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普段は静かなこの個室にここ数日、騒がしい位の人が集うようになっていた。
「皇はもう主様から絶対離れません」
力強く拳を握り宣言する皇を、ミナヅキにしがみつかれたままのシドが対応する。
「あはは……そうなんだな。ミナヅキには……あー、見てわかると思うけど、この俺がずっとついてるから大丈夫なんだが……ミナヅキ? 聞いているかい?」
「主ら、静かにせんとミナヅキが眠れんではないか?」
気がつけばミナヅキはベッドでシドにしがみついてちっとも話には入ってきていない。
「ていうか、この方自然に輪の中に入ってきてますけど、一体どなたです? わたくしは聞いておりませんが……。この際ですからハッキリ言いましょう! ちょっと偉そうな年上口調はもうお腹一杯なんですよ! 貴方わかっているのですか?」
皇がルディオを指差し何かを宣告している。
「お主は一体何の話をしておるのだ? ちっともつたわってこぬが……」
「はい、こちらがミルフィーユです。」
「きゃあ! ルディオ様♪」
普段はこの部屋に寄り付かない女子職員達が我先にとお菓子をすすめている。
「んー……これも美味いな! ……お主は刀か? 私はルディオと申す。よろしく頼むぞ」
黄金色の青年は美味しそうにテーブルの上に置かれたスイーツをパクついている。
「昨日いらしたインテリ気取りの小生意気な猫みたいな名前のお子様もそうでしたが、私が主様を癒して差し上げたいのに、ここはあまりにも邪魔者が多すぎではございませんこと?」
「そうかのう?」
皇の背後から兵長が顔を出す。
「ひゃあぁ!」
皇が急に萎れて座って震えだした。
「兵長、女の子を驚かすのは感心しませんよ?」
「そうかのう? そんなつもりはないのだがなぁ……」
「ミナヅキはあれからどう? 少しは安定したかしら」
「先輩、まだ一人になると不安みたいで手が空くとずっと、この通りです」
「先日の件、メルティは愚息とその側近、手を貸した者達全てを切り捨てていく事で決着がついたみたいね。一人も死者が出てないのがお互いに良かったみたい」
「疫病と、あの女の子はどうなりましたか?」
「商いに乗せて疫病を広めたとしてメルティ始め各地の豪商と高位貴族が一丸となって撲滅に勤めるそうよ。予防と拡散に気をつけていればある程度は防げるみたいだから特定の人に皆で押し付けてそれで一気に決着ってするんじゃなくて、これは皆の手で何とかすべき問題だって。きっかけになった姉妹は心に傷を負っているかもしれないから、成人する位までは奇跡を経験した子達だからと教会で責任を持って面倒をみてくれるって」
「国や聖女様は何もせんのか?」
お茶をすすりながらルディオが口を挟む。
「こちらはプリンです」
「国王陛下はご病気が思わしくなく、聖女様はそれに付きっきりで今回は何のコメントもなしよ」
「……そうか」
無言でプリンを頬張る。
「ジェネッタよ、新しい御客様に砦の案内と、客室への案内も含め身の回りの手配を」
「承りました」
「御客様、わたくしがご案内致しますね。此方へどうぞ」
「うむ、よろしく頼む」
ジェネッタに伴われてルディオは足取り軽く退出していった。




