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「へー、トオルは違う世界から来たの?」
「そうなの。学校の帰り道にいきなりだったから凄い驚いてしばらくワケ分からないからずっとシドさんにくっついていたんだよね。……てへ」
「それは本当なの? いきなりはびっくりですね」
ティナという銀髪の子は明るく活発ですごく話しやすいとミナヅキは感じた。金髪のティアの方は無口ながらも双子の妹ティナの動きを必ず目で追いながら書棚の中から持ってきた分厚い本を捲っている。
「ここに来た時からシドさんは側にいてくれるし、カニエール君やハレルヤもいるし、仲間だって沢山なんです。あたし皆に元気貰ってるみたいです♪」
「グラン……カニエール君にハレルヤってどちら様?」
珍しくティアが食いついてきた。
「トオル、カニエール君はしおまねきでハレルヤは確か不死鳥なんだったね?」
「はい、そうなんですお義父様。二人とも個性的でとっても楽しいんですよ」
「しおまねきに不死鳥? 凄い!」
「その子達とよく大森林までお散歩に行くの。森の中に素敵なお花畑があって、そこでお弁当をいただいたり、お昼寝したりするの♪」
「それは素敵!」
さすが双子、声も動きもぴったりシンクロした。
「あ!……」
今度は二人で縮こまってしまった。
「ごっごめんなさい……」
「ふふふ、トオル……この子達、そのお散歩に行ってみたいって……。良かったら今度連れていってくれないかな? お供はボク! って言いたい所だけど手の空いている信頼できる者を寄越すからね」
「あ、はい。いいですよ♪ 皆で一緒に楽しみましょ!」
後日、王都の屋敷のシドの自室が待ち合わせ場所だった。
「よろしく、お願いします!」
「ティアとティナ! 楽しみにしてたよー♪」
『たのしみー! たのしみー!』
「わあ……しおまねきと不死鳥の雛!」
カニエール君が渾身の決めポーズをキメている。
「可愛い!」
『ハレルヤカッコいい!』
真面目そうな騎士に手を引かれた双子が挨拶をする。お散歩に同行する日がやってきた。
「俺はシドだ。此方は婚約者のミナヅキ。今日はよろしく。」
「こちらこそ本日はお世話になります。私はお二人の護衛をさせていただいているイグニスです」
「あなた方の事はグラン様より伺っております」
「さて、一気に運んじゃいますよ?皆、手を繋いで下さいね」
「え!」
グランによってここまで瞬間移動をした経験したから? か、一気に三人が怯む。
「そんなに、怖がらなくても大丈夫じゃないかな? 要は慣れ……かな? いくよー」
恐怖に目を瞑るとひゅっとする感覚……次の瞬間、場の空気が変わる。
「トオルってすごい! ちっとも気持ち悪くないの」
「うん、全然平気だった!」
双子は少し興奮気味だ。
「ここだよ」
「あ!」
辺り一面の花畑の真ん中に自分達は立っていた。
「……凄い、この白い花はなぁに? 見たこと無い……です」
ティアが質問してくる。
「これはシロツメクサ、別名クローバーって言うの。ここホントはただの草原だったんだけどそのままだと味気ないから花畑にしてみたの。あれれ……コレこっちになかったのか」
「綺麗……」
双子が嬉しそうに微笑んでいる。
「イグニス、我々はすこし離れたここにでも座っておこう」
「そうですね」
保護者の二人は距離をおき少し離れたところで観察を始めるらしい。
「うん、綺麗だね。クローバー。これには花言葉がってあってね……」
「花言葉……? 気になるー!」
「お花好きな親友曰く、シロツメクサの花言葉は、"私を思って"て言うみたい。で、この葉っぱが稀に四葉になってるのがあってそれにもちゃんと花言葉があって、そっちは"私のものになって"ていうんだって」
「きゃあ! ほんと? なんて素敵なの!?」
「情熱的……」
年頃の女子達はここから一気にシロツメクサに夢中になっていく。
「そうそう、これをこうやって……」
「なになに?」
ミナヅキが、器用にシロツメクサを編んで花を輪っかにしていく。
「これをこうやって輪っかにして好きな人に渡してみたり?」
「やりたい!」
ミナヅキ指導のもと熱心に花輪を作る二人。
「随分楽しそうにやってるな。二人はミナヅキに任せて正解だな」
「はい。シド様」
「シド様とかやめてくれ俺はただのしがない平なんだし。シドって呼び捨てで構わないぞ」
「ふふふ……、お二人があんな年相応の表情をされるとは……ここに来て本当に良かったと思うよ」
「そうだな……」
「ん? これは葉が四枚? 他は三枚しかないのに、不思議な野草なのだな。稀なのか?」
イグニスが四葉探しに夢中になってしまっている。
「ここは平和だな……」
「できた!」
「二人仲良く出来上がりまで一緒なの? さすがだわ……。て、あれれ……」
二人は迷いもせずイグニスの元に向かうと迷いもなくその首にシロツメクサの花輪をかける。
「貴方に……」
「え!」
イグニスは驚き戸惑っている。
「二人からモテモテか、大人気だな、イグニスは」
「モテ!?」
二人に囲まれイグニスは少し複雑な表情をしながらも嬉しそう。
「……ありがとうございます。私からもお二人にこれを!」
「あ!」
手渡されたのは稀にあると言われる四葉のクローバー。
"私のものになって"
脳裏を過った先程の言葉が双子を一気に真っ赤な茹でダコにしてしまった。
「え!? 何が!」
「あらら。ほんと……あれぐらいの年頃の乙女は好きなものにまっしぐらなのね」
シドに花輪をかけながらミナヅキも隣に寄り添う。そしてつぶやく。
「シドさん……」
「ん?」
「あたし人より少しだけ目がいいんですけど……初めて絆が繋がる瞬間を見ちゃいました」
「え……それっは……!」
ミナヅキの指先がシドのそれからを遮り微笑む。
「それはいいっこなし……野暮ですよ、シドさん」
「……あぁそうだな」
エマ義母様の親戚と聞いていただけに少し心配になるシドさんです。




