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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
商業都市イスタリアム編
41/126

#41〜襲撃者〜

<商業都市イスタリアム国境付近のとある平野にて>



月の光が夜道を明るく照らし静寂に包まれた平野にて、白銀の長髪を1本に束ね燕尾服を着こなし人間でいう50代後半くらいの見た目をした1人の男性エルフが茶色のフードに身を包み岩陰に身を潜めている1人のエルフの身を案じていた。



「エレナ様…お怪我はございませんか?」


「はい…私は大丈夫です。」


「それは何よりです………ツッ!!」


「ローレン!!」



”エレナ”という名のエルフの身を案じていた男性エルフ”ローレン”は、左腕と背中に傷を負い傷口からは大量に出血しており立っているのもやっとの状態でこのままの状態が続けば死に至ってしまう程の傷の深さだ。



「酷い怪我を!!治癒魔法を施しますのでじっとしていて下さい!!!」



岩陰に身を潜めていた”エレナ”というエルフはそう言うと、ローレンに向けて両手をかざして魔法陣を展開させると治癒魔法を施し始めた。



「”ヒーリング”」



その言葉に魔法陣が共鳴し負傷した傷口はエレナが施した治癒の魔法によって次第に傷口は塞がれていき、血の気を失っていた表情にも徐々に生気が戻り始めた。



「ありがとうございますエレナ様。私が不甲斐ないばかりに…ご迷惑を…。」


「いえ、貴方が居なければ私は今頃死んでいました…。それに謝るのは私の方です。私が無知で何の力も無いせいでローレンに何もかも頼りっぱなしな上に、こんな深い傷を与えてしまい…それにお母様まで………。」



治癒魔法を施すエレナの瞳は潤んでおり今にも涙がこぼれ落ちそうだったが、これ以上ローレンに心配をかけまいとしているのかエレナは必死に涙を堪えていた。そして治癒魔法を施した傷口部分が塞がり出血が止まった事を確認するとエレナは治癒魔法を終えた。



「無事に傷口も塞がり出血も止まったのでこれで安心ですね…。良かった……。」



エレナはローレンにこれ以上心配をかけまいと今出来る最大限の笑みを見せるが、ローレンにはそれが自分に心配をかけまいと無理して強がっているのだと分かっていた。



「エレナ様…。」


「そんな顔をしないで下さいローレン。それにしてもあの襲撃者は一体何者なのでしょうか?」


「恐らく襲撃者の目的はエレナ様だと思われます。」


「やはり私の命が目的でしたか…。」


「いや、仮にもしエレナ様の命を奪う事が目的だとすれば”あの時”真っ先にエレナ様を狙って命を奪う事も出来たはず…。そうしなかったという事は何か別の目的があるのかもしれません。」


「別の目的…ですか……。それって一体…?」


「あくまで私個人の推測の1つでしかありませんが、エレナ様の素性を知る何者かが誰かに情報を流し何らかの目的の為にエレナ様を利用しようと考えているのかもしれません…。」


「みぃ〜つけたっ!!」


「!?」



自分達を襲った襲撃者の正体について推測していたその時、背後から狂気に満ちた声が聞こえて来た。ローレンはその声の方へ振り向くが背後には誰の姿も確認する事はでき無かった。ローレンはエレナに岩場の奥の方へ隠れるように指示を出すと、闇に潜む正体の見えない声の主に対して戦闘態勢をとり周囲を警戒した。



「隠れていないで姿を見せたらどうですか?」



闇に潜むその声の主はローレンの質問に答えず静寂に包まれた平野には不気味な鼻歌が響き渡っている。

ローレンは神経を研ぎ澄ませ周囲を確認するが、いまだに声の主の姿は確認する事が出来ずにいた。



「致命傷を与えたはずなんだけどな〜、そこのハイブリットエルフに回復魔法で治してもらったのかな〜?」


「………」



どうやらローレンの読み通りエレナの素性がどこかに漏れていたようだ…そしてその目的は間違いなくエレナをこの場から連れ去りエレナの持っている”力”を利用する事だとローレンは確信した。



「エレナ様には決して手出しはさせません!!」


「ふ〜ん、言うじゃん老いぼれのくせに。でもね、もう遅いんだよぉぉ〜!!」


「ローレン!!!」



次の瞬間、エレナの悲鳴が響き渡りローレンは急いで後ろを振り向くとそこには黒のフードに身を包んだ人物がエレナの首にナイフを突きつけ不気味な笑みを浮かべて立っており、その後ろにはエレナにナイフを突き付けている人物と同じフードに身を包んだ仲間らしき人物達が数人ローレンの方を見ていた。


「エレナ様!!!」


「ローレン!ローレン!!」



ローレンは捕らえられたエレナを助けようとするが黒のフードに身を包んだ男は、すかさずエレナの首に突き付けたナイフの刃先を更に深く首に突き付けるとローレンに向けて脅しをかけた。



「動くな!!その場から一歩でも動いてみろ…この細くて綺麗な首をこの鋭いナイフで掻っ切るぞ?」


「くっ…」


「ロッ…ローレン…助けて……。」


「クククッ…良い声で泣くじゃね〜かよぉ〜、流石ハイブリットエルフだなぁ〜」



黒いフードに身を包んだ男は身動きが取れず険しい表情をしているローレンと、人質に取ったエレナの恐怖に怯えた顔を見て1人楽しんでいた。



「この場ですぐに痛ぶって殺してやりたいんだけどなぁ〜、今回の依頼人はハイブリットのお前をご所望なんだよ。だから……。」


「うっ…!」


「エレナ様!!!」



男はエレナの腹部に打撃を与え気絶させると後ろに居た自分の仲間にエレナを渡した。そして気絶したエレナを受け取った男の仲間達は魔法陣を展開させ目の前にゲートを出現させた。



「行かせません!!!」



ローレンはエレナを助ける為に勢いよく飛び出すも不気味な笑みを浮かべた男によって救出を阻止された。そしてその男は先程までエレナに突き付けていたナイフでローレンをゲートから遠ざけるように連続で素早い斬撃を浴びせる。



「ほれ!ほれほれ!!早くしないと大事なハイブリットエルフを連れ帰っちゃうよぉ〜?」


「このままではエレナ様が…」



ローレンは見た目からは想像出来ない程の反射神経でその攻撃をかわすが、その男の思惑通り徐々にゲートから遠ざけられてしまい気付くとエレナはゲートの中へと消えて行った。



「エレナ様!!!」


「お持ち帰り成功〜!!それにどれだけ叫んでも老いぼれのお前があのハイブリットエルフを助ける事は出来ないんだよ!!残念だけどあのハイブリットエルフとはここでお別れ…一生会う事は出来ない!!なぜなら……お前はここで死ぬ……俺が殺すからだぁ!!!」


「ちっ!!」



ローレンは男が繰り出す素早い攻撃を避けつつ自身に残されたわずかなの魔力を自身の拳に集中させる。



「”精霊波”!!!」



自身の魔力を拳に集中させた放った”精霊波”の一撃は完全にその男を捕らえていた。



「もらいました!!」



放たれた”精霊波”が男に命中したと思ったのも束の間、男の姿はローレンの前から一瞬にして姿を消し”精霊波”の衝撃波が辺り一面を包み込むとその衝撃波の影響で舞い上がった草木が静かに地面へと落ちて行く。ローレンは周囲を見渡すもその男の姿を確認する事が出来無かった。



「残念でした〜」



その言葉と共に男は月夜に照らされて出来たローレンの影の中から姿を現すと、背後から持っていたナイフでローレンの背中を勢いよく切り裂いた。



「なっ!?」



背中を切り裂かれたローレンはそのまま地面に倒れ込み、斬りつけられた傷は先ほどエレナに治癒を施してもらった時の傷よりも更に深く緑の大地はローレンの血で赤く染まって行った。



「おっ…お前は……お前達は一体………。」


「冥土の土産に教えてやるよ。俺達は”神聖教団暗躍部隊…『影』《シャドー》”だ」


「シッ…シンセイ……キョ………ウ…ダン…………」


「お前にとどめは刺さない…。大事なハイブリットエルフを守りきれなかった事を後悔しながら息絶えるんだな!!!」


「ッ………」


「あっ?もう口聞けなくなっちゃたかぁ〜。」



男はそう言うと自身の影に入ると去り際にローレンにこう告げた。



「じゃあな、大事な物を守りきれなかった哀れな老いぼれエルフさぁ〜ん」



そう告げると男は影の中へと姿を消しローレンの元から去って行った。

薄れゆく視界の中、ローレンはエレナとその母親を守りきれなかった自分を責め後悔の念を抱きながら静かに瞳を閉じたのだった。

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