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 歩きなれた今ではしっかりと踏みしめられ、道になった通りを進んでいく。


「私は生まれた時から父上の目を借り、この国をただただ傍観し続けていただけだった……」

 森の奥へ更に足を進める。

「こうやって自らの足で歩む事ができ、ありがたい事に語り合える友も得、この国を一人の民として愛し守っていけるこの幸せとは、何と尊いものだろうか」


 歩いていくと森の中の開けた花畑に出た。そこでは蝶が舞い、小鳥が(さえ)ずる。冬の寒さに(おびや)かされる事もない。

 そこは春の香りがしていた。

「さあ、二人とも、お茶にしよう」

 お菓子欲しさに小鳥やリス達に囲まれてご満悦なルディオはとても上機嫌である。

「トオル……これは、楽園の様だな……生きているとは本当に素晴らしい」


 座ってお茶を頂きながらゆっくり春を満喫した。




 ミナヅキはシドにもたれ掛かると空を見上げて口を開く。




「ねえ二人共、きいてほしいんだ」

「ん、どうした?」


「なんだかね、こうしてのんびりお茶している間にもこの国のどこかで、疫病が蔓延してきているかもしれないと思うと落ち着かないのはあたしが庶民だからで? それは間違ってるのかなぁ?」

 ルディオは変わらず小鳥達と戯れている。


「この前の事があってあたしがでしゃばるべきでもないのは分かっているんだけれど」

「ミナヅキ、何を?」

 シドはミナヅキを抱き寄せる。 


「ちょっとここで拡散防止? とかを祈るだけならバレないかな……とか?」

「ミナヅキ!? それは!」

「うむ、それなら気付かれないかもしれないしまだ出始めのこの時期に拡散が止まったとしても民や貴族達は自分達の努力の賜物だと喜ぶやも知れぬし、我々は何も知らぬし分からぬな。ちょうど良くここに力が有り余っている私もいる」

「何言ってるんだ! あんた達は! 一回止まって考えてみてくれよ!」

「シドさん、もしそれが心臓ならば。一回止まればゲームオーバーですよ! 誰かの心臓が止まる前にとっととやっちゃいましょうよ」


「……シドニールよ」

「ホント何なんですか貴方は……」

「ミナヅキ一人だとキツかろうが、私という人の(ことわり)から外れた理外(りがい)の者もおる……。好きなだけ魔力を提供する故に、どーんと安心して見ているがよい」


「だから、お願いです! シドさんあたしの側にいて……」

 シドの顔が思いきり心配で(ゆが)められるも、ここで止めると後で隠れてでもやりかねない……。多分この二人にはその力があるのだから。


「だから……あーもー! 危なくなったらあんた達を全力で阻止するからな! 絶対だぞ!? 俺の仕事はあんた達を無事に砦まで連れ帰る事なんだからな」


「ありがとう! シドさん大~~好き♪」

 許可が得られたら嬉しさのあまり二人で思いっきりハグして感謝してみた。



 ミナヅキとルディオが両手を繋ぐと、思いを込めた光のシャボン玉が浮かんでは消え分裂して粒になって舞っているいく。それは儚く美しい情景。

 ミナヅキは目を閉じて言葉を選んで紡いでいく。一つ一つ丁寧に、間違わないように……。


「疫病をこれ以上広めないための慈しみの溢れた守りが欲しいの、それは目に見えないけれど、疫病がこれ以上悪さをしないように、苦しむ全ての人を影から見守ってくれる、そうそれはまるでお母さんの温もりのように、名付けるならば……慈愛の守り! どうか届けて……」


 二人の輪の中から光に照らし出されたいつか見た不死鳥よりも数段艶やかで立派な美鳥の姿が照らし出されると二人の上を回りながら光の粒達を集めて天に昇ると、一撫でのつむじ風と共に儚く消えていった。




「あれ? せっ成功……したかな?」

「うむ……。見えないように季節の風と共に空を羽ばたいていったから問題なしと見て良いだろう」





『かーちゃ?』

 突如、茂みから飛び出す巨大鳩! じゃなかったメタボ気味の不死鳥ハレルヤがミナヅキの顔面を襲う!


「いた! 痛い!」

『かーちゃ! どこ!?』

「へ? あの不死鳥さんは、ハレルヤのお母さんだったの?」

『かーちゃ! かーちゃ!』

 ハレルヤミナヅキの頭の上で恋しそうに呼びかけながらジャンプしていたら、天空の彼方から一片(ひとひら)の麗しい羽根と魔石が踊るようにハレルヤの元にきたそれを(くちばし)で器用にキャッチした!


「お母さんがハレルヤにってくれたみたいね、良かったね。ハレルヤ」


 魔石はミナヅキがキャッチしたが、咥えた羽根はハレルヤが意地でも離さないという様相で持って帰るのだった。

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