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ハレルヤと、カニエール君を連れてシドさんと海岸に来てみた。
「懐かしいです!」
「そうだな……変わらないな」
レジャーシートを敷いてその上に腰かけて、保護者気分でハレルヤを観察する。ここは変わらず大昔の鳥みたいなのが空を闊歩する。
季節が冬なのでこの世界に来た時より静かで波の打ち寄せる音がやたら際立って響いている。
カニエール君は既に走り去ったあと、ハレルヤは波打ち際と決闘してる。
『なんだオマエはー! 退治してやる!』
必死に波をフミフミ……。
『くらえー! ふぇにっくすきーっく! うわー! 攻めてきた!』
ざざざーん。
『ぎゃ! なんだとこのヤロー!』
「昨日のやり取りを覚えちゃったみたいで、ハレルヤちょっとばかりガラが悪くなっちゃってて……」
「! ……すまない。ミナヅキ……その、なんだ……アレはそんなつもりではなかったのだが……でも……」
思い当たる節があるシドさんは、体育座りで頭を抱えていた。最後がゴニョゴニョになってる。
普段は大人なのに、ほんと困ったさんなんだから……。
いつまでも、難しい顔して何かをゴニョゴニョ言い訳してる。ちょっと可愛い。
「シドさん、こっち見て!」
「ん?」
「とお!」
「うわ!」
ごろーん!
全体重をかけて覆い被さるようにしてシドさんをレジャーシートに転がしてやった。
「ふふふ……難しそうな顔してましたよ?」
「ぐ!」
寝転がって彼を見る。悔しい位にイケメンなんだから……。ドキドキしちゃう。
「あたしを自分のだって断言してくれたの……カッコ良かったの……」
シドさんがなにやら嬉しそうに破顔すると呟く。
「俺は君を誰にも渡さないんだからな!」
やだ。目が離せない。
「はい」
抱き合って唇を合わせる。波の音がやたらとうるさい。
『シド! サムい!』
『サムい、シド! ミナヅキだっこ! シド痛い!』
「くっ、うるさいな……」
チラッと覗くと波に惨敗したのか海水にまみれて震えるハレルヤが立ってた。
「ぷっ! やだ、ハレルヤこっちおいでよ」
震えた既にそこまで小さくないそのうちには鳩サイズ? の鳥がジャンプしてあたし達の間に割って入ってきた。
「海水冷たかった?」
『くしゅん!』
鳥でも鼻水垂らすんだね。
「あらやだ、うーんと、今日帰るまでで、このシートの上だけ春になれ! 心も体もポッカポカで……そう、春に包まれろ! 温室効果の……スチームバリア!」
「ミナヅキ、なにを!?」
辺りに膜が拡がってドーム型、硝子の温室にいるみたい。
「ほら、しっかり暖まって」
ハレルヤがプルプル海水を、飛ばしてくる。
『ミナヅキ! ミナヅキ!』
「なぁに?」
上体を起こして二人の間にハレルヤを座らせる。
『リンゴくれー!』
「ブレない子ね……。ふふふ」
「よし、俺が拭いてやるからな」
タオルを取り出すとハレルヤを包んで優しく撫でている。イタズラっ子がとても気持ち良さそうにしている。綺麗に拭けたら次はお弁当の入った籠からリンゴをあげた。
『りんごー! かくごしろー!』
シドさんの腕の中に座ったあたしの膝の中にハレルヤがいて、シドさんがあたし越しにハレルヤを撫でまくっている。
『シドどこだー!』
「ふははは……ハレルヤ、俺はどこだぁー?」
『何処にかくれているノダー!』
「ぷっ何やってるんですか。二人とも」
「そう、ミケ君なんですけど、絶対魔道具工房を作ってみせる! って意気込んでましたよ」
「魔道具工房か……楽しみだな」
「ええ、なんか魔道具ができたらずーっとあたしにプレゼントしてくれるそうですよ?」
「なぬ! あの野郎、抜け駆けしたな……」
シドさんが難しそうな顔をして悔しそうに歯ぎしりしてる。ふふふ……焼きもち焼いてくれるとか……くすくす。嬉しいような♪
あたしって存外悪いオンナね♪




