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「まずこちらをご覧ください。先週こちらに戻られてから若奥様宛に"名指し"で届けられた面会希望のお手紙と、個別にお願いを書き連ねた信書の数々でございます」
不本意だが元は自分の蒔いた種。ついついしょぼんとしてしまうミナヅキ。
「若奥様が無自覚にも何らかの偉業を成し得る度に増え続け……お喜び下さい、今や国中の国民が若奥様の大ファンでございます! 狙ってやっても中々(なかなか)どうして……こうはならないでしょうねぇ、これで当の御本人様はゆっくりする気とかホント信じられない!」
リンクスの言葉ひとつひとつが的確にグサグサとミナヅキの心に突き刺さる。
「うぐぅ!」
文箱に高く積まれた紙資源……ゲフンゲフン、もとい皆様方の心の籠ったお手紙の数々を目に入れない様に横を向くとミナヅキはそれを触りもせずに話題を変えようとする。
「あー、今夜はシドさんは遅いのかなぁ? あはは……」
「そんな事で誤魔化されたり致しませんけど、シドニール様は旦那様と共に御一家で通常業務と今回の件の後始末に奔走中ですから今日中にお帰りになられたら良い方で御座います。」
「はぅ! なんたる針のむしろ!」
結局どの、話題にふったとしても着地点はさほど変わらない様だった。
「もう開き直って、変装でもして世直しで諸国漫遊の旅とかしてみたら良いんじゃないですかぁ?」
「うぅ……最近のリンクスは言うことが辛辣!」
「わたくしも色々考えさせられたので御座いますよ? 若奥様」
ジェネッタに続きここでも盛大に眉間にシワをよせてため息をつかれている。
「あなた様は、普通のご令嬢の枠には当てはまらない型破りな方ですから、わたくしここはあえて若・奥・様とお呼びしておきます。他一般の奥方様達のように大事に屋敷の奥にしまわれて、真綿で包まれておしまいになれば此方も随分楽になりますけどね、貴女様にはおできにならないでしょう?」
「ぐぅ……」
辛うじてぐうの音のぐうは出たけどその通りすぎて胸をおさえて辛そうな若奥様ミナヅキ。
またため息をつくリンクス。
「てへっ」
「もー、少しは大人しくしてくださいませ!?」
何かを喚きながら部屋から出ていった。
「リンクスは、あんなに気が短くて将来禿げないのかな?あたし心配になってきちゃったよ。あとで毛髪育成魔法でも考えとくかなー」
などと余計な事をつぶやいては無意識に暇を潰す。




