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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
死者の国《ヘルヘイム》編
101/126

#101~白い仮面〜

それからヘラは僕がイエリアの書に触れた時の様子を話してくれた。

イエリアの書に触れた僕は取り乱したり混乱した様子を見せる事は無く、気付くと瞳から涙を流しその場に立ち尽くしていたらしい。


そして不思議な事に僕は母さんが見た悲惨な未来と自分が何者であるか、そして自分には妹が存在しオーディンによってこの場所、死者の国(ヘルヘイム)に幽閉されている事を何一つ疑う事なく素直に受け入れていたようだ。


そんな僕の姿を見た管理し続ける者は、なぜ僕が何も疑う事なくその話を素直に受け入れたのか、なぜ瞳から涙を流しながらその場に立ち尽くしていたのかについて訳を聞くと、僕は『母さんに会った』と答えたそうだ。



「僕が母さんに…?」


「お兄様がお母様のイエリアの書にふれた瞬間、意識がどこか別の場所へと移動し気付くと目の前に一人の女性が立っていたそうです。目の前に立っているその女性を見た瞬間、お兄様はその女性が自分の本当の母親だと直ぐに分かった仰っていました。」


「そっか…僕は母さんに……。」


「はい。それからお兄様はお母様から自分自身が何者なのか、これから起こりうる悲惨な未来と私という妹が素材しオーディンによってこの死者の国(ヘルヘイム)に幽閉されている事を教えてもらい、その事をお兄様に知らせたお母様は最後に『妹の事を守ってあげて』と最後に言い残し、気付くとお兄様の意識は元いた場所、聖域に戻っていたそうです。」



僕はヘラから母さんに会ったという話を聞いて、心がポッと温かくなると同時に瞳が少し潤んだのを感じた。



「それからお兄様は自分のこれまでの行いと態度をスリュム王と管理し続ける者に謝罪し、これからどうして行くべきかを時間が許す限り話し合いをした結果、ヨトゥンヘイムは当初の予定通りヴァラマ条約を結び表向きは友好関係を構築。お兄様はこれまで通り新円卓の騎士としてヴァラマ帝国で過ごしてもらい、その傍ら死者の国(ヘルヘイム)に関しての情報やヴァラマ帝国の内部事情、そしてオーディンやトールに関しての情報を集め、死者の国(ヘルヘイム)に幽閉されている私を救出する機会を待つというものでした。」



死者の国(ヘルヘイム)に妹のヘラが幽閉されている事を知り、その場所がどこにあるのかを特定し救出に向かったとしても、ヘラはオーディンによって呪縛が施されており死者の国(ヘルヘイム)から出る事はできない…。


当時、この死者の国(ヘルヘイム)を管理しているのは神柱最高神であるオーディンだ。

もし仮に僕がヘラを救出しに行ったとなれば、必ずその事がオーディンの耳に入る事は間違いない。なぜオーディンが妹のヘラをこの死者の国(ヘルヘイム)に幽閉しているのかは分からないが、もし僕とヘラが顔を合わせる事によって何かしらの不利益が生じる事があるとすれば、僕はともかくヘラの命も危うくなる可能性がある。


それにヨトゥンヘイムがヴァラマ条約を承諾し表向きは友好関係を築いていたしても、僕が最終勧告者としてヨトゥンヘイムを訪れた後にそういった行動をとってしまえば、少なからずヨトゥンヘイムも何かしら関わっているのではないかと疑いを持つ者が出てきてもおかしくはない…。

そうなってしまえば、せっかく滅亡という悲惨な未来を開始した意味がなくなってしまう。


となれば、ヨトゥンヘイムはヴァラマ条約に承諾し表向きは友好関係を構築し、僕はこれまで通りヴァラマ帝国で過ごしながら情報を集めヘラを救出する機会を待つという三人の出した考え以外、他の選択は無いだろう。



「確かに、条約を結んで仮にこの場所がどこにあるのかを突き止めてヘラを救出に向かったとしても、その直後じゃさすがにオーディンに怪しまれるか…。」


「はい。せっかくヨトゥンヘイム滅亡の未来を回避し、お兄様自身が何者か、そして私という妹の存在を知り可能性という未来を切り拓いた事が全て無に返ってしまう恐れがあります…。そしてこれから先の事を話し合った後、スリュム王は眠らせた兵士を起こすと、記憶を”お兄様達が聖域に訪れた直後”、”聖域にはスリュム王のみが存在していた”という認識に改ざんし、その後、兵士達の目の前でお兄様は最終勧告者としてスリュム王に条約の承諾を求め、それにスリュム王は条約書にサインし無事に条約を結んだところ見せ、その日はヨトゥンヘイムを後にしヴァラマ帝国へと帰還しました。」



それからしばらくは新円卓の騎士として活動する傍ら、妹のヘラを救出する為の情報を集めながらヴァラマ帝国で過ごして行く…というわけか。


それにしても自分自身が何者なのか、そして自分の両親の命を奪った相手が自分の仕えていたオーディンだと知りながら知らん顔をして仕えるのは、想像するだけでもはらわたが煮え繰り返そうなものだが当時の自分はよく耐え忍んだもんだ…。


今の僕が当時の自分の立場ならどうなっていたことか…。

おそらく感情に任せて復讐に走っていたに違いない…。



「じゃあこの死者の国(ヘルヘイム)の場所を見つけて、ヘラと再会を果たすのはもう少し先…って事か。」


「お兄様がこの場所を見つけ私と再会を果たすのは、ヴァラマ条約を結んだその日から数年後になります。」


「数年後!?」


「はい。条約を結んだその日から数年後と聞けば長い月日に感じるかもしれませんが、その間お兄様は着々とこの死者の国(ヘルヘイム)やヴァラマ帝国の内部事情、そしてオーディンやトールに関する情報を集めていき、その情報を元にスリュム王と管理し続ける者と定期的に密会し作戦を練り、ヨトゥンヘイムと同じくヴァラマ帝国に対して敵対心を持っている国や多種族に呼び掛け、対ヴァラマ連合を組織しました。」


「対ヴァラマ連合…。」


「日に日に加盟する国や多種族は増えて行き、更には多次元大厄災マルチディメンショナル・ウォー以前からオーディンの事を良く思っていない神や天使までもが連合に加盟し、気付けば対ヴァラマ連合はヴァラマ帝国に匹敵する程の力を持った規模にまで成長しました。」



わずか数年の間にヴァラマ帝国に匹敵する程の連合を作り上げるとは…。

もはやその規模にまで成長すると連合というよりも、対ヴァラマ国家と呼んだ方がしっくりくるのは僕だけだろうか?



「数年の歳月を掛けて対ヴァラマ連合を組織したお兄様は、組織した連合の情報網や”帝国内部の内通者”の協力を得て、ついにこの死者の国(ヘルヘイム)の場所を突き止め私の元へと来てくれました…。再会してからは先ほどお話しした通り、私を見付けたお兄様は勢いよく私の元へ駆け寄ると、私の事を強く抱きしめて他者の温もりを教えてくれたんです。」



そう話すヘラは先ほど同様に再会した時の事を思い出しているのか、その表情には笑みが溢れていた。



「そして私達は再会するまでの間に起きたお互いのこれまでの事について話しました。もちろん、私にオーディンによって呪縛が施されこの死者の国(ヘルヘイム)から出る事ができない事も…。会えた事は嬉しかったですが、死者の国(ヘルヘイム)から外の世界に出る事が出来ないという事に絶望している私にお兄様は優しと自身に満ちた笑顔でこう言ったんです…。『お兄ちゃんに任せろ』と。」


「『お兄ちゃんに任せろ』って事は…。当時の僕はヘラに掛けられた呪縛を解く方法を知っていた?」


「はい。お兄様は私と再会するまでの数年の間に、私が幽閉される際にオーディンによって呪縛が施され死者の国(ヘルヘイム)から外の世界に出る事ができないという情報を掴み、その呪縛を解く方法も見付けていました。」



オーディンがヘラに施した呪縛を解く方法を見付けていたとは…。

そういえば、さっきヘラが話していた時に”帝国内部の内通者”と言ってたけど、その内通者の協力もあってヘラに掛けられた呪縛を解く方法を見付けられたって事なのか?


もしそうだとすれば、その人物はオーディンやトールに近しい存在、または新円卓の騎士やそれに近しい地位を持った人物の可能性が高い…。

そんな危険を冒してまで当時の僕に協力してくれ流という事は、オーディンやトール、またはその他の人物や帝国自体に何かしらの恨みを持っていた人物に違いない。


そしてヘラは、”死者の国(ヘルヘイム)の外に出た事は一度もありません”と言っていた。

つまり、僕はその呪縛を解く方法を見付けたが何かしらの問題、または障害が発生しヘラに掛けられた呪縛を解くまでに至らなかった…。っという事になる。



「じゃあそれから僕はヘラの呪縛を解く準備を?」


「いえ、お兄様は直ぐにでも私に掛けられた呪縛を解きたいと仰っていましたが、私に掛けられた呪縛を解く事は一筋縄ではいかないらしく、その場では…。ですが、お兄様は私に必ず呪縛を解くと約束をしてくれました。そして呪縛を解くと約束をした後、お兄様は私にこれを渡してくれました。」



そう言うとヘラは魔法陣を展開させその中から”白い仮面”を取り出すと、取り出したその”白い仮面”を僕へと手渡したのだった。

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