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しばらくして、王宮からどす黒い怨念が光りと交じると、どこかで何かがカチッとはまると、それが発動した。
あれ以降、隙を見ては家に飛び帰り、共に過ごす様になった二人。
「シドニール様は以前よりも生き生きされておりますね」
「そうか? マリーの気のせい、所謂年のせいではないか?」
「年のせいとは何ですか! レディに向かって失礼ですよ! お坊ちゃま!」
高齢者が自分に対して切り札の様に使っているキーワードをこちらから投げかけるとキレる現象が発動! ようやく上がったシドの呼び名がランクダウンした。
「いつも散々自分で切り札の様にいいつくしているというのになんと理不尽な……」
仲良くケンカしているシドとメイドのマリー。
「ふふふ……できる時にはゆっくりするのも大事ですよね。あ……そうそう、これ見てください」
テーブルの上にあった組み木細工の箱をあけると中にはオルゴールが仕込まれているようだった。
王都の劇場で流行っているらしい恋人に捧げる曲が優しい調べを奏でる。
「ミケ君の所の工房の魔道具が贈られてきたんですが、これがとっても優れもので、見たものを見た人の目線に合わせて音声まで記録して後で再生して見せてくれる不思議なメガネちゃんなんです!メッセージカードに、くれぐれもなくした時の為の予備ですって書いてあって、二つ頂いたんです♪」
色違いのフレームは、まるで夫婦でお揃いになるようにと作られたようだ。
「ふふふ……素直じゃないですよね。多分あの子なりの結婚祝いだと思います」
「それは素晴らしい、作った制作者はともかく比類なき魔道具で有難い品ではあるな……」
とうとう魔道具工房を秘密裏に立ち上げてからというものこんな風に魔道具を貢いでくる様になったミケことミケランジェロに少なからず嫉妬してしまうがそれをあくまでも口には出さないシド。
「ふふふ、それでこれをこうやって……」
「ん?」
「あなたと私の途切れる事のない特別な繋がりをこの魔道具に……付与する」
2つのメガネを繋ぐ七色の光が包み定着して弾けて消える。
片方をシドに渡し、もう片方を自分でかける。
「ほら、こうやればいつでもシドさんと繋がっていられるんです……ずっと一緒にいるみたいでちょっと恥ずかしいけど……うぅ」
シドはもう片方を自分でかけると、寂しさを口に出すことはないけれどそれを埋め合わせる為に、今こうやって赤面してそれを誤魔化し横を向く愛しい人を抱きしめる。
「俺もこれをかけるとミナヅキ、君と何時も一緒にいるみたいだな……嬉しいよ」
「……はい、ずっと一緒です」
見つめあい、気持ちのままに口づけようとするも……
カチカチッ!
「ん!」
「やだ! メガネかけてると、キスする時には邪魔になるんですね! ……ふふふ」
「少しだけ送り主のジェラシーを感じるな」
お互いを思い、愛を育み仲睦まじい姿を目の当たりにする使用人達もそれを微笑ましく見守る。




