク・レイ・ブレアディア”の案内で私達は郷の中へと案内された。ダークエルフの郷は近代魔法科学が発展した魔法国家ナリアティスとは違い、エルフ民族古来の生活文化を現代に至るまで続けておりどこか懐かしさを感じさせる村だった。アラン様と私、そして一緒に同行した数名の部下達は族長の案内で村を一通り案内された後、この村から少し離れた高台にある聖堂へと案内された。



『この聖堂は…』


『この聖堂は、私達ダークエルフの始祖である”フレイヤ”様が昔建てられたものでございます。』


『ダークエルフの始祖である”フレイヤ”様が?』


『はい。この地に降り立ったフレイヤ様は自身の住処としてこの建物を建てられたとか…。その真の意図は分かりませんが我々の始祖であられるフレイヤ様が大事にされていた場所という事は間違いないでしょう。なので末裔である我々はこの場所を聖堂として代々管理しフレイヤ様を祀っているのです。』


『そういった歴史が…。ローレンは知っていたか?』


『はい。私も昔ガルベルト王のお供としてこの村に訪問させて頂いた事があり、その時に前族長である”ドルナ・レイ・ブレアディア”様に案内して頂き説明を受けた事があります。』


『そうだったのか。私も色々と知識を学んでそれなりの知を有していたと思っていたが、世の中には自分の知らない事がまだ多く存在するのだな…。』


『えぇ…この世は未知で溢れかえっており誰しも全能という訳ではございません。ですがそれもまたロマンというもの、そして”未知”とは逆を言えば”可能性”だと私は思っております。ですのでアラン様、知らない事を恥じずる事はありませんよ。』


『”未知”は”可能性”か…さすがローレンだな。』



それから私達は族長に聖堂の奥にあるフレイヤ様を祀った祭壇を案内された後、さらにその奥へと続く部屋へと案内された。そしてこの部屋に居られるのがアラン様の妃になられるお方ファナ様だ。



『さぁアラン様こちらの部屋にどうぞ。』


『この部屋は一体…?』


『この部屋は”巫女の間”でございます。』


『巫女の間…?』


『はい。私達の村には古くからこの村で優れた魔術の素質がある者を我々の始祖である”フレイヤ”様の生まれ変わりだという伝承がございます。そしてその者を”巫女”と称しフレイヤ様が建てられたこの聖堂にてこの村の守神として崇めているのです。そして守神である”巫女”はこの聖堂から外へは出る事が出来ません…それ故”巫女”と称された者はこの聖堂の奥にあるこの”巫女の間”で過ごす事となっているのです。』


『ではこの部屋の中にその巫女様が?』


『左様でございます。さぁ巫女様もお待ちですのでどうぞ”巫女の間”にお入り下さい。』



族長のその言葉にアラン様は”巫女の間”の扉を開けその中へと足を運んだ。

そしてアラン様が”巫女の間”に入るのを確認すると私と他数名の部下達も続いて”巫女の間”へと足を運んだ。

”巫女の間”は思ったよりも広い作りとなっており、部屋の壁にはダークエルフの歴史と思われる壁画が描かれていた。そして部屋の奥には暖簾で仕切られた場所があり、その周りに置いてある行灯の光でファナ様のシルエットが暖簾に映っていた。



『遠方よりお越し頂きありがとうございます。私の名は”ファナ・レイ・ブレアディア”と申します。』



その言葉と共にファナ様が暖簾で仕切られた場所から姿を表すと私たちに向けて深々と頭を下げた。その容姿は誰もが羨むほどの美貌も持ち主で、ダークエルフの特徴でもある瞳と髪は宝石のアメジストを連想させるような美しい色を輝かせいた。そしてアラン様は自分の職務を忘れる程ファナ様のその美しさに見惚れていた。



『アラン様!アラン様!!』


『ぬあっ!?』


『巫女様にご挨拶を…』



私や部下達の何度目かの呼びかけでようやく我に返ったアラン様は、今までに見た事のない程の慌てようを見せファナ様への挨拶も辿々しいものとなった。



『先ほどはお見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありません巫女様。』


『いえ、お気になさらないで下さい。それに巫女様でななくファナとお呼びください。』


『それではお言葉に甘えて。ファナ様、私は魔法国家騎士団 第七部隊所属のアラン・ハイ・ナリアティス、と申します。そして私の右に居ますのが私の執事、ローレンでございます。』


『お初にお目に掛かります、”ファナ・レイ・ブレアディア”様。アラン様よりご紹介して頂きました執事のローレン・ドミニカルと申します。以後お見知り置きを…。』


『お久しぶり…ですね、ローレン』


『!?』



私はファナ様からの返答に言葉を失った。なぜならファナ様は今私に『お久しぶり』と仰ったのだ…。

この世界がもし何者かの幻術か何かによる仕業だとすれば、何者かが私の中の記憶から作り出したファナ様を使って喋りかけているという可能性もある…。私は恐る恐る顔を上げるとそこには信じがたい光景が目の前に広がっていた。



『なっ!? 』



それは私以外、アラン様を含めた全ての人物の動きが静止していた。



『これは一体…?』


『私がローレンと私以外の時を止めました。』


『時を…止めた……!?』



静止した空間の中でファナ様の声が優しく響き渡ったのだった…。


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