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「ではルディオ。よろしくね」
その瞬間とても嬉しそうに破顔したルディオが何かを呟くと光の輪がミナヅキを通り抜けて消えていった。何処かで見たような光景に口をあんぐりあけて光を見送る。
塊は何処かに行ってしまった。ミナヅキは自慢のポケットからお茶会セットをだしてルディオにお茶とお菓子をご馳走する。
「マーヤさんのクッキーと美味しいお茶です。どうぞ召し上がれ♪」
『おお! トオルは変わった術を使うのだな。頂くとしよう』
ルディオは出されたお茶を楽しみながら疑問をぶつけてきた。
『トオルはどうやってここまでやってきたのだ?』
「あー、それが……あたしにもさっぱりなんですよね。お昼に怪我して死にそうな子供を見つけて回復魔法で癒していたら拐われちゃったみたいで、首に変な魔道具も付けられたみたいだし、いつの間にか長かった髪もこんなザクザク切られちゃったみたいだし……目が覚めたらここでした。てへっ」
ルディオがピクリと目付きをかえる。
『それは……大変な目にあったものだね』
「ねー。とりあえず、リンゴでもむきましょうか?」
ポケットからリンゴとナイフをだすとウサギさんをつくっている(イメージ)。
『……ミナヅキはどんな時でもこうなのか? 前向きなのは良いことだが……、しかし器用に切るのだな。これはなんだ?面妖な生き物かな?』
お皿の上に何かしらの昔リンゴだった物体Xを置くとため息をひとつ。
「はぅ……これでも可愛いウサギさんなんですよ?」
『……外の世界にはなんと恐ろしい生き物がおるのだ』
イケメンは怯えおののいても絵になるのだなぁと感心するミナヅキである。
『このクッキーとやらは素晴らしいな! 世の中にはかような美味なる食べ物があるとか。一度は生まれておきながらこんな素晴らしいモノを食べそこねて来てしまったとは、なんと惜しいことをしたものだろう』
「ねー、とっても美味しいんですよね。マーヤさんの作るお菓子はどれもすごく美味しいんですよ。今度ご馳走しますね」
マーヤさんのクッキーが甚くお気に入りのご様子。
『うむ、次はいつだ? 至極楽しみだな!』
とても乗り気でこの様子だと、お座りしていつまででも待っていて貰えそうな雰囲気である。
「ねぇ、ルディオ、そもそもここは一体どこなの? 貴方はここで普段何をしているの? 外には出ないの?」
この何もない空間は老人の塊的刺激以外何も無くて長くいるには暇そうでならない。
『ここか? ここは微睡む父上の魂の在処とでもいうか、父上の中だな。外と言っても私はこれしか知らぬのだが、そことは何か違うのか?』
移動するという発想がなかったのか何だかきょとんとしている。
「この景色しか知らないとか……そんな勿体無い! 外には美味しい物も晴らしい景色もたっっくさんあるんですよ? 教えてあげるから! 一緒に出てみよ? ……だってこの世界には魔法だってあるんだから諦めなきゃ何でも叶うと思うよ?」
ミナヅキから差し出された手……ルディオは真っ直ぐ前を向く。
『トオルは私でもここから出れると思うのか?』
「勿論よ!」
ミナヅキはルディオの目を見て断言した。
「ルディオがここから出ることを願って奇跡を信じてくれたらそれに合わせて一緒に出れそうな気がするの。」
『ふふ……それはどういう目算なのだろうな。初めて出来た友を信じてみるのも一興であるな。……なんだか諦めずにもう一度生き直してみたくなったぞ』
「それは良かったわ」
ミナヅキは目を閉じ心から願う。
「後はあたしも奇跡を信じて頑張るね♪ まずルディオの魂の、このおかしな結び付きを状態異常超無効を付加することで解消!」
ルディオのまわりが儚く輝く。
『なにが!?』
「それと共に、ルディオの……この迷いし者の心からの願いを、それを叶えられるだけの……奇跡をこの者に授けたい。お願い!」
言葉が形になった時、ミナヅキの背中から眩い天使の羽根が生えると、それがルディオとミナヅキを包み込むと輝き、光の粒子となって眩い輝きが一気に霧散した。
後に残されたのは哀れな黒い塊のみである。
『あああ……』




