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夜、ミナヅキとシドの二人で行われた恒例の夜会の最中、新たに皇が参入しにきた事で突如拡張される事となり、ついでにもう一人あたしも出していっそのこと、パジャマパーティーにしてしまえ!? と相成った。
「なんだって! 本当か、ミナヅキ!?」
「まじかー、あたし!」
「そうなんです! マーヤさんに男の影が見えたんですってば。さっきあたしがキッチンにリンゴを漁りに行った時に、こんな時間にマーヤさんの部屋に入っていく怪しい人影が見えたの! ってあたしにもちゃんと見えてたでしょ?」
「あ! そっかーあたし……。そうだわ、しっかり見えてたよ! うっかりしてたぁ~」
感覚を共有しているのに、それをうっかり忘れて雑談始めるのが日課だ。わざとでは無い所がミナヅキたる所以である。
パジャマに身を包んだ男女が部屋で思い思いにゴロゴロしながら雑談をしている。シド曰くディモニーお断りのこの宴。シドは流石にベッドには寄り付けず、窓際のソファーで話に興じながらフレーバーティーを嗜んでいた。
「主は何でも物知りでございますねぇ。皇は尊敬致します」
「いやー、そんなことないよぉ♪」
皇がミナヅキと談笑して、それを二人で眺めている。
「最近ミナヅキが二人になることがあまりなかったな」
「あー、ばれちゃいました?」
シドがミナヅキと手を繋ぎ直している。
「実は二人で感覚を共有する様にしたら、やたらと集まってくる情報量が大きくなりすぎまして……結構疲れる事に気が付いたんです」
「それは長時間が辛くなるかもしれないな……」
理解して共感して撫でても貰える事で日々のストレスが減っている気がするミナヅキである。
「えへへ」
翌日、ミナヅキの部屋のちょうど横にある個室を改造し終わって皇の個室が出来上がったという知らせをうけたミナヅキ達への初めての御披露目をすることになった。
「これが、皇さん貴女の部屋の鍵よ。開けてみて頂戴ね」
花の飾りが目印のアンティークな鍵がネックレスにぶら下がっていた。
「鍵穴はここですね?」
カチッ
ギギギ……
緊張しつつ扉を開けるとそこには白とピンクを基調にした女の子らしい部屋が出来上がっていた。
「わぁ……可愛いね! どこをどう見ても女の子のお部屋だ……」
花も飾られ、ぬいぐるみまで置いてある。何処からともなくいい匂いも漂っている。
皇が自然と足を進め二歩三歩と室内へ進んでいく。呆然としながらソファーに置かれたぬいぐるみを見つめて恐る恐る触れるとそっと胸に抱く。
「はぅ……」
ため息をつくと此方に振り向き、蕾が綻ぶように微笑んでいる。
「このように柔らかくて愛らしいものがあるなんて……皇は初めて知りました」
見ている此方が幸せになる少女の笑顔である。
「それも気に入って貰えた様で良かったわ。貴女に合わせて衣装も拵えさせているからあと数日したら届くようよ」
「何から何まで皆様ありがとう存じます」
コンコン
「お邪魔するわ、……素敵にできたじゃない」
「あ、ジェネッタお姉さん、こんにちは!」
ファイル片手に、ジェネッタがやってきた。
「ちょうど良かったわ。ミナヅキ、これにサインをしてね」
ファイルを開くと沢山の書類を取り出してそこからサインをする箇所に記入しつつ順に追っていく。
「これ、ずいぶん沢山の数字が書かれていますが何ですか?」
「せっかく今うちでミナヅキを預かっているんだから、本来ミナヅキに、かかった費用から始まって、それで落とせそうなものは全部ミナヅキの為に~で、奪い取る事にしたの」
「わぁー、これって何枚あるんですか?」
内訳をざっと見たら書類用のペンやインクからはじまって部屋の改装、人件費、バルコニーの修理まで多岐にわたってよくもまあこんなにあったもんだなぁと関心する位に色々な品目を普段は出し惜しみしてちっとも出してくれない国から絞り取るらしい。
「ふふふ……。さすがにこの量は不味いかしら?」
「いえ、どんどんやっちゃっていいと思います。百年分の恨みも込みでガンガンオッケーです」
ミナヅキとジェネッタは握手してニヤリとほくそ笑む。




