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「二人とも座って……ほら享も」


 テーブルの上には見慣れない武骨な料理が並んでいた。

「……」

「享、たくさん食べるのよ♪」


 懐かしい食卓なのに日本ではみたこと無いメニューが並ぶ……ひしひしと感じる違和感。


「ねえ、お父さん……おじいちゃんは?」



「何をいっているんだ!? うちは元々三人家族じゃないか!」

「そうよ? この子ったらおかしな子ね。ふふふふ……」

 目を合わせてにっこり微笑む両親の姿にいよいよ怪しさがこみあげてくる。




 下を向き膝の上で拳を握りしめる。


「はぁ……もういいよ」

 何かが吹っ切れた様にあきらめたミナヅキは自分の手首に繋がれたリボンを引きちぎると立ち上がり、辺りを眺める目はとても苦々しい。

「ああ! 折角の繋がりを! 何をするの!!」


 ミナヅキは二人に背を向けたまま呟く。

「ねえ……父さんとお母さんに夢でももう一回会えた事は貴方達に感謝しても、しきれない位なんだけどさ、こんなのって無いんじゃないかなぁ?」

「あんた達あたしの記憶を勝手に覗いた上にそれを再生して? あたしのかけがえのない家族をいじり倒して夢と現実をさごっちゃにしてくれた訳よね? もう許さないけどいいかな?」


「何を言っているんだ! お前は!」

 さっきまでとは違い、かぶっていたものが(あば)かれ()がれかけ、目付きが醜悪なものに変化している


(すめらぎ)……」

『……あい』

 怒りで魔力が(たぎ)っているのでミナヅキの輪郭が揺れている。ポケットから刀を引き抜くと魔力を乗せて力の限りぶん回す。

 一閃……


 かき集めた魔力を使いミナヅキの心に介入することで可能にしていた幻惑魔法が硝子の様に粉々に砕けて落ちる。

『ひぃぃ……あなた!』

『黙れ! ダマレ! だまれぇ!』

 それまでの景色は失われる。と、そこはいつもの見慣れた宮殿。懲りない老人とそれに寄り添う知らない婦人が腰を抜かして床に尻餅をついていた。


「ねえ、おじいさん、あたし何回も言ったよね? いい加減あきらめて! って……今日は許さないから」

(やかま)しい! 平民が!』



 刀を構えると言葉をつむぐ……。

「この空間にいるいつまでも懲りない老人とそれに手を貸す愚かな人を懲らしめたいの。もうそんな悪さが出来なくなる様にこの人達から余計な魔力を消し去りたいの。切り取って消去……そうね、カッティング!」


 ミナヅキの背中を突き破る勢いで羽根が飛び出し四方八方に、舞い散るとそれをぶったぎるように皇を振るうと二人の魂がどんどん削られていき不必要な(まほう)が全て霧散していく。


『いやぁぁぁ!』

『うぎゃぁ!』




「散々見下してくれたあたしに遣り返されて惨めに消えて、どうぞ!」


 皇を床に突き刺すとその世界が大きく揺れると地割れを起こす。余計な物を全て飲み込んで消えていった。地面が無くなることになったミナヅキだが、背中の羽根が作用したのか、その他の瓦礫(がれき)と自由落下を始める訳でもなかった。


「もうここに来ることが無いとか、ようやく安心して眠れるよね……うん」

『主様……寂しそう』

 ミナヅキの目は虚ろを見ている。

「あたしの記憶を使ってたからだと、思うけど、あんまりにも精巧だったから一瞬さ、完璧に元の世界に帰れたのかと誤解しちゃってるあたしがいて、見事に策略にハマってたから、その影響?あはは、あれ結構キツいね……」

 込み上げる気持ちと、逆撫でられた思いの分だけ無性に会いたくなってしまった。




「帰りたい……シドさん」


 ミナヅキの姿が一瞬揺れると消えていく。



「シドさん!」


 自室のドアを乱暴にあけるとそこには、グランとシドがリンクスからの報告を受けていた。


「ちょっと! うわぁ!」

 ミナヅキはシドの背中に目掛けてしがみつくと勢い余って一緒に倒れこんでしまった。


「おやおや……うちの息子夫婦はラブラブだねぇ……」

「若奥様!どこにいっていたのでしょうか!?」



 その後一週間シドを満喫するまでミナヅキは決してその手を離そうとしなかった。



帰ったのかと思われていた水無月家は偽物でした。やりすぎた二人はおしおきされてしまいました。

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