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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
ヴァラマ帝国編
115/126

#115〜ジェリム・アライアス〜

ノーリス・ダルバーの案内で薬剤研究施設内を一通り案内してもらった黒騎士とVの二人は、最後に帝国で有名な薬師であり教団のメンバーであるコルアと同じ名を持つ薬師アライアが待つ書斎へと案内された。



「アライアス様、黒騎士様とV様をお連れ致しました。」



ノーリスは薬師のアライアスがいる書斎のドアを二回ノックし訪れた事を伝えると、書斎のドアが静かに開き中から落ち着いた女性の声で『お入りなさい』と声が聞こえて来た。

書斎の中に居る女性から中へ入る許可を得たノーリスは開いたドアに手を伸ばしドアを開くと、黒騎士とV、そしてフローリアを連れて書斎の中へと入った。書斎の中は薬品の調合に必要な道具や薬品関連の資料、そして薬草や回復薬などが綺麗に整理され部屋の中央にはアンティーク風の立派なテーブルと椅子が並べられており、温和な表情を浮かべた一人の老女が黒騎士達を出迎えた。



「この度は薬剤研究施設へ足を運んで下さりありがとうございます。私は薬師の”ジェリム・アライアス”と申します。」



薬師のジェリム・アライアスは自己紹介をすると、薬剤研究施設を訪れた黒騎士とVに向けて深く頭を下げ挨拶をした。



「お初にお目にかかりますアライアス殿。私の名は黒騎士、そして私の隣にいるのが冒険仲間のVです。今回は急な申し出にも関わらず薬剤研究施設の視察を許可して頂いた事、改めて感謝致します。」


「いえ、お礼を言うのは私の方ですよ黒騎士様。まさかこの歳になってアレキサンドライト級冒険者にして、青騎士様と同じ伝説の四騎士の一人であられる黒騎士様と、そのお仲間であるV様にこうしてお会いできる日が来るとは夢にも思いませんでしたから。」


「そう言って頂けると、私もVも薬剤研究施設を訪れた甲斐がありました。」


「長生きすると悪いことだけじゃなく良い事もあるものですね…。さぁさぁ、立ち話もなんですので、どうかこちらの椅子に腰掛けて下さい。ノーリス、黒騎士様達にお茶をお願いしてもいいですか?」


「かしこまりました、アライアス様。」



ノーリスは黒騎士達にお茶の用意をする為に一旦書斎を後にし、黒騎士達は部屋の中央に置かれた立派なアンティーク風のテーブルとそこに並べられた椅子にそれぞれ腰掛けた。



「フローリアからある程度のお話は伺っておりますが、どうして黒騎士様達はこの薬剤研究施設を急に視察しようと思われたのですか?明日はフローリアや青騎士様達と任務で霧の谷へ向かうと伺っておりますが…。」


「アライアス殿の言う通り、明日は青騎士やフローリアと共に任務で霧の谷へ向かいます。」


「では任務の前日である今日はお忙しいのでは?」


「いえ、私もVも明日の任務に向けての準備は終わっておりますのでご安心を。」


「それならいいのですが…。ですが伝説の四騎士であられる黒騎士様が、薬や調剤にご興味があるとは思いもしませんでした。」


「以前、商業都市イスタリアムを訪れた際に”とある女性の薬師”に出会いましてね。その薬師は商業都市イスタリアムでは有名な薬師なようで、仲間の話によると薬師としての才能だけでなく魔術師としてもそれなりの腕の持ち主だとか…。」


「それ程の才を持った者が商業都市イスタリアムに…。」



黒騎士の話にアライアスは興味を示した様子を見せると、先ほどまで温和な表情から一転して顔付きが真剣な表情へと変わっていた。



「少し話が逸れましたが、イスタリアムを訪れた際に私含め仲間がその薬師に随分世話になりましてね…。それもあって薬や調剤、そして薬師という職業に興味を抱いたという訳です。」


「左様でございますか…。ともあれ、伝説の四騎士の一人である黒騎士様が薬師という職業に興味を抱いて頂けた事は、私達薬師にとって光栄な事でございます。黒騎士様がイスタリアムでその女性の薬師に出会わなければ、こうして黒騎士様やV様とお会いする事も無かったでしょうから。黒騎士様、よろしければその女性の薬師のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?いつになるかは分かりませんが、もしお会い出来る日があれば直接感謝の気持ちをお伝えしたいのですが…。」



黒騎士は少し間を開け呼吸を整えると、アライアスからの問いに答えた。



「私が商業都市イスタリアムで出会ったその女性の薬師の名は、コルアという名の薬師です。」



黒騎士の口からその女性薬師の名を聞いた瞬間、アライアスは『そうですか。』と一言返事をすると、何かを悟ったたかのような表情を見せ視線を窓際の方へと送った。

それから程なくしてお茶を入れに行ったノーリスが書斎へ戻って来ると、お茶を入れに行く前と書斎の雰囲気が少し違う事に違和感を感じるも、ノーリスは入れたお茶が冷めないようテーブルにお茶の入ったティーカップと茶菓子を並べた。



「明日は重要な任務と伺いましたので、少しでも疲れが取れ任務を無事に遂行できるよう疲労回復効果のある薬草をブレンドしたお茶と茶菓子をご用意しました。」


「ノーリス殿、そのお心遣い感謝致します。」


「いえ。それでは冷めないうちにどうぞお召し上がり下さい。」


「では…。」



黒騎士はノーリスの心遣いに感謝しつつ、テーブルに置かれたティーカップを手に取ると疲労回復効果のある薬草をブレンドしたノーリス特性のお茶を口にした。



「うむ…。これは美味い。」


「本当ね…。それにほのかな甘味もあって美味しいわ…。」


「はい!それにこの茶菓子もとても美味しいです!!!」



黒騎士に続きVとフローリアもノーリス特性のブレンド茶と茶菓子を口にすると、二人ともその美味しさにご満悦した様子を見せていた。



「本当にノーリスもお茶を入れるのが上手になりましたね。初めて出会ったあの日からは想像できませんよ。」


「いえ…そんな。今の私がこうしてここに居れるのも、全てアライアス様のおかげです。」


「あなたの頑張りがあったからこそですよ。」


「アライアス様…。」


「さぁ、貴方も早くこちらへ。貴方のお茶は私が入れて来てあげますから、ノーリスは先に席に着いて黒騎士様達と談話を楽しみなさい。」



アライアスはそう言うと一旦席を立ちノーリスのお茶を入れる為に書斎を後にし、ノーリスはフローリアの隣の椅子へと腰を下ろした。それからしばらくしてアライアスがお茶を入れて書斎へ戻ると、黒騎士、V、フローリア、ノーリス、アライアスの五人は談話を交えつつお茶を楽しんだのだった。



「最近は新薬の開発や研究などで忙しかったですから、こうしてゆっくりとお茶を楽しむ事ができて私も良い息抜きができました。これも黒騎士様とV様のおかげです。」


「いえ、そんな。ですがアライアス殿にとって良い息抜きができたのなら良かったです。」


「ありがとうございます黒騎士様。さて、すまないがノーリス、フローリアお茶の片付けをお願いしてもいいかい?」


「はい、ノーリス様。」


「もちろんです!!それでは黒騎士様、V様、また後ほど。」



それからフローリアとノーリスは、テーブルに並べられたティーカップや皿などを片付け書斎を後にした。

二人が書斎を後にしドアが閉まるとアライアスの表情から静かに笑みが消えていき、二人の足音が書斎から遠のいて行くのを確認したアライアスは静かに口を開いた。



「黒騎士様、V様、お二人にお話ししたい事がございます。」


「何でしょうかアライアス殿?」


「そのお話の前に…一つだけ黒騎士様にお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「もちろん構いません。それで…お聞きしたい事とは?」


「黒騎士様が商業都市イスタリアムで出会った薬師についてです。」


「………。」



その問いに先程まで和気藹々としていた書斎の雰囲気が一気に凍りつき、アライアスはまるで覚悟を決心したかのような真剣な表情で黒騎士とVの二人を見ていた。



「その出会った薬師のフルネームは、コルア・アライアスという名ではないでしょうか?」


「はい…。」


「やはりそうでしたか…。」



黒騎士からの返答にアライアスは納得した表情を見せた。



「アライアス殿はその薬師コルアをご存じのようですが…。お二人はどういったご関係なのでしょうか?差し支えなければ教えていただいても?」



アライアスは深く呼吸をし気持ちを落ち着かせると黒騎士からの問に答えた。



「コルア・アライアス…。その薬師は数百年前に禁忌を犯した人物で、私達アライアス一族の始祖の一人です。」

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