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僕は異世界の君に恋をした。  作者: リアラフ
死者の国《ヘルヘイム》編
100/126

#100〜管理し続ける者〜

「可能性に満ちた新たな分岐点…。」



それは本来、僕達に待ち受ける悲惨な未来を見た母さんが阻止して作り出した新たな時間軸。

つまり母さんは”本来あるべき道に可能性を加えて未来を変えた”という事だ。

もしこのまま本来あるべき道を進み、母さんの故郷でもあるヨトゥンヘイムを滅ぼし、実の妹を手に掛けた僕はその後どういった人生を歩んでいたのだろう…。


きっと僕は真実を知らないま、両親と妹の仇でもあるオーディンとトールに忠誠を誓いヴァラマ帝国の真円卓の騎士として過ごしていたに違いない。



「そしてお兄様はオーディンの命でヨトゥンヘイムの民に条約を結ぶよう、最終勧告者として複数の兵を引き連れてヨトゥンヘイムを訪れました。」


「そこで僕は母さんの生涯と願いが記されたイエリアの書を?」


「はい。そこから先は先ほどお話しした通り、お母様の生涯と願いが記されたイエリアの書に触れた事によりお母様がヴィジョンの能力で見た悲惨な未来、お兄様が一体何者なのか、そして私という妹が存在しオーディンによって死者の国(ヘルヘイム)に幽閉されている事をお兄様は知ったのです。」



僕がオーディンの命で最終勧告者となりヨトゥンヘイを訪れたとこまでは分かったが、僕はどうやってイエリアの書に触れたのだろう?


話を聞く限りでは本来あるべき道筋に可能性を加えなかった場合、僕は条約を拒んだヨトゥンヘイムの民を滅ぼす行為に至ほどの冷酷さを持ち合わせているときた…。

恐らく神柱最高神であるオーディンに絶対なる忠誠を誓い、真円卓の騎士としての責務を全うしている存在なのだろう…。


仮にヨトゥンヘイムの民が訪れた僕にイエリアの書を渡したとしても、それを素直に手に取るとは思えない…。



「でもどうやってヨトゥンヘイムの民は僕にイエリアの書を?話を聞く限りじゃ、イエリアの書を手渡されたとしても素直に応じるとは思えないけど…。」


「確かにお兄様の言う通り、仮にイエリアの書を手渡されたとしてもお兄様は素直にそれを受け取っていなかった事でしょう。ですが、お母様が自身の生命力を糧にイエリアの書に願いを託したおかげでその心配は無くなったのです。」


「というと?」


「古よりヨトゥンヘイムにある聖域、”ヨトゥンハイメン”には始祖の巫女から歴代の巫女に関するイエリアの書がある事は先程お話しましたよね?そしてその聖域には歴代のイエリアの書を管理する者が存在します。」


「管理する者?」


「その者を”管理し続ける者”とヨトゥンヘイムの民は呼んでいます。」


「管理し続ける者…。」


「聖域の管理者である”管理し続ける者”は、その名の通り始祖の巫女から歴代の巫女のイエリアの書を管理し続けている存在です。そして管理し続ける者は普段人前に姿を表す事は無く、巫女の力が継承された時のみその姿を現すと言われており、それ以外の事は謎に包まれた存在です。」



始祖の巫女からイエリアの書を管理している存在で、その姿を現すのは巫女の力が継承された時のみときた…。それ以外の事は謎に包まれているといい管理し続ける者の正体とは一体…?

まさか不老不死の存在とでもいうのか?



「幾つか例外はありますが、管理し続ける者だけが唯一イエリアの書を閲覧する事ができるのです。」


「唯一、イエリアの書を閲覧する事ができる存在か…。」


「お母様のイエリアの書を閲覧した事によって管理し続ける者はこれから起こりうる全貌を知ったと同時に、お母様がイエリアの書に託した願いも知りました。それから管理し続ける者はこれから起こりうる悲劇を回避すべく、ヨトゥンヘイムの王である”スリュム王”を聖域に呼び出し、特例としてお母様のイエリアの書の閲覧を許可しました。そして管理し続ける者と同じくこれから起こりうる事、お母様がイエリアの書に託した願いを知ったスリュム王は、悲劇の未来を回避しその願いを叶えるべく管理し続ける者と協力して対策を講じる事になりました。」



管理し続ける者とヨトゥンヘイムの王であるスリュム王が協力し、対策を講じた事によってその悲劇を回避し母さんの願いが叶ったというわけか。



「それで管理し続ける者とスリュム王が講じた対策っていうのは、一体どんな対策だったの?」


「それは、ヴァラマ条約に承諾するというものでした。」


「!?」



まさかこれから起こりうる悲劇を回避する為の対策がヴァラマ条約に承諾する事だったとは…。

だが考えてみれば、条約を承諾する事が例えオーディン側の思う壺だったとしても条約を承諾する事によってヨトゥンヘイムが滅び、僕が実の妹であるヘラを手に掛けるという未来を回避できる。

それに承諾に応じた事によってヨトゥンヘイムを訪れた僕や複数の兵士も多少なりとは警戒を解き、心に隙が生まれ僕が母さんのイエリアの書に触れる機会を作れるという事か。



「まさかその未来を回避する為に講じた対策が、ヴァラマ条約を承諾する事だったなんて…。」


「私もその話を聞いた時はお兄様と同じで驚きました。ですが、条約に承諾する意思を伝えた事によって訪れたお兄様の警戒を無事に解く事に成功したのです。それからスリュム王はお兄様と複数の兵士をヨトゥンヘイムの中へと招き入れ、聖域であるヨトゥンハイメンへと案内しました。」


「聖域に!?」


「はい。ヴァラマ条約に承諾する事によってこれから起こりえる悲劇は無事に回避する事に成功し、お兄様の警戒を解く事には成功しましたが、それだけではヨトゥンヘイムの滅亡を回避しただけに過ぎません。スリュム王と管理し続ける者にとって何よりも優先すべき事は、ヨトゥンヘイムの滅亡よりもお兄様にお母様のイエリアの書に触れさせて自分が何者か、そして私とい存在がいる事をお兄様に知らせ巫女の力を引き継いだ私と、お母様から生まれたお兄様の命を守る事でした。」


「ヨトゥンヘイムの滅亡よりも僕達の命を…?」


「はい。産まれ方は違ったとしても私達は巫女であるお母様から産まれた子…。その事実が何よりもヨトゥンヘイムの民、スリュム王、そして管理し続ける者にとって大事だったのです。そしてスリュム王自らの案内で聖域であるヨトゥンハイメンの中へと案内されたお兄様と複数の兵は、聖域の管理者である管理し続ける者と対面する事になります。」



ついに管理し続ける者と…。



「スリュム王は、管理し続ける者と対面し油断しているお兄様達を魔法で拘束し、お兄様以外の兵士達を眠らせました。それから管理し続ける者は拘束されているお兄様の元へ行くと、その手にお母様のイエリアの書を触れさせる事に成功しお母様の願いは叶ったのです。」

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