126〜背負うべき罪〜
外された仮面の奥に映ったその素顔はかつての面影は無かった。
肌は死人のように蒼白く、かつて正義を追い求め力強く輝いていた真子は光を失い額には
紫紺色をした宝玉のような物が埋め込まれており、その左右から宝玉と同じ紫紺色をした線が二重に額から眼、頬を伝って身体の方へと伸びていた。
「R…その姿は一体…?」
「これは…。俺が背負うべき罪だ……。」
「背負うべき罪…?」
「あぁ。それと同時に俺の使命でもある。」
「どういう事?」
ドライアドはRの身に起きた状況が把握できずに困惑した表情を浮かべていた。
「語り尽くせない程に途方もない話しだ…。」
Rの表情は後悔の念に押しつぶされそうな寂しげな表情をしていた。
「信じてくれとは言わない。だが一つだけ知ってて欲しいのは、俺は”あの時”から今日に至るまで”あの二人”の味方だという事だ。」
「R…。」
人の姿を無くしたRの素顔を見たからなのか、どこか後悔の念に押しつぶされそうなRの表情を見たからなのかは分からなが、ドライアドが先程まで抱いていた憎悪の念はいつしか消えていた。
「ドライアドよ、今はこやつの言葉を信じてやってくれんかの?」
過去にRがした事は決して許すことはできない。
だが人の姿をやめてまでRが”あの二人”の事を思うその気持ちと行動に、ドライアドはもう一度Rを信じてみようと心に決めたのだった。
「分かった…。でも決して貴方を許したわけじゃないわよ、R。」
「あぁ。」
「ただし、何か少しでも妙な事をしたり、”あの二人”に何か危害が及ぶような事をしたら、その時は今度こそあたしの手で貴方を殺す…。いいわね?」
「分かった。」
二人の中にあった蟠りが少しだけ解け、その光景を見たアインシュタインも安堵の表情を浮かべた。
「さて、二人の蟠りも少しだけ解けたようじゃし、そろそろ行くとするかのぉ」
「行くってどこへ?」
アインシュタインは返答する前にRを呼び出した時と同様に片手を翳し空間を歪ませ、その歪んだ空間を切り裂き亜空間を出現させると、ドライドにこれから自分達が向かう行き先を伝えた。
「死者の谷へじゃ」
「死者の谷!?だってそこには何も……。あるとしてもあそこには死者の国くらいじゃ…。」
「そこに”あやつの魂の一部”がある。だが時は一刻を争う事態じゃ、このままではあやつの魂が消滅するかもしれん。」
「なっ!?それってどういう事!?」
「詳しくは行きながら話すとして、まずは一刻も早く死者の谷へと向かうぞ」
そう言うとアインシュタインは切り裂いた亜空間の中から獅子型の機獣兵を呼び出し二体の”汚れなき純粋な人形<ドール>”を預けると、猫型の機獣兵ジーンとドライアド、Rの二人と共に死者の谷へ向かうべく亜空間の中へと足を踏み入れたのだった。