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「ねえ、なんで泣いてるの?」

 力無くほどかれた腕。ずいぶんとダルい。それでもなんとか動かし指で男の頬を拭う。

「……なんでもない。多分俺の人生最後の大問題だから!!」


「君が気にする事でもない……」


「ああ! お兄さんが落ち込んで! 汗と涙と鼻水が一緒になって流れちゃってる!!」


 はたと自分の太股が丸出しなのに気がつく!


「きゃ! なにこの格好、やだズタボロじゃない。なにこれ……」


「……少女よ、困惑しながらもなぜこっちをじっと見るんだ。いや……わからいでもないが!」



「ああ、待って! どうして少し後ずさる……何故だ……君まで俺を責めるのか!!」


 とりあえずこんな時は、女子として恥じらってみるべき……よね?




 立ち直るまで軽く三十分とか、この人の人生、これまでどれだけ辛い事があったのだろうか。




「では俺はこの報告書を提出してく……」

「ていうか、年頃の男女が同室でいわゆる朝チュンとか、この世界的には大丈夫だったの?」


 ぐしゃ!




「……そうじゃないか!! ……あぁぁ! あんな状況だったから俺も気付いていなかったが、ごく一般的な貴族的にみると責任をとって求婚云々な不祥事なのに……まって!? これを不問に伏して個室に二人で入室の是非を問わない仲間とか……これではまるで……まるで敵じゃないか……!!」



「……お兄さん? もしもし?」



 ワナワナ震えて独り言を呟いて……多分とても気の毒な人なのね。


「……お兄さんも気付いてなかったんだ(笑)」



「やめろ! 残念なものを見る目でこっち向くな!!」



「昨日は、それどころではなかったのだ。俺もかなり動揺していて、でももとはと言えば君が……ぶつぶつ……俺だって……だけど……誤解で冤罪で……」

 ボン!!

 あっ煙でた。


 燃え尽きたお兄さんw結構手間がかかる人だ。でもまあ、痺れて感覚のおかしい自分の両腕を眺める。



「あははは……うん、私もなんだか……ごめ、ん?」


 てへっ



 このお兄さん昨日初めて見たときと比べたら、軽く十才位老け込んだみたい♪ どの世界も大人って大変なんだね。うん、わかった!








「お客様こちらにお袖を通してくださいね」

「あ、はーい」


 苦労人のお兄さんが、マーヤさんというメイドさんを呼んでくれて、破れた衣服を丈の長めのワンピース? (どこかの歌劇団の衣装みたいだと思ったのはナイショ)に着替えさせてくれた。


「お洋服ありがとうございます。助かりました!」

「とんでもないことでございます」



 マーヤさんは微笑むと、昨日まで制服だった布切れを抱えて朝食をご用意致しますといって出ていった。


 すごく(うやうや)しく扱ってくれるからまるでお姫様か何かになった気分を体験したんだけど、……あたしにお姫様はきっと無理だわ。変に力んで肩凝ったもの。





 朝食も終わりようやく一息つけた所だけど。



 お兄さんはあたしの顔を覗きに来てくれたけどすぐに兵長というおじさんに連れられ仲良く退室していった。あれは何かとんでもないことをやらかしたのね。うん、きっとそうだわ。



 午後からは、なにやら複雑な表情をしたお兄さんの先輩というジェネッタお姉さんが、異世界からの迷い人の私に戸惑いながらもこの世界の事を一つ一つ教えてくれた。わかったことは、迷い人は女神様の気まぐれで一世代に一人とか二人とか、ある一定の間隔で世界を越えてこちらの世界に送られてくるとかこないとからしい。


 迷い人は、当然土地勘も何もない状態でかっさらうように連れてこられるので、準備も何もなく異世界で普通に迷子になっちゃうんだって。運悪く見つけて貰えないで遭難してしまう人もいるって。で、各国の偉い人達の取り決めで、もしも自国に異世界からの迷い人が表れた場合はその国で責任を持って保護しようって事になっているそう。

 例に漏れずあたしもいきなりあんな所に置いてきぼりになったわけで……



 うう、見つけてもらえて良かった。

 ありがとうお兄さん!




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