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「てへへ……つい、やっちゃいました♪」
「ほほう、この瑞々しい肌といい……これがミナヅキの新しい剣か……。また、いつも通り……他の追随を許さない斬新な保管方法を考案したものだな」
冗談めいた口調で兵長が腕を組んで観察している。マーヤさんに無理を言ってお願いしても、急に準備出来たのがメイド服だけだったので、可憐なメイドさんが出来上がってあたしの傍らに立ち尽くしている。
「……ジェネッタ」
「はい、こちらに……。箝口令を敷いて砦内外に一切の発言を禁止させます」
「……よろしい」
兵長が此方から目線を動かさずスッと手を上げるとジェネッタお姉さんは退室していった。
野郎成分多めのこの南方の砦にいきなり現れたこの華。とりわけ麗しいこの女子の存在に、周りの男達に戦慄が走り一部は色めき立っていた。
「シドさんしっかりして!」
先程の衝撃から抜け出せない恋人を揺さぶるも一向に反応がない。あれはシドさんにとって相当衝撃的なモノだったに違いないけど、なんだか特に胸の辺りがモヤモヤもする。
「むーっ」
本人の説明としては、主が求めるままに異空間ポケットより抜刀し、刀として使う時以外は、こうやって人としての生活が営めるようになっている……と。
そう言われて、あたしとしても気持一つで抜刀出来る……とは言え、気軽にいつでも抜刀! (いえい!!)とまでは行ってはいけない気がしてならない。だって息もしてれば血だって通っているんだよ?
ちらりと人混みの中の皇を見やると、クールな印象の彼女があたしの目線に気付き、此方にむけてデレたような最高の天使の微笑みを返してくれる。
「あああ……うちの刀が、尊すぎる!」
「ひゅーー! 君と俺が結ばれるのは前世からの約束なんだ。君とは運命の絆で結ばれているんだぜ……ハニーちゃん」
何処からともなく湧き出た害虫が、渾身のキメ顔でうちの日本刀を壁ドンして顎クイして口説いているが……、当の本人の目線は絶対零度そのものだ。
ドカ! バキ!
「うぎゃ! やめ!!」
バキ!! ボキ!!
「撤去!」
先輩達の後輩を可愛がる攻撃(物理)がクリティカルヒットして汚物は退場させられていった。
誰彼構わずはダメだよね。うん。
「皇はこの上なく幸せでございます。あなた様のように素晴らしい方にお仕え致す事が叶いました。しかも主様の命を少しも損ねることなくお仕え出来るなど本当に夢の様でございます」
些か盲信気味ではあるがとても礼儀正しくていい子だった。
「そう? あたしも皇が少しは息抜き出来そうでよかった♪」
「この上は、この感謝の気持ちを表すために、主に隣の島国パゴラーンの領土と国王の首を献上致したく存じますれば……」
んんん? 何処をどうしてこうなった……という着地点に色んなモノが飛び出す程驚いている。
「いやいや!! それは全くもって必要無いからね! そもそもあの国はもう十年以上前に滅びてて、なんなら国王の首もずっと昔にそりゃもうポロって打ち取られて久しいみたいだよ!?」
「あらあら……そうでしたか……。残念です」
こんな感じで皇は思考が若干過激で驚かされる。その他はとてもいい子なんだけどね……。
新しい仲間も増えてここでの生活も更に楽しくなってきたよ♪




