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「シドニール様は旦那様と離れでお食事のあとは旦那様とご一緒に王宮でございます」
普段は一人でなんでもこなすが、実家だとそうはいかない。恭しくメイド達がなんでもやってくれる。ミナヅキは自分は庶民だからそれが至極むず痒いとか言っていた。
寝室を出て身支度を整えたら、目を通すべき書類を確認する。そこには結婚と共にいづれ家督を継ぐ為の準備に入る事が書かれていた。
異世界からの迷い人で聖女なのでは?と噂される程の女性を娶ったからには、それなりの立場も必要との事らしい。数年は父グランの補佐を勤めながら、もて余す魔力は討伐に参加していく方針で。
渡り廊下を進み本館より移動する。若夫妻が気兼ねなく本館で過ごせる様にとの心遣いで、コンパクトな離れを新築し、そちらに親世帯が移り住んでいる。
大きめのダイニングテーブルに腰かける。
「父上おはようございます」
「シドニールおはよう」
少し遅れてミナヅキがやってきた。
「おはようございます。お義父様」
「トオルおはよう」
「おはようトオル! 美味しいスープができたわよぉ♪」
リンクスを引き連れてエマニュエラ夫人がエプロン姿で現れた。
「ああ、いい香りだねエマ! 今日のスープはなんだい?」
「今日はトオルに聞いて研究したミネストローネという赤いスープですわ」
「エマ義母様おはようございます!」
皆が着席すると、メイドさんたちが焼きたてパンとサラダにエッグベネディクトがワンプレートになったものとスープ、ミナヅキの歓迎の為に自ら作られたメニューらしい。
「どうぞ召し上がって」
「あなた、そろそろいきますよ?」
「ボク達はもう出かけるけれども、トオルはこの屋敷で寛ぐも良し、もし出かける際にはリンクスを連れて行くといい」
「はい! お義父様」
別れを惜しみ新妻を抱き締める。
「いってくるよ! ミナヅキ早く帰るから待っててね!」
「……うん、いってらっしゃい!」
ミナヅキが回された手に頬擦りしたりするから、シドからしたら堪らない状況になる。
「うぅ……ミナヅキ!」
ガシッ!
マリーがシドの首根っこを捕まえて引き剥がしにかかる。
「お時間でございますよ?」
「ぐ! またか、マリー……何の恨みがあっての事だ!?」
「言いがかりでございますよ? このか弱い老婆に一体何が出来ましょう……嘆かわしい!」
「くっ……離せ! この怪力おばばめ!」
「なんですかぁ? マリーちっともきこえませんよぉ? 年は取りたくないものでございますねぇ!」
ズリズリと引きずられて行く姿を見送るミナヅキ。
「いってらっしゃい……ふふふ、マリーさん強い!」
「リンクスさん、あたしこれから砦に行きたいのですけど。」
「畏まりました。トオル様、これからは私めの事はリンクスとお呼び下さい。」
渡り廊下を自室に向かって進んでいく。
「カニエール君とハレルヤをここで飼う事は出来ますか?」
「屋敷の敷地内であればご自由にお使い下さって良いと旦那様からのお言葉でございます。」
ハイソな廊下は静まりかえりメイドさんの姿もみあたらない。
別キャラの話も少しずつ語っていけたら嬉しいなと思ってみたりですo(*≧∀≦)ノ




