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管理神と創造神

前話が長かったので今回は短め。

サブタイに【!】を入れるか迷いましたが、全作品共通の設定というよりは創造神が主人公の物語の設定になるので無しです。

真っ白で天井も壁も無い空間に白を基調とした椅子と机が置かれ、そこに二柱の神が向かい合うように座っていた。


「今回は助かった。悪かったな、急に呼び出して」

「構わんさ。部下にも暇を出して俺もやる事が無かったからな。俺としては息抜き出来て助かったよ」

「呼んだ私が言うのもなんだが、お前大丈夫か?」

「うん?――あぁ」


一瞬何の心配をされているのかと考えてしまった創造神だが、直ぐに何の事かを理解し苦笑いを浮かべる。


「堕し児の一人や二人増えたところで今更だろう。俺はこれまで何十人という堕し児達と関わって来たからな」

「物好きな……お前、死ぬぞ?」


冗談でもなく真顔で死ぬぞと警告されたというのに、創造神は相変わらず苦笑いを浮かべ続けていた。


「そいつはお互い様だろうに、そんな警告するくらいなら何で蒼一の前に顔を出したんだよ」

「それは、アイツが不用意に始源を使おうとしたからだ。それを止める為に致し方無く」

「じゃあ今日顔出したのは?あれ明らかに不必要だったろうが、あんな調子で堕し児と関わってたらお前も道連れにされるぞ」

「……そうだな」


言い淀んだ管理神を見て、創造神は嘆息する。

忠告した程度で性格を矯正できる筈も無く、世話焼きのコイツはまたきっと蒼一の手助けをしてしまうのだろうなと思いながら、創造神は難儀な性格をした友神に笑みを向けた。


「どうして俺達は自分の命は蔑ろにする癖に、他人の命は大切にしてしまうんだろうな」

「"達"とはなんだ"達"とは、私をお前のようなお人好しと一緒にするな」

「はいはい、分かったよ」

「……ふん、分かれば良い」


鼻らを鳴らしてそっぽを向く管理神の横顔をニンマリとした笑みを浮かべたまま見つめていた創造神だったが、不意にその笑みを消す。


「なぁ、蒼一と一緒に居て何か違和感を感じなかったか?」

「違和感とは具体的に何だ?」

「具体的と言われると困るな。ただ他の堕し児と比べて違和感があったというか」


そんな曖昧な言葉を返す創造神に、管理神も困った顔をする。


「悪いが私は堕し児と関わったのは彼奴が初めてだからな。違和感と言われても比べる対象を知らぬのだが……彼奴はあの傍迷惑な学者の小僧によってこの世界に連れて来られたのだろう?。その時点で他の堕し児と違ったとしても不思議ではないというか、むしろ違いがあって当たり前なのではないか?」

「アイツに魂を弄り回された堕し児とも会った事はあるが、その中でもとびっきりに違和感があるんだよ、蒼一は」


その違和感の正体を創造神は上手く言葉に出来ないし、藪蛇になっても嫌だと創造神は敢えてそれについて探るような真似はしなかったが、それ以上にそうしなかった理由があったからだ。


「少なくても悪い物じゃ無さそうなんだよな」

「違和感の正体も分からないのに、悪い物じゃないと断言出来るのか?」

「俺の感だけど、少なくても蒼一にとっても俺達にとっても悪い違和感じゃないと思うんだ。根拠は無いが」

「それで良くもまぁ自信満々に言えたものだな」


全くの無根拠でどうしてそこまで自信を得られるのかと管理神が呆れた顔で創造神を見つめる。


「今まで堕し児だけでなく、忌み児や申し児とも散々関わって来たんだ。それに――」


創造神が最も違和感とし感じ取ったその感覚、創造神だからこそ理解出来たその感覚を言葉にする。


「蒼一は今まで出会ってきたどの堕し児と比べても、あの人(・・・)から一番かけ離れてると感じるんだ」

「……そういえば、お前は一度会った事があるんだったな」

「適当にあしらわれた挙句、一方的に駄目出し食らっただけだがな」


まるで愚痴のようにそう零した創造神だったが、その言葉とは裏腹に表情はどこまでも穏やかでそれどころか笑みすら浮かべていた。

それは普遍的な管理神でしか無かった自分が創造神と呼ばれるようになった由縁、今でも昨日の出来事のように思い出せる自分の原点(オリジン)


"――目的が無いなら創れば良い。お前達管理神はそれが出来る存在なのだから"


創っては壊す、それしか知らなかったあの頃の自分に向けてあの人が言い放った何気ない言葉、あれが無ければ創造神はきっとここに居る事は無かっただろう。


「…………羨ましい」


零れ出た管理神のその羨む言葉に創造神は苦笑した。

あの人と出会えた事、それが自身のターニングポイントだった事に違いはないし、そんな機会を得られなかった管理神が自分をやっかむ気持ちも理解出来たから、創造神は曖昧な笑みを浮かべるだけで甘んじてその気持ちを受け止める。


(でも蒼一なら、きっとコイツを――)


そして自身の視線の先で不貞腐れる友神にもそんな転機がやっと訪れた事に心の中で祝福するのだった。






――例えそれが、自分達管理神にとって破滅の引き金になるとしても。

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