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 先日、お茶会の席で寝落ちするという失態を盛大にやらかしてしまったあたしは、またぞろ他所様(よそさま)にご迷惑をお掛けしてしまっている事に我慢できなくて、兵長のお手伝いを自ら買って出る。

「兵長! あたしに兵長のお手伝いさせてください!」

 

「はははは……。ミナヅキが手伝ってくれるのか。ありがたいのぅ……ん? そうかそうか……」


 書類にサインしながら此方を向くとあっけらかんといい放つ。

「ではミナヅキには公爵家にお使いに行ってもらうかの、あそこは、王家から姫君が降嫁された由緒正しいお家柄なのだよ。ひとつよろしく頼むよ」

 兵長の瞳がキリッと光る。わかりました! うんうん、あたしにしか無理な案件なんですね! わかります!!


「はい! 泥船に乗った気で、ここはあたしにドーンとおまかせあれです! では、あたしの帰りを鼻の下を長くして待っててくださいね! 準備してきます」

 急ぎ執務室を後にする。デキる女は迅速に動くの。兵長を待たせる訳にもいかないわ!



「……兵長、どこからつっこんでいいのか分かりませんが、あの子行き先もきちんと確認せずに見事に手ぶらで行きやがりましたね」

「ふぉっふぉっふぉっ……あの意気込み、頼もしいじゃないかね。行き先と手紙はジェネッタ君がシドにでも持たせておいてね」

「兵長……鼻の下伸ばして待つんですか?」

「まさか、わしそんな真似するわけないだろう?」

「ですよねー」



 自室に戻ると取り急ぎ外出様のポンチョコートを(まと)う。

「よし、できた!」


 こんこん


「はーい」

「ミナヅキ……準備はできてるかい?」

 シドさんがあたしを連れに来てくれた。

「忘れ物はないよね?」

「はい! おやつも持ちました! ハレルヤもマーヤさんに預けましたし。出掛けるだけですよ」

 ベストスマイルでお返事しました。

「……行き先とか、手紙は?」

「はぅあ!! 忘れてた!!」

 なんたる失態!うっかりしてた! あまりの事態に青い顔をしていたらシドさんが震えだした。



「ふははは……大丈夫、俺が預かってきた。ミナヅキはおっちょこちょいなんだな」

 うう、恥ずかしい。

「でもなんでわざわざあんな所にいくんだろうね……」

「へ?」

 シドさんはいつも通りのさわやか笑顔なのに、意外にも行き先に対しては不満げみたい。どこなんだろ。

「なんでもない。では俺にしっかり捕まって。多分直接執務室でいいよね。」

 シドさんが紳士っぽく手を差し出すけど、それを掻い潜って懐にがっちり抱きつく。そう、ここが抜群の安定感なのです。

「!!」

「えへへ。だーい好きなんだもん♪」

「……そうだな、俺もだよ」



 うっ脳内が揺れる。



「気持ち悪っ!」

「ミナヅキ大丈夫?」


 恐る恐る目を開けると、シックな感じの執務室かな? に着いていた。

「……ん? だれだ?」

「こんにちは! わたくし、ミナヅキと申します。バーマン兵長より公爵閣下にお手紙を預かってきました。シドさんお手紙を……」

「現れ方がレオナルドと一緒とか……、しばらく見ない間にやたらと規格外になったものだね、シドニール」

「父さん……」

「へ?」

 なんですと!?

「おっお父さん?」

 咄嗟に離れることも出来なくてシドさんの懐から目を白黒させながら覗いているしかなかった。

「父さん、こちら異世界からの迷い人のミナヅキ。俺の大切な人だ」

「エマから話は聞いているよ。ボクはグラン。そこのシドニールの父だよ。トオルだったかな? うちの新しい娘だね。ボク達は君を歓迎するよ」

 お互いに、にっこり微笑むとシドさんから離れてハグする。

「お義父様にお会いできて嬉しいです。エマ義母様(かあさま)も大概若かったですが、お義父様ってそれに輪をかけてお若いですよね?」

「そうかい? あー、エマはいつもの魔道具つけてたのか、ボク達はね、少しばかり人より魔力が強くて、他よりは老けるのが多少ゆっくりかもだね。だから普段は要らぬ嫉妬を誘わない様に見た目を年相応にする魔道具を常に身につけているんだよね。こんなでも中身は立派なおじさんなんだけどね」

「そうなんですね! あ、お手紙はこちらのようです」

 スッと裏からシドが手渡す。

「なになに?」

 手紙を、開封して読んでいる。

「!」


「なに!? あのパゴラーンを何とかしてくれたの? レオナルドといい、君はほんと凄いよね」

 お義父様がいきなりあたしに握手してきた。

「トオルありがとう! 国を代表してお礼させてくれないか?」

「いえいえ、あたしはあの惨状を放っておけなかっただけですから!」

「でも、そのせいでミナヅキとレオナルドの髪から色素が抜け落ちちゃったとか大変だったろうに……」

「うちに嫁に来るからにはそんな苦労はもうさせないからね! シドはどんどん苦労させるけどさ」

「……父さん、言葉使い!」


「! いけないいけない。ついつい見た目に寄っていくな。気を付けないと……」

 お義父様は机の上のボックスから魔道具の指輪を出して指にはめると瞬間的にナイスミドルにフォルムチェンジした。

「よし、これならいいだろう」


「シド、トオルいつでも遊びにおいで。ボクはいつでも歓迎するよ」



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