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到着と行動開始

やっと大陸に到着しました。

文章量だけで見ると孤島を出るだけで小説一巻分の文量になってるんですよね……いや予想以上に長かった。


「ここまで来ればもう大丈夫ですかね」


レヴィアタンを背後からの不意打ちで気絶させた後、会話もそこそこに蒼一とブリ雄はレヴィアタンが復活する前に海を離れ、視界を遮る事の出来る森に降り立ったところでようやく人心地つく。


「ふぅ……助かったよブリ雄。にしても転移して直ぐに良くあの状況を飲み込めたもんだな?」

「瞬間的に流し込まれた魔力の量的に咄嗟に合図を送って来た事は分かったので緊急事態だというのは予想していましたからね。蒼一様がそれだけ慌てていたとなれば海神が相手、ならば海上に出る事も予想通りでしたし」

「俺が魔力を流してぶん投げてから転移してくるまでそんなに時間的猶予も無かったろうに、良くもまぁそこまであの一瞬で判断出来たな」


蒼一が石杭に魔力を込めて投擲してからヴィアタンにそれを躱され、ブリ雄が転移してくるまでの時間は五秒にも満たない僅かな時間だった。

その時間的にブリ雄は合図を受け取ってから殆ど即断即決で転移魔術でこちらに飛んできた筈なのに、それだけの時間でそこまで判断したというなら驚異的という他ない。


「さて、色々と想定外な事はあったけど無事に西の大陸に着けた事だし、これからどうする?」

「当初の予定通りまずはモンスターを何体か狩ってから行きましょう。私達は金銭の類を持っていないですからね。換金できる物は必要です」

「おぉーそれはアレだな。滅茶苦茶強い魔物をカウンターの前に置いて周囲がどよめく中、俺なんかやっちゃいました的なそういう奴」

「いえ、その手のモンスターを出すと鑑定等が入り換金に凄い時間が掛かるので、最悪翌日に換金される可能性もありますからここは直ぐに換金出来るモンスターにしましょう」

「あ……うん、そっか、そうだよな」


テンプレ的な展開を期待してた蒼一だったが、ブリ雄から返って来た至極真っ当な意見に意気消沈する。

ブリ雄も可能なら蒼一の願いを叶えたいとは思うが、金が無ければ宿も取れなければ食事も出来ない以上、それを遅らせてまでやる事かと言われると流石に頷く事が出来ない。

ここでもし蒼一がそれでもというのならブリ雄も従っただろうが、流石の蒼一もそこまで馬鹿では無いので大人しく引き下がる。


「直ぐに換金出来るモンスターも一緒に倒して、直ぐに換金して貰える方だけ換金して貰うって手段がない訳ではないですが、意思疎通がまともに出来るかも怪しい中でそんな交渉事をする訳にもいかないですからね」

「それもそうか……下手に換金に時間が掛かる奴と一緒に持ち込んで、後日纏めて……なんて事になったら面倒この上無いしな」


この後日が一体何時になるのかも蒼一達が理解出来るのかも怪しい以上、下手に価値のあるモンスターなんて持ち込めば時間は勿論買い叩かれる可能性だって十二分に有り得た。


「兎に角、日が暮れる前に街を目指しましょう。最悪、野宿する事になったら島に戻る手もありますが、可能な限り街に入りそこで暫くの活動拠点が欲しいですからね。言葉を覚えるにしても早いに越したことはないですから」

「はぁ……異世界の街に行ける!って出発当初は割とテンション高かったんだが、言葉の壁が目の前に立ちふさがるのかと考えるだけですげぇ行きたくなくなるな」

「じゃあ島に帰りますか?。最悪食料になりそうな物だけ獲って帰るって選択肢は私的には有りですが」

「嫌だ!ここまで来たんだから街には行ってみたい!」

「そう仰ると思いました。では行きましょうか」


子供みたいな理屈で話す蒼一を引き連れ、ブリ雄は森の中を進んで行く。


「索敵は蒼一様にお願いして良いですか?。私がやるよりも確実でしょうし」

「良いぞ。ただ生き物かどうかの判断は出来るが、モンスターかどうかってどうすれば見分けられるんだ?」

「それに関しては私も似たり寄ったりですので、兎に角比較的大きな反応が在ればそちらに向かう感じでお願いします」

「分かった」


そんな感じでザックリとした指針に従い、行動を開始した蒼一とブリ雄は換金出来るモンスターを探して緑生い茂る森を進み、道中食べれそうな木の実なども採取しつつ、大きな反応を探し回るもそれらしい反応は未だない。


「こんだけ木々の生い茂ってる森だと、大きなモンスターとかは居ないのかもな」

「確かに、居たとしても精々二メートル程度が限界ですかね」

「五十センチとかそれくらいの反応なら結構あるんだよなー。ただ今までの経験からして小動物っぽいけど――お?」


不意に足を止めた蒼一に、ブリ雄が疑問符を浮かべる。


「どうしました?」

「いや、なんか今までとは明らかに情報の密度が違う奴が居てさ。なぁブリ雄、この世界のモンスターって魔石とか所謂核みたいなものが有ったりするか?」

「えぇ、それは有りますが……もしや」

「どうやらそれっぽい反応を持ってる奴が居るんだよな。身体の中央に拳大の情報の塊がある。多分これが核だ」


となれば話は早いと二人は早速その反応がある方へと向かい、目当ての存在を直ぐに見つけた。

体長八十センチ、四足歩行で一見硬そうに見える外皮はアルマジロに良く似ているが、外見はアルマジロというよりもネコ科に近い。


「ブリ雄、あれなんてモンスターか分かるか?」

「外見は知ってる魔物ですが、残念ながら名前は分かりませんね。外見と名前の知識が一緒に出てくるモンスターって案外少ないんですよ」

「そっか、どんなモンスターか分かれば素材になりそうな部位とか気を付けて戦えたろうに……どうすれば良いと思う?」

「取り合えず外皮は素材になりそうですね。肉は……どうでしょう、そっちは微妙ですが牙や爪辺りは素材になるでしょうから、胴体狙いで行きますか」

「了解、んでどっちがやる?」


そうブリ雄に問う蒼一だったがその表情にはやる気が満ちており、ブリ雄もそれを察して蒼一に譲る。


「蒼一様がどうぞ。特に繊細な力加減が必要なモンスターでもないですから、思いっきりやっちゃってください」

「任された!」


待ってましたと言わんばかりに蒼一は茂みから飛び出すとネコっぽいモンスターの目の前へと躍り出る。

突如目の前に現れた蒼一にビクリと驚いたような反応を見せるモンスターだったが、蒼一が自分に相対して構えているのを見て、直ぐに敵と判断して臨戦態勢に入った。


「シャァ!」

「っと」


地面を抉り取る程の強烈な踏み込みから振るわれた前脚の一閃を危な気無く避け、蒼一は横に回り込むと軽く力を入れて外皮の上から殴りつける。

殴りつけた瞬間、拳に反発するような感覚を覚え外皮に衝撃が吸収、跳ね返された事に気付く。


「単純に堅いだけって訳じゃ無さそうだな」

「蒼一様!外皮への攻撃は可能な限り避けてください!」

「あぁ、分かってるよ!」


異世界転生してからモンスターとの初戦闘、もう少し楽しみたいという気持ちもあったがこの後にも街を目指し、換金して宿を探すという目的が残っている以上、ここで時間を無駄にする訳にもいかない。


(この肉体と世界としての処理能力があれば俺みたいな素人でもそれなりに戦えるってのも分かったしな。これで十分だろ)


一歩下がった蒼一めがけモンスターが前脚を振るい、それを再び避けられても即座に追撃のもう一撃を叩きこもうと飛び掛かるも、肉体も判断速度も上回る蒼一に敵う筈が無く、追撃と放った一撃にカウンターを重ねられ、外皮の無い胸部に蒼一の拳がめり込み、次の瞬間モンスターの身体が肉片となり飛び散った。


「げぇッ!?」


少し本気で力を入れたとはいえ、まさか粉々に砕け散るとは予想だにしていなかった蒼一は突き出した拳を反射的に引っ込めて距離を取る。

幸い、打ち砕かれた衝撃で肉片の殆どが後方に吹っ飛んだため、蒼一は返り血を浴びるような事は無かったが、それでも目の前でモンスターが肉片になる光景は自分でやった事とはいえ正直トラウマになりかねない程にスプラッタな光景だった。


周囲に立ち込める血の匂いに蒼一が眉を顰めていると、ブリ雄が蒼一の傍まで近づいて生きた。


「大丈夫ですか?」

「あぁ、怪我はこの通り問題ない。返り血に関しても全く掛かってないし――」

「いえ、そういう物理的な意味ではなく」

「え?――あぁ、なるほど」


ブリ雄が何を言いたいのかを理解した蒼一は、静かに目を瞑り考える。

この手の物語で異世界にやって来て初めて魔物を倒した主人公、個人差はあれど生き物を殺したという事実に震える主人公達の話に、生前の蒼一はそんなものだろうかという疑問を抱いていた。

直接手に掛けたのは初めてかもしれないが、人間なんて生きている内に何千、何万という命を間接的にでも奪っているのだからそこまでショックを受けるような事は無いだろうと思っていたし、人間は兎も角害意を持つモンスターが相手なのだからそんな気にする必要もないだろうにと随分と冷徹な思考も持っていたが、しかし


「こうして実際にやってみると、何ともまぁ後味が悪いというか……命を奪ってごめんなさいとかそんな形だけの謝罪なんて並べるつもりは無いけどさ。命を奪うって行動に善も悪も関係ないんだなって、そう思うよ」

「つまり?」

「思ったよりショックは受けたがそれだけだ。ブリ雄が心配する必要はないよ」


全く何も感じなかった訳ではないが、所詮はそれだけだ。

それは蒼一本来の気質故か、世界として人間的な意識が薄くなってしまっているのか、それは分からなかったが少なくともこれで蒼一が心に傷を負う事は無いと知ったブリ雄はそのままモンスターの索敵を蒼一に任せ、二人はモンスター狩りを続行するのだった。

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