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コンコン!
「おはようございます」
「あら、ミナヅキじゃない。不満そうな顔して、どうしたの?」
あたし、今日は兵長に相談があってやって来た。
「兵長、自分にも身を守る刀が欲しいです」
「あー、それか」
「ふぉっふぉっ……ミナヅキにはシドがおるではないか……。何が不満なのだね?」
むーっ!
「そうじゃないんですよ、シドさんはダメダメ言ってばかりで刀関係は一切触れさせてくれないんです。あたしだって守られるだけでなく、いざと言う時はみんなを守れる何かが欲しいんです」
懸命に訴える。ジェネッタお姉さんも同意している眼差しでうんうん頷いている。
「……やれやれ、シドのやつめ。その件、わしには文句が言えぬやつだのぅ……」
兵長が何か思い付いたのか、便箋になにやらメモを取り追加で一筆したためてくれた。
差し出されたその手には一枚の便箋と一つの封筒があった。
「わしの古い友人が営む店なのだが、業物から鈍まで何でも揃っておる」
「なっ! ナマクラ!?」
目利きがいりそう?わざわざ鈍なんて……なんてモノ置いてるんだろう……ごくり。
「ふぉっふぉっふぉっ……。その目で真を見極めるとよいぞ、ミナヅキ」
兵長は、ニヤリと悪い顔をしている。
「はい、次の書類です」
「……せっかちじゃのぅ」
その穴場の場所を記した地図と紹介状を持たせてくれました。ありがたい話です。
地図にある通りに、裏路地に入った住宅街の中、少し奥まった場所にそのお店はあった。
ガンガン……
ドアノッカーをガンガンやると小さな覗き窓が開けられそこからぎょろっと目元だけが見える。
「……おたくはどちら様? うちは一見さんお断りだよ? 帰っとくれ!」
「あ、バーマン兵長から紹介状を、持ってきたんです」
隙間からそれをみせるとシュっと奪われるように中に引き込まれた。
「あ……!」
暫くの沈黙のあと、重そうなドアが開かれる。幾重にも施錠が、施されていたようだ。
ぎぎぎ……
「入んな」
無愛想なご婦人が奥に案内してくれる。
ドアをあけると、お店の中は薄暗く少し埃っぽい印象。そこには年代物のカウンターがあるだけだった。
「こっちだよ」
壁にかかったカーテンをずらしたドアがあり、その先に通路があった。狭い一本道を奥に抜けていく。かなり遮光のきいた暗幕を潜るとそこはそれまでとは打って変わって目が眩む程に明るい場所だった。
「こっこんにちは……」
古そうなテーブルがありその奥には雑然と物が積まれていて、一応雑多には整理はされている様に伺える。
ご婦人が奥に消えていき、代わりに小さなおじいさんが現れた。
「あんたが客か?」
「そうです」
おじいさんはため息をつくとご婦人に握らされたであろう紹介状を開くとぶつぶつ呟きながら奥に消えていき、暫くしたら沢山の刀剣を抱えてきては置いてを繰り返す。
「この中のモノならどれでも一本くれてやろう。あんたが扱える得物があるかが、問題だがな?」
おじいさんの目元がこちらをじろじろ値踏みする様に見ている。
「ん……、普通に扱えないものもあるんですか?」
剣は剣だから気をつけて使えば使えない事はないよね? 脳内で何故なのかを考察するも、ちんぷんかんぷん分からないからハテナが浮かんでは消えている。
「ふっ……ワシが代わりに木刀でも拵えてやろうか?お嬢ちゃんよ……」
「ふふ……それもいいですね。家で使いなれた木刀を思い出しましたよ……。おじいちゃんの一撃は重かったなぁ……。怖っ!」
うっ! 今思い出しても震えてしまう恐ろしい一撃だったなぁ……。
「ふははは。あんた面白い子だな」
「えへへ……よく言われます」
「じっくり選ぶといいさ」
言い残すと奥に消えていった。
「ふーむ。どれがいいかなー?」
テーブルの上に置かれた既に山となった刀剣の中から好きなものを選んでいく。どれもしっくりこない。何かに触れた時、見慣れたフォルムがいた気がする! あれは……
「えっとこの奥に……そうこれ、刀の鍔だ!」
ガラガラガシャガシャ……
それだけを一気に抜き出したら軽い雪崩が起きた。
「げほっ、痛っ! げほっ、もう! ここ埃っぽいわ!」
しっかり手に捕まれているそれは……
「えっ……これってやっぱり日本刀? ……なんで?」
「なにやってんだい! まったくもう!」
物音に気付いたのかご婦人が出てきて助けてくれた。
「なんだ、そいつに決めたのか? でも、そいつは飾り物なのか一向に抜けないぜ? 抜けない刀なんて、うちで一番の鈍と言ってもいいやつだな」
「そうなんですか?」
「所以も分からん、誰がここに持ち込んだのかもさっぱりなんだ。うちに置いておいても役にも立ちやしないからな。欲しいなら持っていっていいぞ?」
「えっ、マジですか! 嬉しいです!」
刃長七十と少しかな? 重さは一キロ無い位……どこをどう見てもこれは日本刀よね。
「丁度良いサイズだし、これがいいかな?」
鞘から刀身を抜き出してみようと力を込めた瞬間、景色は暗闇に覆われていた。
「!!」




