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二人のために拵えられた寝室のカーテンの隙間から朝の光が差し込んで来る。
腕の中ではミナヅキが静かに寝息をたてている。昨日は教会の鐘に止めを刺されたミナヅキが漏れなくダウンしてしまい、花嫁だけが先に退場してしまい、ここで早くから寝かされていた。
お陰で、南方の砦で行われた二次会では、花嫁に逃げられた新郎だ! という体で散々からかわれ、ミナヅキにはアルコール禁止を宣言して解放されたのは夜明け前……、ぐっすり眠るミナヅキの横に潜り込んだシドだったが、ある種の緊張感と解放感に苛まれて、これでも初夜というのに二人して朝まで数時間、爆睡してしまったのだ。
些か情けない気持ちにもなるが、今こうやって腕の中にミナヅキがいる事を神に感謝しつつ、こうして共にあるかけがえのない愛おしい者の温もりを噛み締める。力を籠めたら折れてしまいそうな華奢なそれは、シドに堪らなく幸せを感じさせてくれる。
心に願うのはただ一つ。
「ミナヅキにはもう飲ませない。絶対だ……」
「ん……? シドしゃんだぁ……むぎゅぅ……」
寝ぼけ眼でシドに抱き付くミナヅキを腕の中におさめると耳元で囁く。
「おはよう……トオル」
「ひゃん! 夢じゃにゃい……!」
みるみるうちに真っ赤になって腕の中に隠れてしまおうとする。
「だめ」
ミナヅキの手を掴んで逃がさない。
「にゃぁ……」
「俺にもっとトオルを見せて……」
ミナヅキに微笑みかけ頬にキスする。
「にぁ……恥ずかし……」
イタズラそうにミナヅキの動きを制すると、目線を外さず捕まえている手に口付ける。
「あ……」
「俺のトオルは可愛いな……」
「シドさ……あっ……や!」
ミナヅキの首筋に口づけると耳元を弄ぶ。
「嫌じゃないよね?」
ミナヅキの寝巻きの中に空いた手が捲り込んでいく。
「んん……あぁ!」
「逃がさないよトオル」
「シド……さ、ああ!」
ガチャ!
「朝、で、ご、ざ、い、ま、す!」
ミナヅキは呆然として、シドは何かしら思うところがある様である。
「……マッ、マリー……おま!」
「時間切れでございます!」
マリーはしてやったりとシドを見下すとほくそ笑み、カーテンを次々と開け放って行く。
マリーが指を鳴らすと、その他のメイドさん達が持ち場に付き。粛々と朝の支度をすすめていった。




