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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
ノルズの街編
21/126

#21〜それぞれの目標に向かって〜

リビングに向かうとテーブルには4人分の食器が並べられており、

ジャバルさんは朝食を作っているルミナさんの手伝いをしていた。



「2人ともおはようございます。朝からルミナがご迷惑をおかけしたようで。」


「いえ、そんな。おはようございますジャバルさん、ルミナさん」


「何言ってるのさジャバル!何も迷惑なんてかけてないわよね〜」



僕とマーガレットは出迎えてくれたドラゴニス夫妻に挨拶をすると、ジャバルさんがテーブルへと案内してくれた。このまま何もしないのは失礼だと思い朝食の準備の手伝いをしようとすると『お気になさらず』とテーブルへと返されてしまった。申し訳なく感じながらも僕とマーガレットはその好意に甘える事にした。


しばらくするとテーブルの上にはルミナさんが作ってくれた食事が所狭しと並べられ、

中には見たことのない料理もあったがどれも食欲を掻き立てる良い匂いがする。

ジャバルさんとルミナさんも準備を終えて席に着くと両手を合掌させてこう言った。



「いただきます。」



驚いた事にそれは元居た世界で食事を始める際の挨拶と同じもので、まさか異世界でも同じ作法と挨拶をするとは思わなかった。これも転生者の受け売りなのだろうか?気になるところではあるが、今はルミナさんが作ってくれた朝食をご馳走になるとしよう。



「いただきます!」



僕とマーガレットも両手を合掌させて食事の挨拶を済ますと、

ルミナさんが作ってくれた朝食を満腹になるまで堪能したのだった。





朝食を終えて後片付けを手伝いながら僕はマーガレットに今後の事について相談した。



「マーガレット今後の事についてなんだけど…」


「今後ですか?」


「うん。ドリュアス森林に向かう前にジャバルさんの元で少し修行しようと思って…」


「修行?」


「マーガレットと洞窟で戦った時に思ったんだ…この先、大切な人達や大切な場所が危ない目にあった時に僕はその人達や場所を守れる事が出来るのかなって…。」


「ハルト様…」



責めるつもりで言った訳では無いが、

マーガレットは少し申し訳なそうな表情をしていた。

それを見ていたルミナさんがマーガレットの元へと駆け寄り彼女の肩にそっと手を置き、何か言葉をかける訳でも無く安心させるように優しく頷く。



「ルミナさん…」



マーガレットはルミナさんから何かを感じ取ったのか、

しばらくしてから僕にいつもの笑顔を見せてくれた。



「マーガレットちゃん、ハルト君がジャバルの所で修行してる間、私のお店で働きながら料理の勉強をするのはどうだい?この前話してた胃袋を掴む修行だよ!修行でお腹を空かしたハルト君に美味しいご飯を振る舞ったらイチコロだよ?どうだい?」


「イチコロなのですか!?やります!!私、胃袋を掴む修行します!!」



さすがルミナさん。

その一言でマーガレットのやる気スイッチが入ったみたいだ。



「ハルト様!修行頑張って下さいね!!美味しいご飯を用意して待ってますから!!」


「うん。僕もマーガレットのご飯楽しみにしてる!」



僕達は改めてドラゴニス夫妻にお世話になる事を伝えて、

マーガレットはルミナさんのお店の手伝いに、僕とジャバルさんは質装備店へと向かったったのだった。




<半年後>




それからの僕とマーガレットはお互いそれぞれの場所で自分の目標に向かって切磋琢磨し、気付くと半年以上の月日が経ち肌寒い季節を通り越して過ごしやすい時期になっていた。



「マーガレットちゃ〜ん、甘味水のおかわりを頼むよ〜!!」


「は〜い!!今行きまぁ〜す!!」


「マーガレットちゃんマーガレットちゃん!!こっちにもお願い!!」


「少々お待ちくださぁ〜い!」



マーガレットはルミナさんに匹敵する程の人気の看板娘になっており、いつしか”ヴィヴィアンに舞い降りた天使”と呼ばれるようにまでなっていた。そして料理の腕前も申し分無いくらい上達しており毎日美味しい料理を振る舞ってくれた。



僕はというとジャバルさんの質装備店の手伝いで鉱石やモンスターの素材を加工したり、街の外に出て実際にモンスターと実践を交えながら剣術や武術を教えてもらい倒したモンスターから素材集めを行なっていた。

始めて見るモンスターに最初の頃は正直ビビってしまったが、経験を重ねる内に立ち回り方などを覚えて今ではそれないり戦えるようになったと思う…。たぶん…。


それにジャバルさんの手伝いをして驚いた事は鉱石や素材を集めて販売や買取をするだけじゃ無く、冒険者達から依頼された武器や防具を1人1人の要望に合わせて1から作成する凄腕の職人という事だ。業界ではその巧みな技と人柄に依頼を出す人が絶えない人気店らしい。



そしてある日の夜、僕とマーガレットは部屋でいつものように次の日の身支度をしたり各々の時間を過ごしていた。ジャバルさんの元で修行して半年以上が経ちそれなりに知識と技術も身につけた。このままお世話になりっぱなしという訳にも行かない…ジャバルさんと街の外に何回か出て思った事は、この世界はどこまでも広く未知の世界が続いるという事だ。

その中で僕はもっと世界を知りたい。そう思うようになった。



「マーガレット、今いいかな?」


「なんでしょうハルト様?」



僕はマーガレットに自分が思っている事とこの先の事について話した。



「そろそろこの街を出ようと思うんだ…。」


「そうですか…。」



マーガレットは寂しげな顔をする。

きとこの半年間で色んな人と交流したり学んだりして、マーガレットも楽しい時間を過ごす事が出来たのだろう。ヴィヴィアンで働く彼女の姿はとても生き生きとしていて、ルミナさんとは本当の姉妹のように見えた。



「私はこの街がとても好きになりました。人も暖かくて優しくて良い街だと思います。皆さんと離れてしまうのは寂しいですが、2度と会えなくなる訳ではありません。それ以前に私はハルト様の”剣”です。ハルト様がどこへ行こうと私は着いて行きます。」



「マーガレット…。」



僕達はその後、この街を旅立つ事をジャバルさんとルミナさんに伝える為に2人をリビングの方へと呼び出した。ジャバルさんとルミナさんは何かを悟ったような表情で席に着くと、僕達2人を見た。



「ジャバルさん、ルミナさん、出会った日から今日まで本当に優しくして頂いて本当にありがとうございました。見ず知らずの僕達に住む場所まで提供して頂いて…仕事も修行も真剣に教えてくれて感謝の言葉を伝えても伝えきれないくらい感謝しています。」



ジャバルさんとルミナさんは何も言わず僕の話しを真剣に聞いている。

僕は込み上げる涙を堪えながら今までの感謝の気持ちを伝えて、僕は最後にマーガレットと決断した事を2人に伝えた。



「明日、お世話になったこの街を旅立とうと思っています。」



ジャバルさんとルミナさんそれを聞いて少し寂しげな顔をした。



「なんとなくですが、そんな気が少ししていました。」


「そうだね〜、私もそんな気してたよ。」


「ハルト様はこの半年間の間で出会った頃に比べてとても成長したと思います。それにマーガレット様が作る料理もルミナに匹敵する程の上達ぶりで、正直2人の成長に私は驚かされてばかりでした。」


「本当にマーガレットちゃん上手になったよ!正直手放すのが惜しいくらい…。でもマーガレットちゃんもハルトくんと同じ気持ちなんだろ?」



マーガレットはルミナさんの問いに『はい』と力強く答えた。

それを聞いてルミナさんも納得したようで安堵した表情を浮かべる。



「それじゃ〜今日は2人の門出を祝ってパーっとやるしかないねぇ〜!!マーガレットちゃん手伝ってくれるかい?」



ルミナさんはそう言うと台所へと向かう。

マーガレットもその後を追って台所へと向かい2人で仲良く食事の支度を始める。

2人が料理するその姿をジャバルさんは目に焼き付けるように見ていた…。


しばらくするとテーブルの上には、マーガレットとルミナさんが作ってくれた美味しそうな料理がこれでもかというくらい沢山並べられていた。

食事の準備を終えて4人共席に着くと、ルミナさんは甘味水が入ったジョッキを手に取り僕達に向けて激励の言葉を送ってくれた。



「ハルト君!マーガレットちゃん!2人が旅立ってしまうのは正直寂しいとけど、2人が決めた事なら私達は何も言わないし応援するよ!!そしていつでも帰って来なさい。ここはもう2人の家なんだから…遠慮なんてしなくていいのよ! ね?ジャバル!」


「もちろんです!私たちはもう家族なのですから。いつでも気軽に帰って来て下さい。」



2人の暖かい笑顔と”家族”として迎え入れてくれた事がなによりも僕は嬉しかった。

失ってしまった心の隙間をマーガレットやジャバルさんにルミナさん、そしてこの街とこの街に住む人達がいつしか暖かく埋めてくれたいたんだと改めて実感した。



「ありがとうございます!ジャバルさん!ルミナさん!」


「それじゃ〜2人の旅立ちにかんぱ〜い!!!」



ルミナさんの乾杯の音頭で旅立ちの門出を祝ってもらった僕達は、4人で楽しい時間を過ごしたのだった。



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