#25〜レヴィアタン〜
突如上空に現れた”堕闇の守護者ベルゼブブ”はなぜか僕の名前を知っていた。
この世界で僕の名前を知っているのはマーガレットやジャバルさんにルミナさん、それにノルズの街でお世話になった人達だけなはずだ…。
それがどうした訳か堕天使サタンが率いるリベリオン軍の守護者の1人、ベルゼブブがなぜ知っているのかという事だ…。しかも転生者という事もバレている。
「何か解せないという顔をしていますね、転生者ハルト様…」
「なぜ僕の事を知っている?それに”彼女が現れる事は無い”ってどういう意味だ?」
「ふふふっ…まぁいいでしょう。出会った記念に今回は特別に教えて差し上げます。まず初めになぜ私がハルト様の事を知っているのかというと、”私達”は転生者を感知する事が出来ます。ですのでハルト様がこの世界に召喚された時すでに貴方の存在は感知しておりました。」
「私達…?」
「はい。”私達”でございます。そして次の質問の返答ですが…そうですね………どう伝えればいいのやら…。」
「相変わらず人を小馬鹿にした態度ですねベルゼブブ…勿体ぶって無いで早くドライアドの居場所を教えたらどうですか?」
いつにもなくマーガレットが少し焦っている様に感じる。
「随分と言う様になりましたねヴァルキリー…100年前は泣いてばかりだった貴女が。」
「っ!!」
思った通りマーガレットとベルゼブブは以前にも面識があるようだ。
それに堕天使サタンが率いるリベリオン軍の守護者という事は、かつての厄災に参加していた可能性もある…。
というかこの2人の関係性を見る限り多分そうだろう。
「ふふふっ…。まぁ少し落ち着いて下さいヴァルキリー。貴方達が探しているドライアドですが、さっき言った言葉通りの意味なんですよ…ククッ。残念ですが彼女に会える事は…フッ……フフフッ…もう……クククッ……2度とありませんヨォォォォ!!!」
ベルゼブブはそう言うと人を小馬鹿にしたような態度で、この森に響き渡るくらい大きな声で高らかに笑い始める。
「フハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!残念でしたあぁぁぁぁぁ!!!!」
「…れ」
「うぅ〜ん?何か言いましたか?」
「黙れって言ってるんだよ!!!」
「ハルト様…」
ドライアドさんに何があったのかは分からない。
ただ、ベルゼブブの態度を見る限り何があったのかは大体想像が付く…。
「初めて会った人にこんな事を言うのも失礼だけど、僕はお前が嫌いだ。」
「おや!それは残念ですね〜。貴方とは仲良くなりたいと思っていたのですが…。嫌われてしまってはしょうがないですね…我が主人の為にも貴方達をこの場で制裁致します。」
ベルゼブブはそう言うと身体から闇のオーラを放出してそのオーラを両手に集中させる。
そのオーラは次第に鉤爪のような武器へと形を変えていった。
「クククッ…さぁ死ぬ準備は出来ていますか?」
僕はすかさずマテリアルウェポンを手に取り属性を『光』に合わせる。
僕は脳内で”ブレード”をイメージして具現化するとベルゼブブに向けてそれを構えて戦闘態勢に入った。
「ほう…。何やら変わった武器をお持ちのようですね。まぁいいでしょう。貴方達が2人で来るというのなら…ククッ、せっかくなので私の従者を1人ご紹介しましょう。出て来なさい!私の可愛い従者よ!」
ベルゼブブのその言葉と同時に湖に魔法陣が展開し始めるとその中から1人の少女が現れた。
魔法陣から出て来た少女の容姿は幼く、髪は根元から毛先にかけて鮮やかな青色のグラデーションになっていた。
その少女は空中を浮遊しながら僕達の元へ降り立つと、ゆっくりと目を開けてこちらを見た。
「そっ…そんな…何で?」
「マーガレット…?」
「クククッ…」
不適な笑みを浮かべるベルゼブブをよそにマーガレットは悲壮感に満ちた声でこう言った。
「レヴィアタン…」