#26〜制裁〜
”レヴィアタン”
僕が知る限りでは海に住む巨大な魔物と言うイメージが強い。
アニメやゲームの中でも最強の生物として君臨し、その巨大な体と硬い鱗でどんな武器も通用しないチート級の生物として描かれる事が多い。イメージ。
しかし僕とマーガレットの目の前に現れた”レヴィアタン”は年端もいかない幼女の姿で現れた。
それにどうやらマーガレットはこの少女レヴィアタンの事を知っているようだ。
「どうして…どうして貴女がサタン側にいるのですか!?」
「………」
マーガレットの呼びかけにレヴィアタンは反応しない。
「クククッ…どうですかヴァルキリー?昔の仲間に敵として再会した気分は?」
「レヴィアタンに何をしたんです!!」
「それは貴女が1番よく知っているのではないですか…”ヴァルキリー”?」
ベルゼブブはそう言うとマーガレットに向けて不適な笑みを浮かべた。
それが何を意味するのか僕には分からないが、きっとマーガレットの過去に関係している事は間違いない。
「さぁ私の可愛い従者レヴィアタンよ、彼らに制裁を!!」
「了解。」
レヴィアタンはベルゼブブの命令に返答すると左手に魔法陣を展開し詠唱を唱え始める。
「我、天地創造の神によって生み出されし生命の海を司る最強の子なり。全てを飲み込む力を我に与えたまえ。」
レヴィアタンのその言葉に魔法陣が共鳴すると展開した魔法陣の中から巨大な水龍が1体出現した。
その巨体は瑠璃色の鱗で覆われており背中には禍々しい背鰭、そして額には1本の巨大な角が生えておりその角からは稲妻が発せられていた。
瑠璃色の水龍を召喚したレヴィアタンは、その水龍の頬を優しく撫でると続けてこう唱えた。
「神器…”リヴァイアサン”…」
その言葉と共に水龍から眩い光が発せられると次第にロッド状の武器へと姿を変化させる。
形状はレヴィアタンが先程召喚した水龍に酷似した作りになっており瑠璃色に輝いていた。
そしてレヴィアタンは”神器リヴァイアサン”を手に取ると僕達に刃を向けた。
「準備完了。これより対象への制裁を開始します。」
レヴィアタンはそう言うと神器リヴァイアサンを宙にかざし巨大な魔法陣を展開すると、
そこから無数の水の刃を放出し僕達目掛けて攻撃を仕掛けて来た。
「ハルト様!!」
マーガレットはすかさずレヴィアタンの攻撃を巨大なランスで防ぐが、
止む事のない攻撃に次第に押され始める。
「マーガレット!!!」
「クククッ…いつまでその状態を維持出来ますかね〜。」
ベルゼブブはレヴィアタンに反撃する事が出来ないマーガレットを見て嘲笑っていた。
「レヴィアタン!私です!ヴァルキリーです!!」
「制裁…制裁…制裁…」
レヴィアタンはマーガレットの問いかけに答えず『制裁』と言う言葉を呪文のように繰り返し口に出しながら僕達に攻撃を続けた。
「私の事を覚えていないのですか!!」
「クククッ…問いかけても無駄だと言う事は貴女が1番知っているでしょう?貴女にはレヴィアタンと戦って”あの時”のように殺すか殺されるかの選択しか無いんですよ…。」
「くっ…」
「さぁ…どうしますか?”ヴァルキリー”?」
ベルゼブブは更に追い討ちをかけるようにマーガレットにそう言うと、
またゲラゲラと人を見下したように笑い始めた。
「クハハハハハハハハハハハハ!!!」
ベルゼブブ…どこまでも卑怯な奴だ。
人の弱みに漬け込んで自分では一切手を手を出さずに人が苦しんでいる姿を見て楽しんでいる…。
どの世界でも腐ってる奴はどこまでも腐ってるって事か…。
「私は…どうしたら…」
「大丈夫だよマーガレット…。」
「えっ…?」
「僕がマーガレットもレヴィアタンも救ってみせる…。そして…」
僕は手に持っていたマテリアルウェポンを強く握りしめベルゼブブに向けてこう言った。
「お前を倒す!!」
「ハルト様…」
ベルゼブブは僕のその一言を聞くと見下したような笑いを止めて静かに僕の方を見た。
「今…何と仰いました?」
「お前を倒す。」
「ふむ…。どうやら聞き間違いでは無いようですね…。レヴィアタン!!」
ベルゼブブの一言でレヴィアタンは攻撃を止めこちらを見たままその場で静止する。
そして今まで空中で高みの見物をしていたベルゼブブは、レヴィアタンの元へと降り立つと手に装備した鉤爪でレヴィアタンの背中を思いっきり斬りつけた。
「なっ!?」
「レヴィアタン!!!!!!」
背中を斬りつけられたレヴィアタンは悲鳴を上げる事も無くその場に倒れ込むが、
直ぐに立ち上がると表情1つ変えず、何事も無かったかのようにこちらを見ていた。
「お前!!なぜレヴィアタンに攻撃した!!!」
「教えて差し上げたんですよ。私に歯向かうとどうなるのかを…。」
「どこまでも卑劣な奴め!!!」
マーガレットは怒りを露わにしていた。
「いいでしょう。少し遊ぶだけのつもりでしたが…この際本当に制裁してあげます。行きますよレヴィアタン…全力で抹殺しなさい。」
そう言うとベルゼブブはこちらに向かって静かに歩き始めたのだった。